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水月 10 

ちょっと短めですが、番外編続きです。
次回の更新は本編です、たぶん(^^ゞ
*********************************


「過労と、栄養失調だって?」

講義が終わり、ユニの見舞いに来たヨンハは、殊更に目を丸くして言った。横になっているユニの額に、絞った手拭いをあてがってやりながら、ソンジュンが小さく溜め息をついた。

「試験と筆写の仕事が重なってたところに、風邪で食欲もなかったみたいで。ちゃんと食事をとって休めば心配ないそうです」

はっ、とヨンハは呆れて息を吐き出した。

「成均館の儒生が栄養失調なんて、王が聞いたら泣くぞ。国の威信に関わる問題だ」
「……それはもう耳にタコができるくらい聞きました」

布団の中のユニが、げんなりした声で言った。熱のせいかそれとも散々聞かされたのであろうソンジュンの小言のせいか。たぶん両方だろうとヨンハは思った。

「食堂に何か消化のいいものを頼んできます。ついでに薬を用意するので、その間見ててもらえますか」
「おいおい、一時も目が離せないなんて、テムルは赤ん坊か?」

呆れ混じりにからかうヨンハに、ソンジュンは腹立たしさを隠そうともせず、言った。

「ちょっと目を離すと、すぐ起きだして仕事しようとするんです。しっかり見張っててください」

なるほど、とヨンハは納得した。立ち上がろうとしたソンジュンを、ユニの手が引き止める。

「食事は、いい。何も食べたくないの」
「無理してでも口に入れた方がいい」
「だめ。そんな、吐いたらもったいない……」

こんなときに何を言ってるんだと小言の体制に入ろうとしたソンジュンを、ヨンハがくすくす笑いながら手で制した。

「それでこそテムルだ。その意気で食え。お前ならできる」

ヨンハに促され、ソンジュンは一礼して部屋を出て行った。その足音が遠ざかるのを待ってから、ヨンハは さて、と胡座をかいた膝の上に頬杖をついた。

「ヒョンに言ってごらん。カランと何があった?」

ユニは布団の端を目の下までずり上げ、くぐもった声で言った。

「別に……何もありません」
「そんなわけないだろ。奴を見たか?お前よりよっぽど死にそうな顔してたぞ。ついこの間まで煮崩れた豆腐みたいにしまりのない顔してた奴が、まるで別人だ」

ヨンハの言葉に、ユニは自己嫌悪を募らせたように眉尻を下げた。

「……もしかして、婚約を破棄しちゃったとか?」

布団の中で、ユニは首を振った。

「ほんとのことを話したら、破棄されるのは私の方です、きっと」

熱のせいか、ヨンハの前では珍しく娘らしい話し方になっていたが、彼は敢えて指摘せずに尋ねた。

「どういう意味?」

ユニは言葉を選ぶように長いこと黙っていたが、やがて言った。

「ユンシクが大科を受けるって聞いて……私、素直に喜んであげられなかった。結婚したら、成均館も辞めなきゃいけないんだって思うと、すごく悲しくなって」
「カランは、結婚しても一緒に成均館に通うつもりでいるんじゃないのか?」
「たぶん……。彼は、そうすれば私の気が済むと思ってるから。結婚したら、ユンシクが入る書院も彼が用意してくれるって聞いて、急に虚しくなっちゃったんです。じゃあ、私がこれ以上成均館にいる意味ってなんだろうって」

ふうん、とヨンハは鼻を鳴らした。

昼下がりの清斎は随分と静かだ。
こんな時刻に部屋にいることなど滅多にないヨンハには、まるで別世界のように感じる。
障子戸を通して柔らかく差し込む陽の光が、ユニの布団の隅を温めているのに目をやりながら、独り言のように彼は口を開いた。

「───学問っていうのはさ、金と一緒だと思うんだよね」
「お金、ですか?」
「そう。たくさんあれば、それにこしたことはない。けど、溜め込んだって意味がないんだ。使わなきゃ。誰かのために、何かのために」

ユニは黙って、視線を天井に移した。
ヨンハはふいにユニの手首を取ってひっくり返すと、しかめつらしくそこに指先をあてた。

「何してるんですか?」
「脈を診てるんだ。黙ってろ」

脈診なんてできないくせに、とユニは笑ったが、面白がっているのかそのまま手首を預けている。
ヨンハは頷くと、言った。

「わかったぞ。これは、過労じゃない。知恵熱だ」
「知恵熱って……私は赤ん坊じゃないって言ったの、先輩じゃないですか」
「頭の中は赤ん坊みたいなもんだろ、お前は」

ひどい、と口を尖らせたユニの手を布団の中にしまってやりながら、ヨンハは言った。

「カランは、もう見つけちゃったんだな、自分の金の使い道を。だけどお前は、今やっと探し始めたとこなんだ。だから熱まで出して、考えてる」
「……見つかるんでしょうか。私のお金の、使い道」

「もちろん見つかるさ」とヨンハは請け負った。

「チョン博士や陛下はお前を特別な人間だと思ってるかもしれないが、私はそうは思わない。何処にでもいる、普通の娘だ。けど、その普通の娘が頑張ってやってのけることだから、世の中に対して意味を持つ」

しばらく考えて、ユニは言った。

「私みたいな娘が、他にもいるってこと……ですか?」
「たぶんね。きっと、たくさん」

ヨンハはそう言って、片目を瞑った。

「休んでる間に、ゆっくり考えろ。お前が選んだ道なら、全力で力になってやるさ。私もコロも、もちろん、カランもね」





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2013/03/24 Sun. 22:47 [edit]

category: 水月

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: *ゃみさま

コメントありがとうございます~(*´∀`)

イエイエ、慣れるなんてとんでもない。何度言われても嬉しいですわー(笑)
マメな更新とはまではいきませんが、楽しんでってくださいませ~。
今後ともよろしくです。

あまる #- | URL
2014/09/23 18:16 | edit

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

# | 
2014/09/23 16:05 | edit

Re: ちびたさま

ワタクシも職場では似たようなものなので、お気持ちよくわかりますワ(^^ゞ
まー年寄りばっかりの会社よりは賑やかでいいかなと思いますが。

スウォルは、特にこの女優さん、って想定して書いたわけではないんですが、彼女に着せた服二着は、まさしくそのファン・ジニが着てたやつを参考にしました。赤い花柄のと、全身黄色いの。ちびたさんスゴイ(^^)

あのドラマはとにかく衣装が素晴らしくて、ハ・ジウォンの美貌がますます際立ってましたよね~。

あまる #- | URL
2013/03/30 02:23 | edit

久しぶりの学生気分を味わっている春。
若い者に交じっての日々はほんとーに辛いっす。ドヒョンの気持ち わかるわあ(爆)

あまるさんも年度末やらなんやらのお忙しい中の同時進行での更新、ありがとうございます。
本当にここは私の癒しと元気の源です。(いや本当に)

この水月のスウォル、楽しみにされている皆様それぞれにイメージされている方がいらっしゃると思うのですが、私は某ファン○ニの主役(ほら、あの人よ)を最初からイメージして読ませて頂いてました
(すいません!他の方のイメージを崩させてしまったら申し訳ありません)
あの曲者ヨリムに対抗できるのはあの人しかいない!と思いながら脳内変換しつつ楽しませて頂いております。

スウォル姐さん頼んだよーー!(なんかぐだぐだの感想で・・すみません!)

ちびた #- | URL
2013/03/29 18:21 | edit

Re: ともさま

ワタクシもヨリム先輩には頼りきってます、今回(笑)
主人公二人がウジウジしまくってるので、彼が引っ張ってってくれないとお話が全然進まない……(^^ゞ
これからもよろしくお願いしたいところです。

あまる #- | URL
2013/03/28 01:29 | edit

更新お疲れ様です!

ヨンハの存在って、とっても大きくて頼れますよね♡
チャラ☞頼れるサヒョン これはもうご馳走ですね。
ホントいい男だわー

とも #- | URL
2013/03/26 07:59 | edit

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