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第一話 12 左議政の息子 

「捜し出せなかった?」

植込みのそこかしこから、微かな虫の音が聞こえてくる夜更けの庭先。
ソンジュンの表情に、あからさまな落胆の色が浮かぶ。報告するスンドルはいたたまれない様子で、もじもじと手を遊ばせている。

「勉強以外にも頭を使ってくださいよ、坊ちゃん。後ろ暗いことをしたヤツが、のこのこ現れると思いますか?待ってれば嫌でも会っちまうのが仇ってもんです。もうじき覆試でしょ?巨擘に来たそいつをパッ!と…」
「その前に捜し出すんだ、必ず」

スンドルは困惑して、ソンジュンを見つめた。いったい何をどうしたいんですか、坊ちゃん。

「明日からは僕が捜す」
「え?」

手にしていた快子に目を落とし、ソンジュンは独り言のように呟いた。

「こんなことをされて、忘れられるなら……それは君子とは言えない」

あの騒ぎの中、快子を着た本人に全く気づかれることなく、この詩文を書き上げたのだ。
どれだけの訓練を積めば、そんな速筆が身につくのか。どれだけの本を読めばこんな、機知に富んだ、痛烈な詩文が書けるのか。
思わずにはいられないのだ。彼のことを、もっと知りたいと。

「……ここにいたか」

低く響く声に、ソンジュンは握りしめていた快子を咄嗟に背中に隠し、振り向いた。

「お戻りでしたか、父上」

時の左議政、そして宮廷の最大派閥である老論の長、イ・ジョンムが、おそらくは帰宅したその足で、息子を探していたのだろう。官服姿のまま、そこに立っていた。


* * *


「───試験場での話は聞いた」

ゆっくりと酒杯を傾けながら、父はそう切り出した。
塵一つ落ちていない、父の部屋。微かに漂う香と、落ち着いた調度品の設えは、そこに住まう主の品格を物語り、居心地の良い空間を作り出している。

だがここに来るとソンジュンはいつも、少しばかり緊張するのだ。
幼い頃から聞き分けの良かった彼には、親に鞭打たれるほど叱られたという記憶がない。自分が何かへまをすれば、世話係のスンドルがこっぴどく叱られる。そういう環境は彼に、年齢には不釣合いなほどの分別と責任感を植え付け、同時に、父親という絶対の存在に対する畏怖を育てた。

父が、一人息子であるソンジュンに声を荒げることはほとんどない。
だがこの父の静かな叱責ほど、恐ろしいものはないとソンジュンは思う。
父の部屋にある、趣味の良い調度品や絵画、植木の類までもが、ちっぽけな自分を冷たく見下ろし、非難しているような気がするのだ。

「学士としての務めを果たしたと、満足しているのか?」

ソンジュンが黙っていると、父は愚か者め、と白い髭を歪ませた。

「これでお前は、世間の耳目を集めてしまった。皆が、お前の失敗を期待し、お前が何か失態を犯せば、それだけを殊更にあげつらい、騒ぎ立てるだろう。それが宮廷だ」

今更驚きはしない。そんなことは、わざわざ出仕などしなくても経験済みだ。左議政の息子というだけで、世間の妬みを買うには充分だということを、おそらく父は知らない。これまでどれだけ彼が、失態をやらかさないよう、人に弱みを見せぬよう、努力してきたのかも。

「覚えておきなさい。この世で最も愚かなのは、己の知恵をひけらかす者だ。学士の道が知恵を磨く道なら、宮仕えはその知恵を隠すことから始まるのだ」
「隠したくはありません」

ソンジュンは父を真っ直ぐに見据え、きっぱりと言った。

「出仕は、己の志を果たすためのもの。知恵を隠し、信念を捨てるのが出仕だとおっしゃるなら、志を持たず、我が身の出世のみに心血を注ぐ官僚とどこが違うのですか」

息子の珍しい反論に、父は面白そうににやりと笑った。

「権力を手にし、名誉も守るか…それもよかろう」

なおも言いかけたソンジュンを制し、父は瞬時に笑いを収め、言った。

「だがお前は、真城李氏一族の嫡男なのだ。己の言動には、常に注意を払わねばならん。…よいな」

ソンジュンは居住いを正し、静かに頭を下げた。

「肝に命じます」







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2011/07/31 Sun. 03:18 [edit]

category: 第一話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: ちびたさま

> こんなことをされて、忘れられるなら……それは男とは言えない

わはは(笑)確かに~。
坊ちゃん、それは恋ですよ恋!

あまる #- | URL
2012/05/03 00:23 | edit

あまるさま

こんなことをされて、忘れられるなら……それは君子とは言えない

イ・ソンジュン君子、ちがうって
正しくは
こんなことをされて、忘れられるなら……それは男とは言えない
だってば。

スンドルによく教えて貰ってね。

ちびた #D4zl0nFc | URL
2012/05/02 20:13 | edit

ありがとうです(^^)

> ちょぼさま

いらっしゃいませ(^^)コメントありがとうございますっ!
いやぁネットってスバラシイですね。リアルなワタシの周りにはソンスに嵌ってる人、なかなかいなくて。ひゅるる~(T_T)

ソンス好きの方々とこうしてお話できてホント嬉しいです。
ここんとこ仕事が忙しくて毎日の更新、ってわけにはいかないですが、頑張って書きますので、また遊びにいらしてくださいね~。

あまる #- | URL
2011/08/01 17:05 | edit

No title

いつも楽しく読ませてもらっています♪
ドラマにはまり、原作にもはまり…。
そして、ネットで二次小説を探している時にたどり着きました!

また見に来ますね~★
がんばってくださいね♪

ちょぼ #- | URL
2011/08/01 12:34 | edit

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