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水月 12 

またまた番外編続きです。

たまにはちょっと真面目な話。
こういう時代もの書いてると、言葉について考えることが多くなります。
例えば、今となっては死語となった「ナウい」。
対して、既に日本語として定着している「サボる」「だぶる」。
どちらも外国語から派生した言葉だということでは同じなのに、一時的に使われて捨てられる言葉と、そうでない言葉の境目はどこにあるんだろうと。

結局言葉って何かを伝えるためのツールに過ぎないわけで、だとしたら「ナウい」が伝えようとしたのは「今風の」なんていう言葉の意味ではなくて、その時代の空気そのもので、だから時代が変われば、役目を終えて消えていくのかな、とか思ったり。

今の若者言葉も、数年後にはどれが残ってるんだろうとかぼんやり考えながら、職場で頭の上を飛び交う若い子たちのおしゃべりを聞くともなしに聞いていたりする今日このごろです。

やっぱ疲れてんのかしら、ワタクシ(笑)
*************************************


いきなり頬を張られたような衝撃に、ユニが身じろぎもできないでいると、王は低い声で続けた。

「成均館は、将来官吏として国に奉仕する者を養成する機関だ。己に還元されるからこそ、民は血税を払い、学生たちを養っているのだ。学び得たものを、国と民のために役立てる気のない者を、置いておくわけにはいかぬ」
「お待ちください陛下、それは……!」

撤回を求めて声を上げたソンジュンの腕を、ユニは咄嗟に掴んでいた。喉がわななくのは、どうしようもなかった。

「仰せの通りに致します、陛下」

ソンジュンが、言葉を失ってユニを見た。王は頷くと、言った。

「そなたはもう退がってよい。体調がすぐれぬのに、呼び出してすまなかった。大事にせよ」

王のいたわりは更にユニの心を打ちのめした。今までいた世界から、急に背中を突かれて追い出されたみじめな自分を感じて、ユニは力なく頭を垂れた。


まともに立っていることすら危うげな足取りで、ユニが薬房を出て行く。その後を追おうと、一礼して踵を返したソンジュンの背に、王の声が飛んだ。

「イ・ソンジュン、そなたはまだここにいなさい。話がある」

努めて平静を装い、ソンジュンは王に向き直った。いささかの刺を含んで、「何のお話でしょうか」と尋ねる。
王は鷹揚に微笑んで、言った。

「そう目くじらを立てるな。まるで余がそなたの婚約者を苛めているようではないか」

ソンジュンは黙っていた。彼の怒りは王ではなく、自分に向かうものだった。頭にあったのは、たった今見たユニの失意に沈んだ後ろ姿と、深夜、床の中で忍び泣いていた彼女の背中だった。

結婚と、学問への情熱の間で一人苦しんでいたのであろう彼女の心に気づいていながら、どうしてもっと踏み込んでやれなかったのか。
自分の中に、とにかく祝言さえ挙げてしまえば後は彼女のために何でもできるような気持ちがあったことを、ソンジュンは認めざるを得なかった。ユニの口から、婚約はなかったことにしてくれという言葉を聞くのが怖かったということもあったかもしれない。
己の狡さと意気地の無さが情けなく、無性に腹が立った。

「───学問を続けたいというあの娘の望みを叶えてやれば、そなたは満足するのであろう。だが、あの娘はそれで終われるのか?」

まるで天そのものの声のように、王の言葉がソンジュンの耳に響いた。彼は何かが詰まったようになった喉から、やっとの思いで声を絞り出した。

「しかし……たとえキム・ユニが大科に合格したとしても、出仕することなど……」
「無理だと?」

ソンジュンは驚いて、王の目を見返した。

「キム・ユニは、多くの苦難に直面することになろう。だがあの者にとって、女人であることが出仕の妨げになるとは余は思わぬ。妨げになるとすればそれは───そなただ」

過ぎた執着は毒にしかならぬと、スウォルはあの晩、ソンジュンに言った。彼女の、底の見えぬ沼を思わせる瞳が、何処からか自分を見ているような気がした。

「王命とはいえ、女人の身で成均館に入学したときから、あの者はキム・ユニという娘が傷つくことなど恐れてはおらん。そなたと違ってな」

王は、傍らに静かに立つチョン博士に視線を投げてから、続けた。

「余は、友の命を守ってやることができなかった。せめて、友の成し遂げようとしたことを守りたい。人は死しても、その志は生き続ける。たとえ余の代では無理でも、いつかはその志がきっとこの世を変える。余はそう、信じたいのだ。───そこで、そなたに訊きたい」

ほんの少しの間の後、王はソンジュンの方へ僅かに身を乗り出し、言った。

「余と共に、闘えるか?あの娘のため、ひいては、志を持つことすら許されぬこの国の女たちのために」


*   *   *


薬房を出たソンジュンは、未だ王の言葉が信じられずに呆然としていた。
女であるキム・ユニが、ユンシクとしてではなく、女として朝廷に出仕する。そんな、夢物語のようなことが本当に実現するのか。この、男女有別の朝鮮の国で。
ソンジュンは頭を振った。王はやろうとしている。そして自分は、共に闘うと心に決め、王の前でそう誓った。なら、ただ信じて前に進むだけだ。弱気になる理由など、何も───。

ふと顔を上げたソンジュンは、庭先の銀杏の木に背中を預け、こちらを見ているジェシンに気付いた。
また授業をすっぽかしたのだろう。髪はいつものざんばらで、服も適当に引っ掛けた風情だ。彼はソンジュンの近くまでやってくると、「なんて顔してる」と呆れたような声を出した。そして、まるで確認でもするかのように、言った。

「“しっかり守れ”って、いつだったかお前、俺に言ったよな?」

ユニとジェシンの男色騒ぎが持ち上がったときのことだ。二人の仲を誤解して、思わずそう言った。キム・ユンシクを大事に思うなら、しっかりと守り抜けと。

「僕は……」

両の拳を握り締め、ソンジュンは苦しい息を吐き出した。

「キム・ユンシクが王に捕らえられたとき、己の無力さを思い知りました。今もそれは同じです。彼女のために、僕に何ができるのか───考えると、不安で」

ジェシンは苦笑交じりに、言った。

「お前も随分変わったもんだ。まさかこの俺に、そんな弱音を吐くとはな」
「自分でも驚いてます」

本当ならジェシンは、一番こんなことを言いたくない相手だ。だがそれを言える相手も、また彼だけだった。
ジェシンはどこから引っこ抜いてきたのか、手にしていたナズナを指先でくるくると回した。
ペンペン草とも呼ばれるそれは、子供がよくおもちゃ代わりにする雑草だ。ソンジュンも幼い頃、スンドルに教わって遊んだ。花穂にたくさんついた実を引っ張ってぶら下げ、でんでん太鼓のように回すと、小さな実がぶつかり合ってちゃらちゃらと可愛らしい音をたてるのだ。

「───伴侶になるってのは、どんなことがあっても死ぬまで一緒にいるって、そういうことだろ。祝言なんてのは、単なる約束の儀式だ。もしそれができないってんなら、お前があいつに伝えりゃいい」
「伝える……?」

小さな白い花穂から目を上げて、ジェシンはソンジュンを見た。

「あいつはかなり鈍いからな。根気よく伝えろ。絶対一緒にいるって。わかるまで、何度でも。お前があいつのためにやんなきゃいけないのは、それだけだ」

口の端の片方を上げ、ジェシンは言った。

「“しっかり守れ”、老論」

立ち去るジェシンのゆらりとした背中を、ソンジュンは見えなくなるまで見送った。
礼儀というわけではないが、何故か、そうしなければいけない気がしたからだった。




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2013/04/02 Tue. 14:01 [edit]

category: 水月

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: あらちゃんさま

>ユニもソンジュンも自分の存在意義、得意な分野で思いっきり力を発揮させてあげたいです。現実の朝鮮王朝では難しいかもしれませんが。

ソンスは青春ドラマですから、そこはゼッタイ押さえておかなくてわ(笑)
もともと現実の朝鮮時代からするとほとんどファンタジーな設定ではあるわけだから、物語の結末としては全然アリだとワタクシは思ってマス。
でも王様には是非とも長生きして欲しい。
ドラマ中既に余命の短さを感じさせる部分があったのが悲しかったわ~(T_T)

あまる #- | URL
2013/04/12 14:35 | edit

ちーん(笑)

いいですね~ちーん!

ジョンムにるいは及ばないかしらとちょっと心配です。

ソンジュンはやはり朝廷でしょう、行くところは。ユニのお目付で終わるわけないですね。
仕事で、コアコンピタンスと言う言葉に当たり、そんなことを仕事中に(汗)思い浮かべていました。ユニもソンジュンも自分の存在意義、得意な分野で思いっきり力を発揮させてあげたいです。現実の朝鮮王朝では難しいかもしれませんが。

あらちゃん #- | URL
2013/04/10 22:07 | edit

Re: あらちゃんさま

ああ……ファンクラブ入っててもそんな葛藤が!(笑)←いや笑い事じゃないか(^^ゞ

正直、番外編ではユニとソンジュンの将来の設定とかそこまでわっっ!(笑)
なんとなくこんな感じになるのかな~ってニオイが出れば充分かなっていう気はしとりますが。

個人的には、ユニは朝廷に入って偉くなるより、市井の人たちの中で彼等に直接関わってってもらいたいなぁという希望があります。成均館の博士は、そのための通過点に過ぎないというか。
で、逆にソンジュンは朝廷の最高幹部まで上り詰めて、王様亡き後陰で国を動かす黒幕、もとい王様の志を継いで欲しいと。もともと老論だし、パパは左議政だし、あの性格からしても成均館の博士よりはそっちのが可能性としては高い気がするんですよね~。
史実に忠実になると、正祖の死後は貞純大妃っていう強敵(^^ゞがいるらしいのでなかなか大変だとは思いますが、この人が権力握ってたのは3年くらいと短かったみたいなんで、まー大丈夫でしょう(笑)

兵曹判書は島流しになって、官職に復帰できないまま流刑先で死亡。ちーん。

あまる #- | URL
2013/04/10 01:35 | edit

ファンクラブ入っててもチケット入手できなかったようです。

>ドームなんて夢のまた夢

同僚は東方神起の時からのファンクラブ会員ですが、チケット入手できなかったようです。16000円で豆粒のようなユチョンを直に見るか、パブリックビューイングに4700円出すか、迷っているうちに買えなくなったよう・・・

>仕事を持つ女が幸せになれるか否かは、旦那の度量にかかってると・・・

私の妄想の中ではユニの官職はソンギュンガンの博士止まりになっています。原作より王様の死期に近い時期にドラマの設定を持ってきたことにどうしても引っかかるのです。(それより引っかかるのはジェシンやヨンハの設定ですけど・・・。それにジェシンは女の子がソンギュンガンにいるようなこと言ってましたよね。そうするとユニは女の博士として認識されてるの?大司成は夫婦だって認識してる?王様が改革したの?)

官職に就きたいようには見えなかったのですが、いずれにしろユニは内棟に引っ込んでるだけの妻にはなり得ないでしょうから、博士以上の官職に就かなくてもなんかやらかすでしょうね。ソンジュンにはかなりの度量がどうしたって必要っすね!
ジョンムが自分を老いぼれと表現したこともすごく気になっています。もしかして引退する気?
そして逮捕された兵曹判書はユニが実は女人だってばらさないのかしら・・・保身や減刑の取引材料として。王様はそのあたりどう収拾するんだろう。
ああ~ごめんなさい~考え始めると止まらない。ドラマはホントに疑問だらけだ~~~

ユニ達の将来をあまる様がどういう設定に持って行くかすごく楽しみにしています!

あらちゃん #- | URL
2013/04/09 01:25 | edit

Re: snowwhiteさま

> それが実現できれば幸せにつながるのか、どうか不明なところがちょっと悩ましいところですが・・・

仕事を持つ女が幸せになれるか否かは、旦那の度量にかかってるとワタクシは思うんですよね。
ソンジュンは、今で言うと宇宙飛行士を奥さんにしちゃった人だと。
男として人間として、生半可な器では、自分のヨメを宇宙に飛ばすことなんてできないでしょ?
で、ソンジュン溺愛のあまるとしては、ヤツはそれっくらい器のデカイ男であって欲しいと思うわけです(笑)

> 話は変わりますが、JYJのコンサートがありましたよね?

そうそう!(嬉)でもファンクラブとか入ってないエセペンのワタクシにはドームなんて夢のまた夢ですわ(T_T)
でもPCとあいぽんに張り付いてチェックはしてましたよー。
ジュンスの「今日本だよ~」ってラインのメッセや参戦した皆さんのリポートに幸せを貰いました。
これからこうやってどんどん日本での活動が増えるといいなぁ~。

あまる #- | URL
2013/04/07 10:33 | edit

まさか、こんな展開になるとは予想だにしていませんでした!
それが実現できれば幸せにつながるのか、どうか不明なところがちょっと悩ましいところですが・・・

話は変わりますが、JYJのコンサートがありましたよね?
あまるさんも観に行かれたのかな~なんて考えておりました。

snowwhite #bSUw9.7Y | URL
2013/04/06 10:38 | edit

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