スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

--/--/-- --. --:-- [edit]

category: スポンサー広告

cm --  tb --  

第一話 15 再会 

小屋の中は真っ暗で、何も見えない。ユニは辺りの気配を伺いながら、一歩一歩、慎重に奥へと歩を進めた。どれだけ古い小屋なのか、床が、ひどくきしんだ音をたてる。雨音がまた激しくなったようだ。

「昼の声は鳥が聞く」

 暗闇からいきなり声がして、ユニは心臓を飛び上がらせた。だがすぐに、ファンの言葉を思い出した。

『いいですか、これが合言葉です。男がそう言ったら───』

「───夜の声は鼠も聞けない」

 ユニが低く呟くと、床を踏みしめるかすかな足音が聞こえた。足音は、一歩ずつゆっくりとこちらへ近づいてくる。

『絶対に顔を見られないよう、気をつけなきゃいけませんよ』

 ユニは足音の方に背中を向け、近づく気配を待った。やがて とん、と背中に何かが当たる。
 ユニが目の端に捉えたのは、白っぽい道袍の袖。顔を見られたくないのは向こうも同じとみえ、こちらに背中を向けている。位置からすると、かなり長身の男のようだ。
 ユニはできるだけ顔を動かさないようにして、背後に禁書の包みを差し出した。これを男が受け取れば、50両だ。張り詰めていた気持ちが、ほんの少し、緩みかけた瞬間。

 がしっ、と、手首を掴まれた。

───え?

 反射的に振り向く。暗がりにぼんやりと浮かんで見える、見覚えのある怜悧な頬。ユニは思わず、上ずった声を上げた。

「ワ、ワン殿?!」

 沈黙したまま、ユニを見下ろす冷ややかな目は確かにあのワン殿だった。どうして彼がここに、と一瞬混乱したが、すぐに悟った。してやられたのだ。こんなことまでするなんて、どこまで執念深い男なんだろう。

 ユニはきびすを返し、禁書を抱えたまま小屋を飛び出した。外は土砂降りだ。ユニの頭の中も、もう滅茶苦茶だった。ワン殿がその後を追い掛け、またユニの腕を掴む。ユニは振り返ると、男の顔をこれ以上ないくらい憎しみのこもった目で睨みつけた。
激しい雨に打たれながら、男が言った。

「僕がどれだけ捜したと思ってる!」
 
ユニは掴まれた腕を振りほどき、言い返した。

「ああ知ってる。よく知ってるさ!あんたのお陰で……」
「いたぞ!捕らえろ!」

ユニは はっとして口を閉じた。雨音に紛れ、声と共に無数の足音が聞こえてくる。振り返ると、いくつもの松明の明かりが列をなしてこっちへ向かってくるのが見えた。

「官軍まで呼んだのか?」
「あ……」

ユニは思い切り、男の横っ面を引っぱたいた。

「何をする!」
「まだとぼけるのか?」

この男に対して、何もしていないとは言わない。だが、あのときの仕返しにしては酷すぎる。

「捕らえろ!」

 官軍が、すぐそこまで来ていた。今は言い争っている場合ではない。いっそ男の髪の毛を全部むしりとってやりたいくらいだったが、ユニは身を翻し、走りだした。その肩を掴み、男が禁書を奪い取る。

「これは僕が持つ」
「代金は?」

 男は答えなかった。代わりに、背後から襲いかかってきた官軍兵に鋭い肘鉄を食らわした。間髪入れずに、鮮やかな回し蹴りで兵士三人を次々とのしていく。恐らくは武道の心得もあるのだろう、貴公子然としている彼の普段の佇まいからは想像もつかないほど素早く、無駄のない動きだ。

 だが多勢に無勢、彼一人が立ち向かうには限界がある。官軍兵たちがすらりと腰の剣を抜くのを見、男はじりじりと後じさった。振り返りざま肩を押されたユニは、ぬかるんだ土に足をとられ、そのまま山の斜面を転がり落ちてしまった。

 
 激しく降りしきる雨の中を、官軍の怒号が響き渡った。


* * *


 ひっきりなしに屋根を叩く雨音も、聞きようによっては妖艶な妓生の奏でる伽耶琴(カヤグム)にも引けを取らない。
特にこんな晩は。

「がっかりだよ、イ・ソンジュン。あっさり捕まっちゃあ、ちっとも面白くない」

 ヨンハはそう呟いて、酒の入った杯を指先でゆっくりと回した。
 ビョンチュンが品のない笑い声をたてる。

「今頃、義禁府に連行されてる頃か?いい気味だ」
「奴は覆試も受けられないかもな」

 コボンが調子を合わせ、両脇に侍らせた妓生たちと一緒に けたけたと笑った。
 ヨンハは斜向かいに座り、静かに杯を傾けているインスにちらりと視線を投げ、細い煙管を口に咥えた。
 
 その圧倒的な存在感と指導力によって、この若さで成均館の掌議の座に君臨する男、ハ・インス。
 彼に心服する儒生は多い。成均館に入学した当初、ヨンハもその一人だった。もちろん彼の中に、商人の血筋特有の計算高さがあったことは否めないが、少なくともインスと行動を共にしていれば、退屈することはないだろうと踏んでいたのだ。
 
 だがこのところどういうわけか、彼らと一緒にいても、以前ほど楽しいと思わなくなっている自分に気づいた。理由は、わからない。
 ただ、どうしようもない違和感だけが、彼のまわりを取り巻いて、尻のあたりをむずむずさせるのだ。

───つまらないよ、イ・ソンジュン。本当につまらない……。

 胸の奥で呟きながら、ヨンハはまた杯を煽った。

 

* * *


「まったく……本を持ってくなら、代金を払えよ!」

 どこへ消えたかわからぬ相手に向かい、ユニは叫んだ。泥だらけの道袍を手で払ってみるものの、この雨では何の意味もない。やっとの思いで立ち上がる。転がり落ちたときに少し捻ったのか、足首が傷んだ。

あいつってほんと、何てやつ。

 怒りに任せて更に悪態をつこうとした口が、いきなり塞がれた。そのまま、強い力で引っぱられる。
 気がつくとユニは、山肌に突き出た岩の陰にいた。隣では、あの憎っくきワン殿が、ユニにぴったりと身体を寄せて息を潜めている。
 ユニの口は、彼の手で塞がれたままだ。周囲の様子を伺うワン殿の表情は、緊張のためか酷く硬い。
 
 官軍兵たちの近づく気配に、ワン殿は息を呑んだ。彼らの目から姿を隠せる空間は、ほんの僅かしかない。
 ユニの肩を抱く腕に、力がこもる。ぐい、と引き寄せられ、二人の身体がますます密着した。まるで、強く抱き締められている格好だ。ユニの心臓が跳ね上がった。

 長く弟の傍で看病をしてきたから、男性の身体というものに全く免疫がないわけではなかった。だが今ユニの身体をがっちりと抱きすくめている彼が発するものは、弟のそれとはまるで違っていた。

 目の前で波打つ、くっきりとした喉仏。濡れた服を通して伝わってくる、あたたかな体温と、彼の息遣い。
そして草いきれとは明らかに違う、かすかに漂うこの香りは───もしかして、彼の体臭なのだろうか。
 
 頭がくらくらして、ユニはぎゅっと目を瞑った。少しでも離れようともがくが、彼の強い力に阻まれて、身動きすらとれない。きつく巻いたさらしがあるとはいえ、こうも互いの胸をくっつけていては、早鐘のように打つ鼓動が相手に伝わってしまうのではないかと、ユニは肝を冷やした。

 どれくらいそうしていただろう。官軍の気配が遠のいてやっと、ワン殿は ほっと息を吐き出し、腕の力を緩めた。塞がれていたユニの口が、ようやく開放される。ユニは無意識に、彼の整った顎の線を見上げた。


 唇が触れ合うほど近くで、二人の目が合った。







↓楽しんでいただけたらポチっとお願いします
にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
スポンサーサイト
web拍手 by FC2

2011/08/03 Wed. 07:47 [edit]

category: 第一話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 10  tb 0 

コメント

Re: あらちゃんさま

>最初から何故かソンジュンのユチョンの襟もとにものすごく萌えるんです。

いやわかる!わかりマスよ!
なんかこう、奥まで覗けそうで覗けないカンジが……
最初の夜の、ソンジュンが寝てるときの襟元とか、百日紅のお昼寝シーンの襟元とか、コロ先輩抱きしめて寝てて、飛び起きたときの襟元とかもうたまらんです!!!
↑なんか我ながら具体的すぎて変態さんのようになってますが。
ちなみにワタクシはエロは大好きです!!!

あまる #- | URL
2013/01/29 02:34 | edit

Re: 阿波の局さま

そうそう、またドラマは原作の萌えな部分(笑)をほんとに上手く使ってるんですよね~。
喉仏もそうだし、大射礼の密着シーンとか、コロの目隠し乱闘シーン(原作ではアレやったのはソンジュンでしたが)とか。ユチョはあのノドボトケがキャスティングの決め手だったに違いないとワタクシは信じて疑いません(爆)

あまる #- | URL
2013/01/29 01:57 | edit

のど仏フェチ、指フェチ!

皆さんのフェチ話に顔がにやけてしまってたまりません。
ちなみに私は両方大好きなのはもちろんですが、最初から何故かソンジュンのユチョンの襟もとにものすごく萌えるんです。何だろう?ただの白い襟元なのに・・・襟の開き具合なのか、のど仏近くだからなのか、とにかくユチョンのソンジュンはそこはかとなく色っぽい、というかエロい感じがします。(そこがいい)ほかの俳優さんと衣装は同じなんだけどなぁ。
原作のソンジュンもエロいところが大好き。
なんとなくエロいものが好きと連呼しているようで(笑)情けない気もするのですが、許してください。

あらちゃん #- | URL
2013/01/29 01:31 | edit

>目の前で波打つ、くっきりとした喉仏

原作でも、ソンジュンとの出会いのとき最初にユニの目に付いたのは喉仏だったんですよねv-238

あんな長い指、大きな手で肩をがしっとつかまれたら、・・・(妄想中 笑)

阿波の局 #bo5zNM.6 | URL
2013/01/28 20:57 | edit

Re: ちびたさま

> 私はちなみに『指ふぇち』です。

うほほ~同じ同じ!ユチョは特に歌ってるときの手がエロいんですよぉぉぉ~!!!
ドラマでも、ユチョの手がアップになったときは思わず前のめり(笑)

あまる #- | URL
2012/05/04 00:13 | edit

あまるさま

昼の声は鳥が聞く、夜の声は鼠も聞けない
ここでも暗号かあ・・・

ところで、やっと見つけた愛しい人に会った時にはどうするか。
ちゃんと知ってんじゃん、イ・ソンジュン君子。
『強く抱きしめる』 はい、これ正解です。
良くできました。『イ・ソンジュン!優』

私はちなみに『指ふぇち』です。
指もきれいですが、いちいち動きがなんというかエロい。
ヨリム先輩は、言動はエロいんですが、指の動きやしぐさは優雅でもエロくない。
むしろ、コロ先輩のポコっとした口元の方がよっぽどエロい。
うーむ、色気の出し方って難しいですねえ。

ちびた #D4zl0nFc | URL
2012/05/03 11:34 | edit

Re: 応援させて頂きます

> りゅうれんさま
熱い応援ありがとうです(*^_^*)
でへへ~今日「奎章閣閣臣たちの日々」アマゾンで予約しちゃいましたよ~
発売日が楽しみだあ~

あちらのソンジュンはカンペキすぎるくらいカンペキですが、適度にエロいのがツボです。
ドラマの方もあれっくらい押せ押せでやって欲しかったなあぁ~。
希望としては尊経閣とか明倫堂で押し倒すとか~(爆)

> 全300話くらいでしょうか??
Σ(゚Д゚;そ、そうか…一話15回だから。←今頃気づいた
なんか改めて目眩が…くらくら

> ちなみに「ユチョンののど仏フェチ」って多いようですねー。

たまらんです。ノドボトケの立派な男子はたいがい声もイイんですよ~。大沢たかおとか福山とか…
コロは確かになにかってーとクチ開いてますな(笑)
ぽかーんじゃなくてポコッってカンジがラヴリーv-238

あまる #- | URL
2011/08/05 01:26 | edit

応援させて頂きます

ヾ( ̄ー ̄ゞ))..( シ ̄ー ̄)ツ_フレーフレーフレー
ファイテン♪♪♪

読ませていただきたいので、応援だけさせて頂きました!
全300話くらいでしょうか??
もう一度

ヾ( ̄ー ̄ゞ))..( シ ̄ー ̄)ツ_フレーフレー!!!

ちなみに「ユチョンののど仏フェチ」って多いようですねー。
動画サイトで見ました。
確かに・・・目よりも語っているときがあるような。
私は「ぽっかり開いたコロの口」が超好物です♪

りゅうれん #- | URL
2011/08/04 20:52 | edit

やっと一話終わった(^^ゞ

> りゅうれんさま

こんばんわ~(^^)なんか…ドラマって一時間ちょいだけど結構盛りだくさんなんだってことがよぉくわかりましたワタクシ。←今更
やっぱものすごくムボーなこと始めちゃった気がする…るるる~

> 個人的には「恋に落ちた瞬間」だと思っているんですけどぉ。

ワタシは目の前にゆちょのノドボトケがあったら鼻血吹いて死にます(爆)我が人生に悔いなし。

> 次回、もしかしてソンジュン目線が読めるでしょうか?楽しみにしています。
わはは~(^^ゞどぉでしょお~。何度も言いますが「ここ!」ってとこ以外はほんっとにいきあたりばったりなんで、実際書き始めるまで自分でもわかんないんですよね~。
しかし…やっと二話突入…このちんたらペースで最後までいけるのか自分!(笑)

あまる #- | URL
2011/08/04 00:23 | edit

こんばんわ

まある様

このシーン、このラストのシーンが二人の全ての始まりですよねー。
この時からソンジュンはユニを性別を超えて意識しだすんですよね。
個人的には「恋に落ちた瞬間」だと思っているんですけどぉ。
次回、もしかしてソンジュン目線が読めるでしょうか?楽しみにしています。

りゅうれん #/ZrAXPAI | URL
2011/08/03 21:28 | edit

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://amaru0112.blog.fc2.com/tb.php/18-bf0cf7e4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

2017-08
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。