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第十二話 6 境界 

bandicam 2012-11-24 02-06-51-202

**********************************************


「ソンジュン様!」

振り返り、その姿を認める間もなく、誰かがソンジュンの首元にひしと齧りついた。

「よかった。やっと安心しました。ご無事で……何も起きなくて本当によかった」

涙まじりのヒョウンの声を、ソンジュンはぼんやりと聞いていた。目を上げた先の岸辺には、小さな舟が見える。
少し離れたところで、ヨンハがこちらに向かって軽く手を挙げた。

「お怪我はありませんか?ご気分は?」

ヒョウンの両手が、ソンジュンの頬に触れる。うつろな目で彼女を見つめながら、ソンジュンは、胸の内が急速に冷えていくのを感じていた。
芙蓉花はおそらく、美人の部類に入る容姿といえるだろう。触れる手も、細く柔らかく、これ以上ないほど女性らしい。そんな彼女が、これだけ近くにいるというのに、何も感じないのだ。さっきまであれほどうるさく騒いでいたソンジュンの心臓は沈黙し、ただその冷え冷えとした感触を彼の胸に重く残すだけである。

おいカラン、とヨンハが彼を呼んだ。

「感動の再会を邪魔して悪いが、大丈夫か?随分顔色が悪いぞ」

ソンジュンは答えず、目を伏せた。酷い顔をしているのはわかっていた。
この朝靄が、きっと自分のすべてをおかしくしているのだ。そうとでも思わなければ、気が狂いそうだった。
ソンジュンの強固な意志をもってしても抑制の利かない心と身体に、彼は疲れきってしまっていた。

「……ひょっとして昨夜、何かあったのか?テムルも真っ青だった」

ヨンハが口にしたその名に、ソンジュンは はっとして顔を上げた。と、いつからそこにいたのか、こちらに背を向けたユンシクが、天幕の方へと戻って行くのが見えた。
その足取りが心なしか、重い。ソンジュンは思わずヒョウンを押しのけ、ユンシクの方へと行きかけた。
だが数歩も歩かぬうちに、彼の足は止まった。僅かに残っていた理性が、彼を引き止めたのだ。

捨ててしまわなければ。
ユンシクの華奢な背中を見つめながら、ソンジュンは思った。
この島で起こったことは皆、朝靄が見せた幻想なのだ。
川を越えた先に垣間見てしまった、現実にはあってはならない、危険な夢。
もとの世界に戻れば、きっと忘れられる。
捨てて行くのだ。こんな邪な想いを、二度と彼に対して抱かないように。

「───戻りましょう。一刻も早く」

口にできたのは、それだけだった。


*   *   *


秋も深まってくると、成均館はそれまで以上に大忙しとなる。
まず、年に一度の大掃除が行われ、その後、外部の人間が唯一館内に入ることを許される入清斎〈イプチョンジェ〉、そしてその翌日には、儒生たちによる恒例の杖打〈チャンチギ〉大会が待っている。
入念な煤払いの傍ら、杖打会場の準備やら何やらで、書吏や斎直は皆朝早くから慌ただしく動き回っていた。

「久々に人の住まいらしくなりましたな」

綺麗に片付いた正録庁を見渡しながら、チョン博士が満足気に微笑んだ。
丁度、掃除の間追い出されていたユ博士が戻ってきたところだった。ユ博士は、ようやく終わったかという表情で自分の机につくと、頭を振った。

「私は杖打には反対です。学士が騒々しく走り回り球を打つとは、実に情けない。それに、入清斎もけしからん。孔子を祀る成均館に女を入れるなど、もってのほかです」

そこへ大司成が、書吏たちの仕事ぶりを点検しつつやってきて、「いえいえ、それはまだ我慢できるのですよ」と言った。

「ですが一つ、言わせていただきたい。───党派争いなんか、クソくらえだッ!」

途端に、ユ博士が眉を潜めた。

「令監、品位を保たねば。品位を」
「何故です?もっと品がなくてもいいくらいですよ。東斎と西斎に分かれ、激しく争ううちに学生たちが怪我でもしてごらんなさい。保護者たちから、ああだこうだと責められるのはこの私なんですよ!そもそも、父親が国事もほったらかしにして争い合う姿を見せるから、息子も真似をするんじゃありませんか。どうしてそれがわからないんですかね」
「……しかしそのお陰で、息子を勝たせたい親たちから賄賂を貰えるわけですよね?」

こっそりと耳打ちした書吏のジャンボクに、大司成が目を剥いた。

「わ、私がいつ?!……そうだっけ?」

チョン博士が苦笑すると、大司成はごほん、と咳払いをし、しかめつらしく尋ねた。

「さて、チョン博士、ユ博士。今回の杖打大会は、東西どちらが勝ちますかな?」



「───そりゃ、花の四人衆のいる東斎が勝つに決まってるだろ」

愚問だとでも言いたげに、ドヒョンが言った。
杖打の打棒を大儀そうに肩に担ぎ、ウタクが「なんで?」と訊き返す。
少し前まで、大射礼のための弓場だった丕闡堂前広場は、今やすっかり杖打の競技場へと姿を変えていた。周囲では、儒生たちの打ち鳴らす球音が、ひっきりなしに響いている。

「国王陛下自らが宮殿に呼び、褒美を与えた連中だぞ。“お前たちは余のものだ”ってお墨付きを貰ったんだ」

ドヒョンの言葉に、ヘウォンが頷いた。

「そういや、掌議は一度も呼ばれたことないな」
「お前、出世が保証されたあの四人に睨まれたいと思うか?」

ヘウォンがぶるぶると首を振る。

「つまりだ。この成均館で、彼ら四人に対抗する者は誰もいないと。なるほど、東斎の勝利は確実だな」

ははは、と乾いた笑い声を上げたウタクの顔が、急に引きつった。どうした?とその視線の先を追ったドヒョンが、小さく ひっ、と声を上げる。
そこには、世にも恐ろしげな形相の掌議、ハ・インスが、取り巻きを従えて立っていた。
しかもなお間の悪いことには、杖打での勝利を確信している東斎の連中が、浮かれた様子で丕闡堂にわらわらと入ってくるではないか。

「我ら東斎、つまり少論が史上初の勝利を手にできるってわけだ。まさにイ・ソンジュンさまさまだな」
「奴を追い出さなかったのは正解だったよ」
「いや、まったくそのとお……んぐっ!」

言いかけた儒生の口を、インスに気づいた一人が はっしと塞ぐ。インスは険しい顔つきのまま、すたすたとそこを通り過ぎた。
そしてまた別の場所では。

「花の四人衆のいる東斎が今回は勝つのか」
「老論が杖打で負けるなんてなぁ」

あちこちで四人の勝利を噂しあう儒生たちに、インスの苛立ちは最早頂点に達しつつあった。
すると、傍らから姿を現したビョンチュンが、儒生の一人に足蹴りを食らわせ、言った。

「このバカどもめ!掌議に心配をおかけしないように、“粉骨砕身して頑張ろう”くらい言えないのか!」

西斎の下級生たちをそこから追い払ってしまうと、ビョンチュンはインスの方を見、にっこりと笑った。
予めインスがそこにいることを知った上での、みえみえなへつらいである。
反吐が出るほど卑屈な奴だ、と、インスは鼻で笑った。
腰を低くしたまま、ビョンチュンがインスに歩み寄る。

「不届きな連中は片づけました、掌議」
「お前は少しも変わらないな」
「もちろんです。私の、掌議への忠誠は決して変わりません」

深々と頭を垂れるビョンチュンに冷たい一瞥を投げ、インスは言った。

「差し出がましく、飲み込みも悪い。相変わらず使えん奴だ」

途端に、ビョンチュンは丸めた紙屑のような顔になり、インスの足元に跪いた。

「わ、私は、厠のちり紙です!どんな汚いことも臭いことも、掌議のためらならやってみせます!」
「涙ぐましいことだ」

ふん、と笑って、インスはカン・ムとコボンを従え、立ち去った。
後には、地面に這いつくばったまま、主の仕打ちにじっと耐え続けるビョンチュンだけが残されていた。





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あまるですどうもこんにちわ。

ちょっと前から、各記事の拍手数ランキングを表示してくれるプラグインを導入してるんですが、見てるとなかなか面白いです。
自分的には、手抜きじゃねーかってくらい時間かけずに書いて、いまいちだったかなぁと思ってたのが、地道に数を伸ばしてランクインしてきてたり、逆に、むっちゃ頭捻って何回も書き直して、ドヤ顔でアップしたのがさっぱりだったり(笑)
リキ入れて書きゃいいってもんじゃないんだなぁと、イロイロ考えさせられます。
誰かに読んでもらわないとわかんないことって、いっぱいありますね。なんか今更ですが。

つっても、萌エ~なシーンはどーしたって力入っちゃうんですけどねーっ!(爆)





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2012/11/24 Sat. 02:09 [edit]

category: 第十二話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: ちびたさま

ソンジュンは原作もドラマも愛しいです(^^)
人生経験ではユニに負けてるかもだけど、根っこの部分というか、本当に純で真面目なとこが、ヒネたワタクシにはたまらんです。しかもルックスはゆちょだなんてえぇぇぇぇ~!!!!(爆)

そしてそんなソンジュンにめちゃめちゃ愛されてるユニはほんとーに羨ましいゾ。

ブログ始めてから、ワタクシも色々勉強させてもらってますよ、ええ。
我ながらえらいことに首突っ込んじゃったなぁーと日々思ってはいますが……(^^ゞ

あまる #- | URL
2012/12/04 03:52 | edit

んまーー、ようやっと血の通った人間になってきたのねー、イ・ソンジュン君子。

あまるさんのお話をおっかけ始めてから、ドラマの方も時々見直したりするんですが、どっちかというと原作を何度も読み返している日々。
なんていうか、あの原作の完璧ソンジュンを読んで、あまるさんちのイ・ソンジュンを読み返すと、なんというかどちらも愛しいんですよ。

知識は完璧なのに、人としてはユニっこに負けとるドラマのソンジュン。
この子供っぽさがなんとも言えず愛しい。
そして、何から何まで完璧なはずなのにやっぱりユニっこにはデレデレな原作のソンジュン。
この育ちの良さがこちらはなんとも愛しい。

はは、いかんなあ。おばちゃん目線は。

自分の仕事というのは、自分で評価するんじゃなくて他人さまが評価してるんだなーというのはつくづく思いますよねえ。
あまるさんのブログの感想おもろかったです。

ちびた #- | URL
2012/12/02 21:54 | edit

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