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水月 13 

番外編ばっか書いてないでとっとと本編を書け、と自分に喝を入れてはみるものの。
とりあえず先にできちゃったモノから出しとこうと(^^ゞ
番外編続きです。

今日は仕事お休みだし、外は春の嵐でヒキコモリ日和。今からチンタラ本編書きます~。
******************************


部屋に入ると、案の定、ユニは棚の中の荷物を引っ張り出して荷造りを始めていた。
騒々しい音をたて、まるで自分の服や本に恨みでもあるかのような乱暴な手つきだ。
ソンジュンはひとつ息をつくと、「ユニ」と声を掛けた。

「荷物はまとめなくていい。元に戻すんだ」

そう言ったが、ユニの手は止まらない。ソンジュンの声など耳に入らなかったように、本を積み上げ、風呂敷〈ポジャギ〉で縛り上げている。たまりかねたソンジュンは、「もうよせ」と、彼女の手を掴んだ。
するとぴたりと、ユニは動きを止めた。真っ赤に充血した目が、ソンジュンを見上げた。

「出て行く必要はない。陛下は、きみを追い出すためにああ言われたんじゃないんだ」

静かにそう言うと、ユニの顔が、たちまちくしゃっと歪んだ。途端に、うわぁん、と声を上げて彼女はソンジュンの胸に突っ伏した。成均館を辞めると言ったのは自分のくせに、王にすぐに退学しろと言われたのが余程こたえたのだろう。そのまましがみつくようにして、激しく泣きじゃくっている。

ソンジュンは小さく息を吐くと、幼い子供をあやすようにその背中を優しく撫でてやった。




「少しは、落ち着いた?」

ソンジュンが、水の入った湯呑みを手渡す。すっかり腫れぼったくなった瞼を伏せて、ユニは頷いた。
一口水を含んでから、彼女は言った。

「馬鹿だと思ってるでしょう、私のこと」
「どうしてそう思うんだ?」
「祝言を挙げたら成均館を辞めるって、自分から言っておいて……そんな覚悟なんか、全然できてなかった。陛下にあんな風に言われなかったらきっと、自分が本当はどうしたいのかさえ、わからなかった」

ふっと笑って、ソンジュンは言った。

「きみが後先も考えずに物を言うのは、今に始まったことじゃないだろう」

思い当たることが多すぎるのだろう。ユニは唇を尖らせはしたものの、黙って俯いた。

「祝言は……暫く延期しよう」
「えっ?」

ぱっと顔を上げたユニが、驚いた目でソンジュンを見た。

「陛下にも、その方がいいと言われた。陛下は、きみに出仕への道を開こうとしておられる。そのために、二人で共に力を尽くす覚悟があるなら、そうすべきだと。朝廷には相避制があるから、僕たちが夫婦になっていたら、同じ部署に配属させられなくなるとお考えなんだ」
※相避制…… 親族が同じ官職に就くことを禁止する制度


ようやく止まったと思った涙がまた、ユニの両目に浮かんだ。

「そんな……陛下は、そこまで考えて……?」

ソンジュンは頷くと、わざと渋面を作って、言った。

「なのに、勝手に成均館を辞めると宣言して、さっさと荷造りして、わあわあ泣いてるんだからな。確かに馬鹿だ、きみは」

恥ずかしいのか、ユニは眉尻の下がった情けない顔をして、また俯いた。そんな彼女が可愛くて、見られていないのをいいことについ口元を緩めてしまう。

「でも……いいの?」

ふと、手元に視線を落としたままのユニが小さな声で尋ねた。

「そうしたら私たち、いつ一緒になれるか……」

ユニの言葉は、尻すぼみに小さくなり、しんとした空気の中に消えた。なのにそれはソンジュンの胸にはっきりとした影を落とした。
平気だと言えば嘘になる。だが、ジェシンも言っていた。祝言など、単なる儀式に過ぎないと。

「僕の妻となる人はきみだけだ。それは、何があっても変わることはない。だから、我慢しなくていいんだ。きみが望みどおりに生きてくれることが、僕の望みだから」

そう言うと、ユニはぽつりと呟いた。

「……あなたの妻になることも、私の望みの一つよ」

知ってる、と微笑んで、ソンジュンはユニに軽く口づけた。


*   *   *


その晩、散らかした荷物を片付けていたユニはふと、棚の奥に押し込んでいた木箱に目を留めた。朧月の夜、スウォルに貰ったあの絵だ。

ソンジュンの手前、部屋に飾るのも憚られ、箱に仕舞ったままになっていたのだが、なんとなくもう一度見たくなって、ユニは箱の蓋を開け、取り出してみた。
結び紐を解き、巻かれた絵をするすると広げる。

灯火の淡い光の中で見るその絵は、あの日雑貨屋の店先で目にしたときとはまるで違う気がした。
輿に乗る妓生と、立ち止まって彼女を振り返る両班の男。より濃くなった絵の陰影が、紙に写し取られた一場面に何やら妖しげな雰囲気を纏わせている。その理由は、絵の中央に配された年若い輿舁きの少年を見たときにわかった。

少年の襟元には、紅葉の枝が揺れている。ひょっとすると妓生が折り取って、少年に戯れに挿したものかもしれない。その少年の目線は、妓生を見つめる両班の男にじっと注がれている───。

ユニは、はたと膝を打つ思いでその絵を見つめた。これは、男女の出逢いを描いていると同時に、二人の一瞬の情の通い合いを敏感に感じ取った少年の心中を描いた絵でもあるのだ。
ヨンハが、蕙園の絵を“そこらの春画なんかよりよっぽどいやらしい”と評した理由が、なんとなくわかるような気がした。輿に乗る妓生の奔放さや、輿掻きの少年の純朴さ、そしてこの出逢いの後に始まるかもしれない両班と妓生の物語まで、このたった一つの場面で、見る者の想像を否応なく掻き立てる手腕は、見事としか言いようがなかった。
なるほどこんな絵を描く才能は、厳格な規律を守る宮廷の図画署などに収まるものではなかっただろうとユニは思った。

いったいどういう人物なのだろうと“蕙園”の署名と落款に目を落としたユニは、そこにあった添え文の文字に何か引っ掛かるものを感じた。

(この書体、どこかで……)

まさかと思い、文机を引き寄せて抽斗の中を漁った。ユニとて書をたしなむ者だ。一度見た書体は忘れない。
探しあてた手紙に、かつてあった沈丁花の香りはもうほとんど消えかかっていたが、“相思夢”の漢詩を綴る瑞々しくも風雅な文字ははっきりと残っていた。

床に置いた絵の横に、スウォルからの手紙を広げて並べてみる。

衝撃のあまりに一瞬、息が止まった。

───ウソ……なんで?

蕙園とスウォル。二つの筆跡は、この二人が同一人物であることをこれ以上ないほど明確に示していた。






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2013/04/07 Sun. 10:04 [edit]

category: 水月

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