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第十二話 12 入清斎 

bandicam 2012-12-30 04-53-33-443
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普段、高い土塀が延々と続くだけの殺風景なその通りは、その日に限ってはさながら祭りの様相を呈していた。
朝も早くから、輝く金糸銀糸の房飾りや御簾を施した豪奢な輿が、次から次へとやってきては、成均館を囲む土塀に沿って横付けされていく。輿が吐き出すのは、色鮮やかなチマを裾引いた良家の息女たちだ。
馬や徒歩〈かち〉で成均館の裏門へ向かう妓生たちの華やかさも、もちろん負けてはいない。念入りに装った女たちがぞろぞろと大挙して館内に吸い込まれていく様は、壮観でもあり、また異様でもあった。

その女たちの列の中に、ウンジュとミンジを引き連れ、いそいそと加わるヒョウンの姿があった。

「お嬢様!」

門に入る手前で呼び止められて振り向くと、見慣れた愛想笑いを浮かべつつ、小走りに走り寄って来る中年男がいた。貰冊房の主人、ファンである。
商魂逞しいのは相変わらずだ。人の集まるところには必ずいるのがこの男である。ファンは、手にした数冊の書物を三人の娘たちに見せながら、言った。

「1両ですよ。いかがです?」
「それは?」

ヒョウンが胡散臭げに尋ねると、ファンの顔ににんまりとした笑みが広がった。

「理想の婿殿の名簿ですよ」
「ほんと?」

ヒョウンを押しのけるようにして食いついたのはミンジである。女友達二人に比べ、容姿においてお世辞にも勝るとは言えない彼女は、“婿”の一文字に人一倍敏感なのだった。
ファンは名簿の束をもう一方の手でぱんと叩いて、言った。

「もちろんですとも。成均館には良家の子息がごろごろしてる。部屋割りを把握してなきゃ、散々迷った挙句、折角の入清斎に男をモノにできず、手ぶらで帰る羽目になりますよ。そんなの悔しいでしょ?老論か、少論か、党派はもちろんのこと、家柄もぜーんぶここに掲載してます!」

そして口元をちょっと手で覆い、「成績表も」と付け加えた。
いったいどんな情報網を持っているのやら、ファンの抜け目のなさにウンジュもミンジも感嘆のため息を漏らしたが。
ヒョウンは余裕たっぷりににっこりと微笑むと、言った。

「いらないわ」

呆気にとられて目をぱちくりさせているファンを残し、ヒョウンはまるで勝者の凱旋のように誇らしげに、成均館の門をくぐっていった。


*   *   *

成均館の中は、塀の外同様、いつもと様変わりしていた。ヘウォンやウタクは若い娘たちを数人従えて構内を案内するのに忙しく、ドヒョンに至ってはどうやら“別宅”の家族が訪ねて来ているらしく、涙にくれる妻を宥めながら弱りきった顔をしている。
開放された館内の建物の中で、家族に挨拶する儒生たちの頭が、あちこちで上がったり下がったりしているのも、入清斎ならではの光景だった。

そんな中、最も生き生きとしていたのはやはりヨンハだった。
後ろ手を組み、庭先をそぞろ歩く彼は、同じ儒生服を着ていてもその姿の良さから否が応にも女たちの目を引いた。
すると彼はまさに絶妙の間で、彼女たちに ちらりと視線を投げるのだ。口元にほんの少しの、意味ありげな微笑を添えて。
そうなるともう女たちは皆例外なく、妖しの術にでもかかったかのように、ふらふらと彼に吸い寄せられてしまうのである。
ほんの数刻もたたぬうちに、ヨンハの後に続く女たちは列を成し、その先頭を優雅に歩く彼はあたかも王のような存在感と雰囲気を醸していた。

「凄い……」
「魔性の男、ク・ヨンハ様の本領発揮だな」

案内していた女たちを あっという間にさらわれたヘウォンとウタクは、ヨンハの後ろ姿を見ながら深く嘆息したのだった。


*   *   *


西斎の裏手を、落ち着かない様子で行ったり来たりしていたビョンチュンは、表の人ごみの中から飛び出すようにこちらに駆けてくる妹の姿を見つけ、破顔した。

「ホン!」

会うのは数ヶ月ぶりだった。地方にあるビョンチュンの自宅は遠く、たった一日の帰宅日では家に到着したら腰を下ろす間もなく発たなければならなくなる。
成均館に入学してから何年もたつが、その間ビョンチュンが家に帰ったのは片手でも数えられるほどだった。

ぎゅっと抱き締めた妹の身体は、ただでさえ痩せているのに、旅の疲れのせいかなお一層細くなったように思えた。
だが彼女は疲れた様子など露ほども見せず、弾けるように笑って兄を見た。

「母さんの具合はどうだ?」
「今は随分いいの。兄さんの仕送りで薬が買えたおかげよ。兄さんが成均館で一番優秀だから、奨学金を貰えるんだって、母さんったらいつも近所の人に自慢してるの」

後ろめたさに妹の顔が見られないのを、涙を拭うふりをして胡麻化した。
毎月実家に使いを遣り、渡している金はもちろん奨学金などではなく、兵曹判書の家から出ているものだ。だがそれも、掌議の機嫌を損ねた今となっては、いつ止まるかわからない。

「……お前も嫁に行かないとな」

せめて妹には、苦労はさせたくなかった。幸い、自分に似ず美人の妹だ。後ろ盾はなくとも、貰ってくれる先はすぐに見つかるだろう。
晴れやかな妹の表情を見ながら、しんみりとした気分になっていたビョンチュンに、遠慮がちな声が尋ねた。

「あの、すみません。キム・ユンシクはどこにおりますでしょう?」

話しかけてきたのは、粗末な服を着た女だった。

「キム・ユンシク……君ですか?ああ、ええと、どこだったかな」

ビョンチュンにとっては不愉快極まりない名前を耳にしたにも拘わらず、冷たくあしらうことができなかったのは妹の手前もあったが、女の古びたチマや艶の無い髪が、病気がちの実家の母と重なったからだ。

ビョンチュンの胸にある、キム・ユンシクへの憎しみと嫌悪感は、生半可なものではなかった。あの男とあの男に味方する奴らのせいで、何度も煮え湯を飲まされたことももちろんだが、ユンシクを取り巻くみすぼらしさが、いつもこんな風に、ビョンチュンに本来の自分の境遇を思い出させる。それが、嫌でたまらないのだ。
両班であるにも拘わらず、貧乏で、惨めな本来の自分を。

掌議の傍にいれば、あの華やかな世界にいれば、自分も掌議のように何もかも完璧な人間になれた気がして、忘れていられたのに。
全部、あいつのせいだ。掌議に愛想をつかされそうなのも、この最低な気分も、みんな。

とそのとき、ビョンチュンの背後から「キム・ユンシクのお母上ですか?」と問う声が聞こえた。
振り向くとそこに、チョン博士が立っていた。





*******************************************
あまるですどうもこんにちわ。

ちくそー!終わらんかったー!長ぇよ十二話!しかもビョンチュンって!(爆)
でもようやく仕事納めだし、なんとか年内あと一回は更新したいと思ってます。ギリギリになるかもだけど。
何より今年をゴリラーマンで終わるのはやはし避けたい……(^^ゞ
なので、年末のご挨拶はまた後ほどさせていただきますー。

ああ……アルコールは更新の敵だ(-_-;)




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2012/12/30 Sun. 05:54 [edit]

category: 第十二話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: ちゃむさま

> 大掃除はゴールデンウイークに持ち越しの予感(@_@)

その手があったかー(笑)
いつもコマメにやってればこんなに大変じゃないのにーと毎年思うんですけどね~(^^ゞ

あまる #- | URL
2012/12/31 10:46 | edit

あはは

ゴリラーマンて(=^▽^=)。さすがです。私も昨晩忘年会(3度目)でした。大掃除はゴールデンウイークに持ち越しの予感(@_@)

ちゃむ #- | URL
2012/12/30 10:33 | edit

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