スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

--/--/-- --. --:-- [edit]

category: スポンサー広告

cm --  tb --  

第十二話 11 偽者 

bandicam 2012-12-20 09-28-16-716

**************************************************


その晩は激しい雨が降った。
礼曹の奥殿では、守衛の官軍兵が降りしきる雨にも微動だにせず、三叉槍を掲げ持っている。
闇の中を、雷鳴が轟いた。突然、一本の矢が雨の帳を貫いて、兵の胸に突き刺さった。
兵が声も上げずにどさりと倒れるのと同時に、どこからともなく現れた黒い影が、前庭に降り立った。
その素早さは、まさしく風のようだった。影は、一斉に襲いかかってきた官軍兵たちを、手にした環刀で一瞬の躊躇もなく切り裂いた。ほんの瞬きする間に、数人の官軍兵たちが次々と血しぶきを上げ、ぬかるんだ土の上にどうと倒れこんだ。
影は、奥殿の鍵を難なく開け、滑るように中へと入って行った。やがて、背中に荷を括りつけて出てきた影は、奥殿の正面の柱に無造作に矢を突き立てると、再び闇の中へと消えて行った。

鏃の食い込んだ柱には、真紅の壁書が残されていた。


*   *   *


「”民の苦労の結晶故、民に返すが妥当”………」

王は、眉間に深い皺を寄せ、壁書の文面にじっと目を凝らした。やがて、掛けていた眼鏡を外すと、深く嘆息した。

「紅壁書が盗みを働き、人を殺めたというのはまことか?」
「はい。これまで、一度として無かったことですが」

卓の前に立つヤギョンが、低頭して答える。隣に控える領議政、チェ・ジェゴンは、抑えた口調ながらも、憤りを隠せぬ様子で、言った。

「陛下、紅壁書は間違いなく、民の英雄になるつもりです。禁乱廛権の一件で民の支持を得たのに増長し、恐れ多くも……」

後を引き継いで、王が言った。

「義賊となり、民心を今以上に掴む気か」

しかし、とヤギョンが懸念を口にする。

「紅壁書の壁書は必ず、金縢之詞に言及していました。今回は、一言も触れていないのが気にかかります」
「以前とは違うと?」

王は額に手をやり、しばしの間考え込んだ。
これまでの紅壁書は、老論の不正や独裁を糾弾し、民心離れを図るという点では王と方向が一致していた。そのやり方はともかくとして、彼は決して人を傷つけたり、賊に成り下がるようなことはなかったから、王の側でも民心を味方につけるために、言わば広報として図らずも彼の活動を利用しているようなところもあったのだ。
実際、禁乱廛権の一件にしても紅壁書の見事に機を捉えたあの壁書がなければ、老論の重鎮たちがああもあっさりと引き下がることはなかっただろう。

だが、人を殺めたとなると、今までのように密かに擁護することもできなくなる。
領議政の言うように、辛亥通共の発布が彼を増長させ、暴走させているのか……?

王は玉座から立ち上がると、苦渋に満ちた表情で告げた。

「ともかく、殺生は許されざる大罪だ。直ちに紅壁書を捕らえよ」


*   *   *


「我々兵曹は、これ以上紅壁書を追うつもりはありません」

牡丹閣の一室で、兵曹判書ハ・ウギュはその三白眼に含み笑いを滲ませて、言った。

「偽の紅壁書が都をかき乱せば、いずれ本人が現れるはず。その時を狙って今度こそ奴を捕らえます」

卓を挟んで座るイ・ジョンムは不機嫌に眉を寄せている。紅壁書一人を捕えるために、己の身内とも言える官軍兵たちを平気で犠牲にするウギュのやり方が気に入らないのだ。
と言って、それを指摘したところで、当の兵判は”彼らは己の命を投げ打って、立派に職務を全うした”とうそぶくだけだろう。そして、偽者が犯した罪を紅壁書に着せ、全てを闇に葬る───。
上役である自分に何の相談もせず事後報告なのも、彼のぬかりの無さの現れだ。事が既に動き出してからでは、誰が何を言おうが、先に進むしか道はない。
十年前の苦い事件が脳裏をよぎり、ジョンムはますます渋面の色を濃くして、言った。

「慎重に頼みますよ。無謀な策は災いを呼ぶ」
「心配などご無用ですよ。石橋を渡る前に、叩きすぎて壊してしまっては元も子も無い。どうか私を信じて…」

ウギュが言い終わらぬうちに、ジョンムはぴしゃりと言った。

「信頼関係は、言葉で築くものではありません。親戚になるからと私が何でも容認すると思っているのなら、この縁談は白紙に戻します」

ジョンムが席を立つと、ウギュはたちまち蒼白になった。障子戸を勢い良く開けて出て行く背中を、慌てて追いかける。

「お待ちください、大監!破談だけは、どうか」

無言で回廊を歩く左議政の様子に、妓生たちが皆驚いて道を空け、面を伏せる。
その間を、追いすがる兵曹判書の哀れっぽい声が響いた。

「娘の将来を壊したくないのです。此度の非礼は幾重にもお詫びします、ですから」

ジョンムは立ち止まり、振り返った。

「言ったはずですよ。信頼は、言葉では築けぬと。縁談の件は、紅壁書を捕らえてから改めて検討しましょう」


*   *   *


その日の朝。中二房で、広げた朝報を食い入るように見つめていたジェシンは、ふっと頬を歪めて、呟いた。

「紅壁書、官軍を殺傷。金品を強奪……?」

馬鹿な奴もいたものだ。紅壁書の名を語って盗みばかりか殺生まで働くとは。一体何が目的だ?

腹の底から猛烈な怒りが湧いたが、自分が正体を隠して活動している以上、紅壁書の潔白を証明する手立てはない。
このまま、偽の紅壁書が官庁を襲い続けるようなことになったら───。

冷たい手で、背中をすうっと撫でられたような気がした。だがジェシンにそれ以上考えることを許さない者が、いきなり扉を開けて現れた。

「やあコロ、ここにいたか」

ヨンハの登場に、ジェシンはさっと朝報を折り畳んで懐に入れたが、目ざとい彼が見逃すはずはなかった。

「近頃のお前は、隠し事が多いな。それは恋文かな?」

と、ジェシンの肩に顎を乗せ、懐からはみ出た半紙を素早く抜き取る。それが朝報だと知るや、記事を読まずともヨンハは内容を悟ったようだった。
ちらりとジェシンに視線を投げてから、彼は指で朝報の文面を弾いた。

「それにしても妙だよな。紅壁書が人を殺すはずはないってのに」

それだけ言って、どうでもいいとばかり、ぽいとそれを放った。

「辛気臭い朝報なんか読んでる場合じゃないぞ。今日は何の日だ?入清斎じゃないか。入清斎!」

目をきらきらと輝かせて、ヨンハは言った。今日ばかりは確かに、彼にとってそれ以外はどうでもいいことのようだった。






**************************************************
あまるですどうもこんにちわ。
この回は ほぼおっさんしか出てこない話になっちゃいました。
せめて画像だけはとコロリムにしましたが。地味すぎる……。
王様とかソンジュン父書くの、実は個人的には好きだったりするんですけどね(笑)

とはいえ、年末をこの渋さで締めくくるのもどうかと思うので(^^ゞ
どーにか年内で12話は終わらせたいなぁ。できるかなぁ。
入清斎ではあほな子ソンジュンのせいで、ユニが可哀相なことになってるんで、なかなか指が進まないんだけども。←ソンジュンが可哀相なときは逆に張り切るらしいですこの人(爆)
代わりにコロ先輩に頑張ってもらおう……




↓楽しんでいただけたらポチっとお願いします
にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
スポンサーサイト
web拍手 by FC2

2012/12/20 Thu. 09:30 [edit]

category: 第十二話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 0  tb 0 

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://amaru0112.blog.fc2.com/tb.php/152-65c7b785
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

2017-10
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。