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第十三話 4 杖打大会 

bandicam 2013-01-31 11-06-58-613
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書吏ハム・チュンホは不思議なものを見るような面持ちで、丕闡堂前広場を眺めていた。
普段は何かといさかいの絶えない東西清斎の儒生たちが、互いに入り混じって歌い踊り、大いに盛り上がっている。
物心ついた頃から20年近くここにいるが、こんな光景が成均館で見られるとは、想像もしていなかった。
同じようなことは、大射礼のときにもあった。キム・ユンシク庠儒が勝利し、蕩平組が優勝を決めたあのときだ。
どう言い表わせばいいのか判らないが、創立以来この成均館で断固として守られてきた何かが、確実に変わりつつある。それは、彼にも感じ取ることができた。
ただひたすら、自分や郷里の家族の生活のため、日々の平穏を願って黙々と働いてきたチュンホにとって、その変化の兆しは理屈なく彼を怯えさせるものだったが、また一方で、わくわくするような妙な気持ちも覚え、彼はますます混乱するのだった。

ジャンボクが、軽く咳払いした。ぼんやりしていたチュンホは慌てて、握り締めていたバチを振り上げた。
競技場に、合図の銅羅の音が鳴り響く。

「東軍選手、入場!」

応援団長の打ち鳴らす太鼓に合わせて、儒生たちから地響きのような歓声が沸き起こった。
並び立つ儒生たちによって作られた花道を、打棒を手にした選手たちが悠然と歩いてくる。
額に青い鉢巻きを絞め、白藍の戦服に身を包んだ東軍の先頭は当然、掌議ハ・インスだ。その後ろに、カン・ム、コボン、ミョンシク、ヨンハらが続く。
最後に現れたソンジュンに向かい、来賓席の天幕から一際熱のこもった拍手を送る者がいた。父親のハ・ウギュと共に観戦に訪れたヒョウンである。
彼女は上機嫌だった。大射礼のときと違い、今度は兄インスと婚約者であるソンジュンは同じ組で戦う同志だ。
今日は心置きなく(といっても前回も露ほども兄に遠慮などしていなかったのだが)ソンジュンを応援できると、朝から張り切っていたのである。

再び、銅羅が鳴った。

「西軍選手、入場!」

競技場の反対側から、こちらは赤い鉢巻きに紫の戦服で、選手たちが入場する。
ジェシンを筆頭に、ユンシク、ウタク以下数名。その中には、ビョンチュンもいた。
宴席では、静かな微笑みを浮かべてユンシクを見つめるチョソンの姿がある。その脇で、エンエンとソムソムは悲鳴のような声を上げた。

「ちょっと、どうなってるの?花の四人衆が真っ二つよ!」
「それじゃ、どっちを応援すればいいの?東軍?西軍?ああ、こんなのってないわ!」

競技場の中央に整列し、向かい合う東西の選手たちを他所に、応援団の戦いは既に始まっているようだった。
西軍応援の旗振り役は、ドヒョンである。何処から調達してきたものか、妓生の格好をして、あのいかつい顔に化粧まで施す念の入れようだ。

そんな試合開始前の、派手な応援合戦が繰り広げられる中。
来賓席の最前列で、兵曹判書ハ・ウギュは、夫人同伴で隣に座るイ・ジョンムに低く耳打ちした。

「ご期待ください、大監。今夜、この中の誰かが紅壁書として現れ、我らの手の内に飛び込んでくることでしょう。さすれば、奴が左議政様のお気を煩わせることもなくなります。どうかご安心を」

ジョンムは儒生たちに目を向けたまま、さして興味も無さそうに言った。

「そのような大口を叩いて、明日の朝恥を掻くことにならなければよろしいが」

左議政には、ウギュのやり方を決して認める気はないらしかった。頑な態度は、非難の現れだ。だがウギュには確信があった。手段はどうあれ、結果さえ出せば左議政を捻じ伏せることはできる。過去にも、それは立証済みだ。
この私をないがしろにできるのも今だけだ、と、ウギュは競技場に視線を移した。そして、何処かにいるはずの紅壁書を睨み据えるように、儒生たちに目を凝らした。

一方、こちらは広場の北側に設えられた職員席である。大司成が卓の上に用意された救急箱をぽんと叩き、機嫌よく言った。

「今日に限っては、これの出番はきっとありませんよ。老論がどうだ少論が何だと相手構わず飛び掛かる者もいません。我々はのんびり楽しく観戦といきましょう」

傍らに立っていたユ博士が、彼にしては珍しく感嘆の入り混じった声で、言った。

「今回の組み分けは、毎年勝利を収めていた老論から強い反発があったでしょうに。掌議は、大きな決断をしましたな」

ユ博士の言葉に、ヤギョンは皮肉めいた笑みを浮かべる。応援に沸き返る儒生たちを眺め渡しながら、彼は言った。

「学生たちが自ら選んだ、成均館の掌議ですからね。その程度の徳がなければ、務まらんでしょう」


入場を済ませた選手たちが、それぞれの待機席へと散らばる。
ソンジュンの態度は相変わらずだった。口をきかないどころか、これだけ傍にいても、ユニとは決して目を合わそうとしない。
手筒を巻こうとしていたソンジュンの手から、するりとそれが滑り落ちた。腰を屈めたソンジュンより先に、ユニが拾い上げる。互いの頭がぶつかりそうな距離で、二人の視線が交差した。だがそれも一瞬だった。
彼はすぐに目を逸らすと、礼を言うどころか、余計なことをするなといわんばかりにユニの手から手筒を奪い返した。
そのまま待機席へ戻ろうとするソンジュンの行く手を塞いで、ユニは言った。

「昨日のことで、まだ怒ってるの?」

返事はない。ユニは更に言葉を継いだ。

「ぼくは本当に、芙蓉花のことなんて何とも思ってない。信じてよ」

言いながら、ユニは傷ついていた。事実を胡麻化すための嘘とはいえ、婚約者への横恋慕が、ここまで彼を怒らせるなんて。彼はそれほどまでに、芙蓉花が好きなのだ。これまで、ユニとの間に培ってきた友情すらも、虚しくしてしまうほど。
それでもいい、と思った。
所詮、ソンジュンに女として愛されるなんて夢のまた夢だ。だが、彼との間には、この成均館でずっと一緒に過ごしてきて育った絆があると、ユニは信じていた。それはユニとソンジュンだけのもので、たとえ芙蓉花といえども、共有できるものではない。それで充分だった。
だから、失いたくなかった。この絆だけは。

「本当だ。ぼくには、チョソンだけだ。チョソンだけを……一途に想ってる」

大きな石を飲み込んだかのように、声を出すのが苦しかった。だがユニがそうやって懸命についた嘘も、ソンジュンには何の変化ももたらさなかった。むしろ、ユニのそうした言動が更に追い打ちをかけたかのように、彼の表情はいっそう険しくなった。

「だから何だというんだ。君が誰を好きになろうが、僕には何の関心もない。くだらない弁解はやめてくれ」

やっと聞くことのできた彼の言葉は、これまでのどの瞬間よりも冷たいものだった。
ユニは唇を噛み、胸にせり上がってくるものを必死にこらえた。

「テムル!」

太鼓の音に紛れ、西軍の待機席から彼女を呼ぶジェシンの声が聞こえる。走って戻ったユニの顔を見るなり、ジェシンが尋ねた。

「どうした?老論に、何か言われたのか?」

ユニは首を振り、殊更明るい声を出して言った。

「先輩、ぼく、今日は精一杯頑張るつもりです。今まではいつも同じ側だったけど、これからは多分、違うから」

向かい側の、東軍の待機席を見る。同じ組の選手たちと離れて、手筒の紐を縛るソンジュンの怜悧な横顔があった。
その姿をじっと見つめながら、ユニは言った。

「ぼく一人でもちゃんとやれるってとこを、見せてやります」

邪魔な袂をまとめ、手筒に腕を通す。紐を結ぶのに手間取っていると、ジェシンがぐいとユニの手を取り、紐を奪い取った。ユニの腕に手早く巻きつけ、きゅっと結ぶ。

「お前は、独りじゃない」

彼は酷く怒ったような口ぶりで、そう言った。







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2013/01/31 Thu. 11:17 [edit]

category: 第十三話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: ともさま

はじめまして~。ご訪問ありがとうございます!

ヨンハは確かに恋愛要素は少ないですね(^^ゞ
でもこのも少し後の、コロを止めながら泣いちゃうとこはすごい好きなシーンです(^^)
今後ともよろしくお願いしますね~

あまる #- | URL
2013/02/05 01:22 | edit

はじめまして

読ませていただいてます!花の四人衆大好き!
コロ&ヨンハに夢中です♪
コロは妄想☜(笑)しやすいけど、ヨンハはしにくいな。恋愛要素がドラマでなかったからかな。

更新楽しみにしています!!

とも #- | URL
2013/02/04 14:11 | edit

Re: 阿波の局さま

ワタシも言われたい~(>_<)
まー相手がコロ先輩だから、ってーのもあるんですが(笑)

あまる #- | URL
2013/02/01 02:11 | edit

Re: あらちゃんさま

コロたんはどっちかというとセリフより行動で萌えさせてくれる人なので(肩担ぎ上げたり、靴紐結んでくれたりおんぶしてくれたりおイモふーふーしてくれたりああ……)ここは数少ない萌え台詞の一つと言えますな~。
ソンジュンは逆に台詞萌え。しかし素晴らしいわこのキャラ設定のバランスの良さ。ソンジュン患いでもコロに萌えずにはいられないですもん(^^)

あまる #- | URL
2013/02/01 01:40 | edit

>「お前は、独りじゃない」
彼は酷く怒ったような口ぶりで、そう言った。

コロ先輩、そのやさしさを私にもお恵みを・・・v-217
こんなこと、言われてみたい。

阿波の局 #bo5zNM.6 | URL
2013/01/31 19:25 | edit

(T_T)すでにこの辺から泣けます。
「お前は、独りじゃない」って台詞、超好きです。コロサヨンいいキャラですよね~ソンジュンなんかどっか行っちゃえ~(T_T)←今日もあまる様にだだをこねてしまった・・・

あらちゃん #- | URL
2013/01/31 18:38 | edit

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