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第十二話 14 入清斎 

bandicam 2013-01-03 10-18-48-960


**************************************************


尊経閣は、進士食堂のように閉められているわけではなかったが、流石にこんな日に本を借りに来る酔狂な輩はいないらしく、人の気配はなかった。
母が帰ってしまうと、特にすることもなくなってしまい、なんとなくここへ来てみたユニだったが、かといって外の喧騒を聞きながら試験勉強をする気にもなれない。
書棚から適当に取った一冊を、読むともなしにぱらぱらとめくった。ふと、先刻の母の言葉を思い出した。

『いつかそのときがきたら、話してあげる。昔話をするみたいに』

そのときって、いつなんだろう。

母はまるで、ユニが父のことをそれ以上尋ねるのを、恐れているように見えた。
父に関して、成均館の博士であったという以外にも、何かまだ自分の知らないことがあるのだろうか───。

じっと思いに耽っていたユニの耳に、微かにコンコン、と何かを叩くような音が聞こえた。一瞬、空耳かと思うほど小さな音だった。耳をそばだてると、今度はすぐ後ろの書棚がコンコン、と確かな音をたてた。
振り向くと、いつからそこにいたのか、棚板の間からジェシンの顔がひょいと覗いた。

「こんなところで何してる。大物〈テムル〉の実力を発揮しなくていいのか?」

そんな登場の仕方がいかにも彼らしくて、ユニは微笑んだ。

「先輩こそ、尊経閣にいるなんて珍しいですね。しかもこんな日に」

そう言ってやると、ジェシンは書棚の本を一冊取って、開いた。

「ここの本は全部読んじまったからな。だからめったに来ないんだ」

嘘ばっかり、とユニは笑ったが、ジェシンは素知らぬ顔で開いた頁を眺めている。
まさかと思った彼女は、手近にあった本の裏表紙をめくり、そこに差してある貰冊札を抜き取った。

“文在信〈ムン・ジェシン〉”

その記名欄には確かに、彼がこの本を借りたことを示す証拠があった。
単なる偶然かと訝しんだユニは更に、二冊、三冊と貰冊札を調べたが、彼の名が記されていないものは一つとしてなかった。

「うそ……ほんとに?ここの全部?」

感心したユニがまじまじとジェシンを見上げると、彼は手にしていた本をぱたりと閉じて、棚に放った。

「腹減った。飯食いに行くぞ」

素っ気ない口調はいつもの、彼特有の照れ隠しだったが、すたすた歩いて行く背中は心なしか得意げで、ユニは笑ってしまった。



明倫堂前広場には、いくつもの天幕が張られ、即席の食堂が設えられていた。既に日は落ちていたが、あちこちに灯された篝火で辺りは随分明るく、夕食をとる儒生や女たちで賑わっていた。これで楽師たちでもいれば、どこかの屋敷の宴にでも迷い込んだかと思うほどである。
空いている席を見つけて腰を下ろしたユニは、向かいに座るジェシンにからかい半分に尋ねた。

「コロ先輩も情けないな。入清斎の日に、訪ねてくる女もいないの?逢いたい人に逢える日なのに、心に秘めた人くらい、いないんですか?」

ジェシンがちら、と上目遣いにユニを見る。少しの間のあと、彼はぼそりと言った。

「………だから、お前といるんだよ」

可哀相、とユニが笑うと、ジェシンは横を向いて杯の酒を煽った。
その肩越しに、見慣れた横顔があった。ソンジュンだと気づいた瞬間、ユニは表情を貼りつかせたまま動けなくなった。

彼の隣には、芙蓉花がいた。


*   *   *


「どうぞ。お座りください」
「いや……ぼくはやっぱり、失礼するよ」

ぎこちなく笑って、ユニは言った。
目の前には、にっこり微笑むヒョウンと、さっきから卓の上を睨んだまま一度たりともユニと目を合わせようとしないソンジュンが座っている。
ジェシンは、少し前にヒョウンの友人たちに取り囲まれ、苦り切った顔で逃げるように席を立ってしまい、既に姿をくらましていた。
あんな無作法ななりをしているとはいっても、大司憲の息子だ。花婿候補としては申し分のない家柄である。娘たちに目をつけられたら、ひとたまりもない。
いっそ自分もどさくさに紛れて逃げてしまえばよかった、とユニは一人ここに留まってしまったことを酷く後悔した。

「そんな、せっかくですから、ご一緒しましょう。ソンジュン様の同室生なら、私にとっても大切なかたです。それに、今日は食堂も閉まってますし」

ソンジュン様もお引き留めください、と優しく促すヒョウンの態度が既に彼の妻であるかのようで、それだけで充分傷ついたのに、それに答えたソンジュンの言葉が更にユニの心をざっくりと抉った。

「事情があるんでしょう。無理強いは道理に反します」

冷たい声だった。まるで、邪魔だからさっさと去れと言わんばかりだ。
それほど、芙蓉花と二人きりでいたいのだろうか。

結婚に興味はないと言っていたくせに、本人を前にして気持ちが変わったの───?

島での夜、パチパチとはぜる焚火の音を二人で聞きながら、また一歩、彼に近づけたような気がした。
あれは、ただの錯覚だったのだろうか。

ユニは、折れそうになる気持ちを必死で奮い立たせて、言った。

「では、ぼくはこれで。道理に従って、どうかごゆっくり」

踵を返した、そのときだった。若様〈トリョンニム〉、と呼び掛ける声が、ユニの足を留めた。

「チョソン……?」

篝火の灯りに照らされ、背後の暗がりから浮かび上がるようにしてそこに立っていたのは、チョソンだった。
僅かに肌の透ける青いチョゴリが、同性のユニが見ても はっとするほど艶めかしい。
チョソンは、微笑んでいた眉根をふとひそませて、尋ねた。

「もしや、私が参りましたのは、ご迷惑でしたか?」

ユニは慌ててかぶりを振った。

「いや、そんなことはないよ。ずっと待ってたんだ」

そう言うと、チョソンは心から嬉しそうに微笑んだ。






**************************************
あまるです明けましておめでとうございます(^^)

年も改まったというのに、まだ12話終わっとりませんが(いや次こそは終わります。今度こそホントに(^^ゞ)
本年も何卒よろしくお願いいたします。

年末からこっち体調崩しがちだったせいか、このお正月はほとんどモチが食べられませんでした。
もともと大好きなんですけどね~焼くのも煮るのもあべかわも。
なんか年々ムリな食べ物が増えてくなぁ……うう。

今年はちょっと真面目に生活習慣の改善に努めようと思いマス。




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2013/01/07 Mon. 01:40 [edit]

category: 第十二話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: ちびたさま

確かにねー。ソンジュンが不甲斐ない(笑)ので余計にコロ先輩が優しく見える回でもあります(^^)
酔いつぶれたユニを介抱したり、杖打でも何かとマメにサポートしてくれてるんだけど、肝心のユニの危機!ってとこでソンジュンに出遅れてしまうという……(笑)
せめて告白くらいさせてあげても~とか思ったんだけど、玉砕するのを見るのは辛いか、やっぱし(^^ゞ
コロたんの幸せはファンの方にお任せしますわ~。

あまる #- | URL
2013/01/11 07:31 | edit

この回と次の回、主役はコロ先輩だよなーと思いながら見ていた記憶があります。

絶対に好きな女性とは結ばれないというお約束の二番手なんだけど、たまには二番手にもいい思いをさせてくれー!というファンの萌えに応えた回ですなあ。

ある意味、ソンジュンよりも先に告白してるし、結構きっぱりはっきり意思表示してんだけど、鈍チン ユニっこには全然伝わらず・・・
(ま、伝わったらドラマとして成立しないんですけどね)
うーむ、青春やねえ

ちびた #- | URL
2013/01/09 20:56 | edit

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