スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

--/--/-- --. --:-- [edit]

category: スポンサー広告

cm --  tb --  

水月 11 

番外編続きです。チンタラしてる間に現実の季節の方がお話に追いついちゃったなぁ(^^ゞ
ともあれ怒涛の年度末がオワタ……(=_=)
でも今月は新入社員も入ってくるし、まだまだしんどい日々が続きます。

とりあえず飯だけはちゃんと食って頑張ろう~。
*************************************


その晩。目を覚ましてふと首を巡らせたユニは、布団の中でひどく心臓に悪い思いをした。
瞼を閉じて眠るソンジュンの顔が、ちょっと身じろぎすれば触れそうなほど間近にあったのである。

灯火の油皿も空になってしまったのだろう。辺りは暗かった。ソンジュンの手元には、明日の講義の予習をしていたのか、開いたままの写本があった。
いつも姿勢を正して文机に向かっている彼が、眠っている自分の横で、そんな風に寝そべって書を読んでいたのかと思うと、なんとなく微笑ましくて、ユニは小さく笑った。

生死を彷徨う重病人でもあるまいし、つきっきりになる必要はないのに、ユニが寝入ってしまった後もこうしてそばにいてくれる。そんな彼の気持ちが、嬉しかった。
白い単衣だけの襟元が寒そうに見え、ユニは自分の布団を引っ張ってソンジュンに掛けてやった。
そうすると、また一層彼を近くに感じることができた。
寒かった雪の日、こうして二人で一つ布団に入って暖めあったことがあったっけ、とユニは思い出した。
外は雪だというのに、心も体も、あんなにぽかぽかと暖まったことはなかった。
全然眠れなかった、と朝になって彼はぼやいていたけれど。

(ほんとに私……あなたに迷惑ばかりかけてるね)

ユニは伸ばした指先で、ソンジュンの頬にそっと触れた。綺麗な扇型を描く睫毛が微かに震えたが、彼の寝息は静かなままだ。
端正な寝顔をぼんやりと眺めながら、ユニは考えた。
好きだと思う気持ちは、どこから生まれて来るのだろう。
いくら溢れ出しても、それは尽きることを知らず、胸の中を一杯に満たす。むしろ苦しいくらいに。
今はこうしてすぐそばにいても、指先に彼の温もりを感じていても、離れてしまえば途端に寂しくなる。
いっそ少しでも彼のことを嫌いになれたら、もっと楽になるんじゃないかとさえ思ってしまう。

昼間の、ヨンハの言葉が胸をよぎった。

『学問は、溜め込んだって意味はないんだ。使わなきゃ。誰かのために、何かのために』

(もし私がこれ以上の我侭を言ったら、あなたは私を嫌いになる……?)

ふいに、止める間もなく涙が溢れてきて、ユニは慌てた。身体が弱ると涙腺も緩むのかもしれない。
勝手なものだ。自分は彼を嫌いになれたらと思っているくせに、彼の愛が少しでも減ることを想像するだけで、泣けてくるなんて。

ユニはソンジュンに背を向け、声を殺して涙が枕を濡らすに任せた。

夜の闇の中、静かに目を開けたソンジュンが、その震える肩をじっと見つめていたことも知らずに。


*   *   *


宮廷には、そこで執り行われるありとあらゆる祭礼や行事を細部まで描き、記録画として製作・保管する機関がある。
政府官庁の一つ、図画署〈トファソ〉である。

画員と呼ばれる宮廷専属の絵師たちがそこでこなす仕事は、記録画製作だけに留まらない。彼等の描く絵は、国内外の王室に献上する絵画や屏風絵、果ては武官たちが弓術の訓練に使用する的絵まで、多岐に渡っている。

そんな図画署の作業部屋は、多くの画員と茶母たちが忙しく立ち働いているのが常だったが、その日はちょっとした騒ぎになっていた。
図画署署長、キム・ホンドは、部屋に入るなり画員たちが中央にある卓を囲み、何やら興奮気味に話しているのを見かけ、怪訝な表情で声を掛けた。

「何事だ?」

振り向いた画員の一人が、手にした絵筆に頬ずりでもしかねない顔で、言った。

「見てください先生、この筆!持つ手が震えるほどの高級品ですよ!しかもこんなにたくさん!」

画員の肩越しに卓の上を覗くと、なるほどそこには大小様々の絵筆が、桐の箱の中に整然と並んでいた。中には、希少品と言われる白イタチの毛で作られたものまである。傍らに同じような箱が山と積まれているのを見ると、その数は相当なものだと伺い知れた。

「いったいどうしたのだ、これは。陛下からの下賜品か?」

王室に何か慶事でもあったのかと目を丸くしたホンドの背に、「壇園先生ですか?」と声を掛ける者がいた。
振り向くとそこには、派手な柄物の道袍を着た両班の青年が、開いた扇子を手に立っていた。彼はにっこりと笑って、言った。

「成均館掌議、ク・ヨンハと申します。ほんのご挨拶代わりの品ですが、どうぞお納めください」
「掌議?……君が?」

まさかこんな軽そうな男が?と、ホンドは驚いてついそう訊き返してしまったのだが、青年は気にも留めぬ様子で、明るく言った。

「実は先生に、折り入ってお尋ねしたいことがあったもので。少し、お時間をいただけますか」


*   *   *


結局、ユニがどうにか起き上がれるようになったのは、熱を出してから五日も経ってからのことだった。
講義に出るまでに少しでも遅れを取り戻しておこうと尊経閣に向かっていると、途中、ユニを探していたらしい書吏のチュンホに呼び止められた。
チョン博士がお呼びなので、今すぐ薬房にいらしてください、という。

ユニは思わず、ここ数日の記憶をひっくり返した。チョン博士に呼び出しを食らうときは大抵、きついお灸が待っていたから、ユニのそれはほとんど条件反射といってよかった。
栄養失調で倒れた件は、博士に診察を受けるときにこんこんと諭されたから、今更ではある。特に思い当たることもないまま、訝りながら薬房へ行ったユニは、薬草の香りの染み付いた室内に足を踏み入れた途端、驚きに立ちすくんだ。

そこには、ごく普通の両班の服装に身を包んだ王が、薬房の簡素な椅子に座って彼女を待っていた。
しかもその傍らには、同じように呼び出されたのだろうか、今の時刻には明倫堂で講義を受けているはずのソンジュンまでが、神妙な顔つきで立っている。

従者といえば部屋の隅で気配を消すように控えている内侍一人で、王がお忍びで出向いていることは一目で見て取れた。
慌てて面を伏せたユニが自分の心臓を宥めていると、王は穏やかな声で言った。

「暫くだな。変わりはないか」
「はい。陛下におかれましても、御身お変わりなく……」
「堅苦しい挨拶はよい。今日は、そなたらに訊きたい事があって参ったのだ」

ユニとソンジュンは揃って身体を固くして、王の言葉を待った。

「近く、二人は祝言を挙げるそうだな」
「はい」
「夫婦になった折には、居館修学を辞したいとの願い出があった。これはキム・ユニ、そなたの希望か」

ユニは床を見つめたまま答えた。

「小臣ども二人の希望でございます」

そうか、と王は頷いた。そして、考え込むような少しの間のあと、言った。

「成均館を出れば、人目につくことにもなろう。今より更に自重が必要となるが、構わぬのか」
「恐れながら、陛下。私は、祝言の後は、女人に戻るつもりでおります」
「何?」

王が僅かに身を乗り出した。ユニの答えを、予想もしていなかったという表情だ。
だがそれは、隣のソンジュンも同じだった。雷に打たれたように目を見開いてユニを凝視している。
王はソンジュンにちらりと目をやってから、ユニに尋ねた。

「では、そなたは退学すると申すか」
「はい」
「イ・ソンジュンはそれを承知してはいなかったようだが?」
「……はい」

ソンジュンがユニの返事を遮るようにして、「申し訳ございません、陛下」と低頭した。

「この件に関しては、もう一度二人で話し合いを……」
「いいんです。これは、私が決めるべき事なのです。もっと早く、こうするべきでした」

ユニの袂を引っ張り、ソンジュンが声を潜めて言った。

「ユニ、きみは少し黙っていろ」
「貴方こそ黙ってて。これは私の問題なんだから」
「きみの問題が僕の問題じゃないとでも?」
「イ・ソンジュン、キム・ユニ」

見かねたチョン博士が、厳しい声音で二人を諌める。

「陛下の御前だ。控えなさい」

二人は慌てて、頭を垂れた。
王は深呼吸するかのように深く息を吐き出し、しばし沈黙していた。

どのくらいの時間が経ったのだろう。いや、待つ身にそう感じただけで、実際にはさほどの間ではなかったかもしれない。
やがて、王は静かに口を開いた。

「では、キム・ユニ。祝言まで待つ必要はない。そなたはたった今ここで、成均館を退学するがよい」






↓楽しんでいただけたらポチっとお願いします
にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
スポンサーサイト
web拍手 by FC2

2013/04/01 Mon. 16:20 [edit]

category: 水月

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 7  tb 0 

コメント

Re: *る*ゃんさま

ご訪問ありがとうございます~(^^)

ワタシも「美男ですね」だと二番手のシヌひょん贔屓なので、ソンスも定石通りだとコロ落ちするはずだったんですけどね……(笑)ゆちょのせいかソンジュンのせいか相乗効果なのか。謎。

ソンジュンは特別ですが、コロもヨンハも書くときは目茶苦茶愛込めてますので、楽しんでいただけると嬉しいです。今後ともよろしくお願いしますね~

あまる #- | URL
2013/09/24 00:32 | edit

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

# | 
2013/09/22 18:01 | edit

削除!(>_<)

削除されておりましたか~・・・悪いと思いつつコピッといてよかった(T_T)
なんか純粋な気持ちになっちゃって、こんなにユニが好きだったんだ~とか、こんな目で見られたら恋に落ちちゃうだろ~とか、またまた5~6回繰り返し見てしまいました。送ってあげられるものならあまる様に送ってあげたいけど、送り方わかりません。ごめんなさい。

あらちゃん #- | URL
2013/04/04 01:20 | edit

Re: あらちゃんさま

> (YouTubeのdo you really want my loveにのせて展開する苦悩のソンジュンをご存じですか?)

モチロンですとも~。地下サイトのネタにもしたことあるくらいお気に入りです。
(今見たら動画は削除されてましたが(^^ゞ場所変わったかな)
ソンジュンの切ない表情満載でたまらんですわ~(^^)

あまる #- | URL
2013/04/03 07:26 | edit

やっぱりソンジュンは素敵

>瞼を閉じて眠るソンジュンの顔が、ちょっと身じろぎすれば触れそうなほど間近にあったのである。

 ・・・死にそう、息止まって。
水月毎回とっても楽しみに読ませていただいています。
私事ですが、今懺悔したい気持ちで一杯です。
久しぶりにYouTubeの、ものすごく好きな映像を観ました。どうしたらいいかわからないくらいよかった。やっぱりユチョン・ソンジュンは永遠に好きだ~。
最近自分の妄想の中でおちゃらけたソンジュン像を楽しんでいた自分が申し訳なくて、泣けてくるくらいカッコいい。なんでこんなことで泣けるのかよくわかりませんが(年齢?笑)

と言うわけで?シリアス路線のソンジュン達をすごく楽しみにしています。
(YouTubeのdo you really want my loveにのせて展開する苦悩のソンジュンをご存じですか?)




あらちゃん #- | URL
2013/04/03 00:56 | edit

Re: ちびたさま

もちろん、おっけーですよん。
楽しみにしてますので、ゼヒゼヒよろしくお願いします(^^)

あまる #- | URL
2013/04/02 00:19 | edit

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

# | 
2013/04/01 22:36 | edit

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://amaru0112.blog.fc2.com/tb.php/179-7cdafa78
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

2017-08
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。