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相思夢 

クリスマスなので短いですが番外編です♪
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「まだ起きてるのか?」

そう言って、ソンジュンがユニの部屋に入ってきたのは、人定の鐘が鳴って暫くたってからのことだった。
行灯の灯りの中、手紙の文面にじっと見入っていたユニは、少し慌てて、それを折り畳んだ。

「あ、うん。ちょっと、眠れなくて」
「それは?」

筆記本の下に押し込んだ手紙を、ソンジュンが見咎めて尋ねる。
妙に胡麻化すのも変だと思い、ユニは正直に答えた。

「昼間、筆洞〈ピルドン〉で知らない妓生からいきなり押し付けられて……」

言い終わらぬうちに、ソンジュンが さっと手紙を引き抜いた。
淡い桜色の半紙。彼が広げると、華やかな瑞香がこちらまでふわりと漂ってきた。そこに記された文字を追うソンジュンの目が、みるみる険しくなっていく。ユニはすぐに、自分の判断を後悔した。
手紙を手にしたままぴくりとも動かなくなってしまったソンジュンに向かい、恐る恐る声を掛けてみる。

「あの……それ、ね」
「これは恋文だ」

ひぇっと思わず声を上げそうになるほど冷たい声で、ソンジュンが言った。

「そ、そうなの?ただの詩じゃ……」
「わからないのか?きみの頭は単なる飾りか?もう一度これをよく読んでみろ」

差し出された手紙を受け取る。流麗な文字はあのチョソンに優るとも劣らない。もう何度も繰り返し読んだその漢詩に、ユニは目を凝らした。


相思相見只憑夢
儂訪歡時歡訪儂
願使遙遙他夜夢
一時同作路中逢

夢でしか逢うことのできないあなた
私があなたを訪ねたとき
あなたは私を捜していたのでしょう?
どうか
遥か長い次の夜の夢の中では
行き違わず同じ道で
あなたに逢えますように


「素敵な詩だわ」

つい、そう漏らしてしまった。自分が貰った恋文というよりも、詩の素晴らしさに対する素直な感想だった。
はっとして口元を抑えたが、遅かった。
気付くと、ソンジュンがいきなり後頭部を殴られたような顔をしてまじまじとユニを見ていた。

「誰だ」
「え?」
「きみと、夢の中で逢引きを重ねているその妓生は、どこの誰だと訊いてる」
「訊いてどうするの?」
「どうしようが僕の勝手だ。まさかきみは、その妓生を庇い立てするつもりか?」

ユニは憤慨した。言われてみれば確かに恋文かもしれないが、相手は同じ女人だ。どうしてこんな手紙を貰ったくらいで、怒られなきゃならない?

「そんな、どこの誰かもわからないのに、どうして私が庇うの?だいたい、私が女を好きになるとでも?」
「僕は!」

鋭い語気に圧されて、ユニは思わず口をつぐんだ。
一呼吸置いて、彼は言った。

「僕は、きみを男だと思っていた。それでも、気持ちを抑えられなかった」

両の手を、膝の上で固く握り締めるソンジュンは、まるで己の罪を懺悔するかのようだ。
ユニの胸が、ちりちりと焼けつくような音をたてる。
ずるい、と思った。
自分の嘘で彼を苦しめてしまったあの頃のことを思うと、何も言えなくなってしまう。

「この詩はね」

と、ユニは静かに口を開いた。

「“相思夢”というの。もともとは黄真伊〈ファン・ジニ〉が、亡き師匠を悼んで詠んだ詩よ。でも、読みようによっては、恋文ともとれる。そういう危うさというか、艶っぽさが、素敵だって言ったの。それに見て、この二句目。回文になってるでしょう。この感覚がすごいと思わない?それとここも───」

言いながらふと、200年以上も前の伝説の妓生と、チョソンの面影が重なった。
つまらないやきもちだと、ソンジュンを笑うことはできない。今思うと、ユニの中には確かに彼女に惹かれていた部分があった。彼女を想うとき、ほんの少しだけ、ソンジュンに対して後ろめたい気持ちがするのは、きっとそのせいだ。

彼女はいま、どうしているのだろう。
どこかで、幸せに暮らしているといい。
彼女の鳶色の瞳は美しかったけれど、何故だかいつも、悲しげだったから。

ソンジュンは呆れたように息を吐き出して、言った。

「もしかしてきみにとっては、恋文も文献も同じなのか?きみにそれを渡した妓生が気の毒になってきた」

酷い言い草だ。人を、まるで情緒の欠片もない無粋な人間みたいに。
ユニはつんと顎を反らせて、ソンジュンを睨んだ。

「私にとって恋文と呼べるのは、イ・ソンジュンって人がくれたものだけなの。何か文句ある?」

ソンジュンは以前、尊経閣の本の中にユニへの幾葉もの手紙を忍ばせていたことがあった。
彼もそのことを思い出したのだろう。ちょっと赤くなって、あらぬ方向に視線を投げた。
そして小さく

「……ない」

と言った。
よし、と頷いて、ユニは微笑んだ。彼女を横目でちらと見て、ソンジュンも笑う。
彼は立ち上がると、座っているユニの目の前に、すっと手を差し伸べた。

「おいで」

そんな何気ない仕草が嬉しくて、ユニは彼の手を取った。

「どこへ行くの?」
「眠れないんだったら、少し散歩しよう。沈丁花なら、その手紙よりも外の方がよく薫ってる」

ソンジュンの言葉の中に、手紙の主への対抗心が垣間見え、ユニは可笑しくなった。

清斎の外に出ると、ソンジュンの言うとおり、心浮き立つような薫風が彼女を取り巻いた。
紙に焚きしめたものとは比べるべくもない。ユニはその香りを、胸いっぱいに吸い込んだ。

繋いだ彼の手が、暖かい。
散歩から戻ったら、今夜はよく眠れるだろう。
このぬくもりと、沈丁花の香りに包まれて。


そして夢の中で。

きっとまたあなたに、逢いに行く。






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2012/12/24 Mon. 05:53 [edit]

category: 相思夢

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: あらちゃんさま

> 吉原からの朝帰り、悋気病みの女房が胸ぐらつかんで「エェくやしいーなんという女郎だえ?」と名前を聞き出すシーンを彷彿とさせて、爆笑しました。

わはは~悋気病みの女房(笑)ドラマでもラストまで嫉妬深さ全開でしたもんね~。
いやいや、でもソンジュンにはウザいくらい嫉妬して欲しいです。
そっち方面に関しては天然なユニにもんもんしてるソンジュンって図に激しく萌え(爆)


あまる #- | URL
2013/02/12 07:20 | edit

やはり書かずにはいられない

そんなお笑いをあまる様が狙ったとは思えないのですが・・・
吉原からの朝帰り、悋気病みの女房が胸ぐらつかんで「エェくやしいーなんという女郎だえ?」と名前を聞き出すシーンを彷彿とさせて、爆笑しました。
あまる様の意図に反していたらごめんなさい~
ほんとソンジュンは愛すべきキャラです O(≧▽≦)O
ユニは割とすかたんなとこあるから、これからもソンジュンを転がし続けるだろうと期待しています。

あらちゃん #- | URL
2013/02/11 11:58 | edit

Re: タイトルなし

セカチュー(小説の方ね)の中で、主人公がヒロインのブラジャーにも嫉妬する、みたいなセリフがあって、くそう、カワエエなぁとか思ったことがあったんですが(笑)ちょっとそれ思い出しました。

こちらこそ今年はお世話になりました(^^)
イロイロと萌え話ができて楽しかったですわー。来年もどうぞよろしくです。

デルタ航空、グッジョブ!
彼らにとっても、来年はちょっとでも前進できる年になって欲しいス。
俳優パク・ユチョンもステキだけど、シンガーでダンサーなユチョンはほんとにほんとに、
見るたびに惚れるくらいステキなんだものーo(>_<)o

あまる #- | URL
2012/12/31 11:09 | edit

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# | 
2012/12/31 10:33 | edit

Re:↓ ***さま

お仕事お疲れさまでした~(^^)
あまるもようやく終わりました。連日の忘年会で脳みそ奈良漬け状態だったにもかかわらず、冷蔵庫に正月用の酒をしこたま仕入れている自分に喝(爆)

こちらこそ皆様の拍手やコメントに励まされて過ごした一年でしたよ。
来年もよろしければまた相手してやってください。
大掃除……お休みとはいえなかなかゆっくりできませんね~(^^ゞ
どうかお身体ご自愛くださいまし。

あまる #- | URL
2012/12/30 06:05 | edit

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# | 
2012/12/29 18:09 | edit

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