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第十二話 3 無人島の一夜 

bandicam 2012-11-16 02-00-43-828
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どのくらい時間が経ったのだろう。
木々の葉を激しく打ち叩いていた雨は、そのうち静かになり、やがて止んだ。
ユニは天幕の端から腕を伸ばし、手のひらを空に向けてみた。何も落ちてこないことを確かめると、彼女はほっとして笑顔になった。

「ほら、雨が上がったよ。朝になったら舟も来るだろうし、これでもう一安心だ」

ソンジュンを振り返ったが、返事はない。彼は花台に肘をついた姿勢で頭を支え、目を閉じていた。
そういえば少し前から、ユニが話しかけても返ってくるのは生返事ばかりだった。
心配になったユニは、ソンジュンの傍まで行くと、彼の腕を軽く揺すってみた。

「大丈夫?」

ぐらりと、ソンジュンの身体がくずおれるようにユニの肩にもたれかかってきた。びっくりしたユニは慌てて身体を離そうとしたが、目を閉じたままのソンジュンの息遣いが、普通でないのに気づいた。
網巾の上から、そっと額に手のひらをあててみる。彼の身体は、火を孕んだように熱かった。

どうしよう…。

とりあえずソンジュンを寝かせはしたものの、ユニは はたと困ってしまった。上掛けの一枚すら無いこんなところで、熱を出した彼に何をしてやればいいのか、皆目検討がつかない。
見ると、彼の手が微かに震えていた。ユニは思わずそこに自分の手を重ね、何度も擦り合わせた。
たいして役に立つとは思えなかったが無いよりはましだろうと、道袍を脱ぎ、ソンジュンに掛けてやった。だがやはり彼の唇の震えは止まらない。
とにかくまず彼の身体を暖めなければ。
いてもたってもいられず、彼女は天幕を飛び出した。

雨に洗われた島はそこらじゅう何もかもが湿っていて、薪に使えそうな枯れ枝を捜すのは一苦労だった。
それでもどうにか柴を掻き集めてきたユニは、行灯から蝋燭を取り出すと、天幕にできる限り近い地面に立て、その周りを薪で囲った。
水気を吸った木は、容易には燃えてくれなかった。煙ばかりがもうもうと立ち昇り、ユニは激しく咳き込んでしまった。口元を押さえてソンジュンの方を気にしたが、彼はぴくりとも反応しなかった。

ひどく時間はかかったものの、一旦炎が上がると後は早かった。集めた細い枝がみるみるうちに燃え尽きていくのに慌てて、ユニはまた薪を拾いに天幕を出た。
落ちている枝だけではとても足りず、鬱蒼と繁る森の中に分け入り、生木を幾つも折った。そうしているうちに、手の皮は擦り剥け、下衣はあちこち引っ掛けて破れたが、彼女は気にしなかった。
熱を出して気絶したように横たわるソンジュンを思うと、何かしないではいられなかったのだ。

火は、勢いを得てようやく焚火らしく燃え始めた。薪が散らないよう、周りを適当に石で囲む。人心地ついてソンジュンの様子を見たが、彼の身体はまだ寒さに強張っていた。
ユニは、ソンジュンの横にぴったり身を寄せると、覆い被さるようにして、彼を抱き締めた。
何も考えなかった。ただ、自分の体温で彼を少しでも寒さから守ってあげたかった。


*   *   *


漢江沿いの酒場には、一目で漁師とわかる、日に焼けた恰幅のいい男たちがたむろしていた。
仲間同士、のんびりと酒を酌み交わしている卓の真ん中に金子の束をがしゃんと放り、ジェシンは言った。

「舟を出してくれ」

漁師は目の前の金に一瞬目を丸くしたが、口に含んでいた酒をごくりと飲み下すと、呆れたように言った。

「馬鹿言わないでくださいよ。いくら大金を積まれても今夜は無理だ」
「雨は上がってるだろ」
「水かさが増してるから、しばらくは出せねぇよ。たとえ王命でも行けないね」

けんもほろろに断られ、ジェシンは舌打ちした。その後もあちこちあたってみたが、漁師たちの返事はどれも判で押したように同じだった。
そのまま帰る気にもなれず、乗れる舟など無いのに、結局渡し場まで戻ってきてしまった。対岸にユンシクがいるとわかっていながら、できることといえば目の前に横たわる大河を睨みつけるくらいしかない。

彼女は今頃何をしているのか。
雨に濡れてはいないか、ぬかるんだ森の中で怪我をしていないか、腹を空かせてはいないか。
心配なことはいくつもあったが、何よりジェシンを苦しめたのは、今彼女の傍にいるであろうソンジュンの存在だった。

長い夜を、あの老論の野郎と二人きりで。

それを思うだけで、どうしようもなく腹わたが煮え、焦りが募った。
渡し場の柵を苛立ち紛れに蹴飛ばしたジェシンに、いつからそこにいたのか、ヨンハが声を掛けた。

「大丈夫だよ。健全な男二人が一緒なんだ。───ああ、もしかして、だから余計に心配なのかな?コロ」

ジェシンは一瞬ヨンハを見、すぐに目を逸らした。
顔を見ると余計に腹が立つからだが、何もかもこいつのせいだと思うと、口を利く気にすらなれない。
黙っていると、ヨンハはジェシンの耳元に唇を寄せ、囁いた。

「十年来の友を欺くのはいただけないが、それでも私はお前の味方だから」

ジェシンの頬をひたひたと軽く叩いて、微笑む。
ヨンハは、何もかも見透かしてはいるが、知っているわけではない。ユンシクの秘密を知っているのは、恐らく自分だけだ。だからこそ、それを認める訳にはいかなかった。
命懸けで真実をひた隠しにするユンシクのために、ジェシンもまた、決意していた。命懸けで彼女の秘密を守ると。

「舟は用意しよう。イ・ソンジュンじゃなく、お前のためにね」

漂う霧の中、立ち去るヨンハの後ろ姿に、先刻の彼の言葉が思い出された。

『───そんなにテムルが気になる?まるで恋人でも心配してるみたいだぞ』

ジェシンは唇を噛んだ。ヨンハは何でもかんでもそっちの方に結びつけたがるが、あいつは、そんなんじゃない。
ただ、小さくて頼りないあいつが、必死で頑張っているのを見ると、放っておけないだけだ。

「ふざけたことばかり言いやがって……」

今だって、あいつが女だと老論の野郎にバレやしないか、それが心配なだけだ。
ジェシンは自分にそう言い聞かせた。
そして、頭にちらつくソンジュンの顔がなぜこんなにも腹立たしいのか、その理由までは、考えなかった。





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2012/11/16 Fri. 02:10 [edit]

category: 第十二話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: ちびたさま

不憫なコロたんを別のところで解消しようとすると、たま~に(ほんとにたま~にですが)ソンジュンが辛い目にあってたりして、それはそれでちと辛いという……ワガママ

>にしても、ソンスの皆様の文章力というか、構成力というか、下手な小説よりもすごいっす。

ですね~。読み応えのある書き手さんばかりだなーと思いますね。それぞれ個性豊かだし。
自分の腐れたブツを出しといていーもんかと時々思いますわ。恥知らずなので出してますが(笑)

あまる #- | URL
2012/12/04 04:13 | edit

あはは、私も読み逃げー(すたたたた! (-_-)/~~~ピシー!ピシー!)
あまるさん、あほな子って(爆!) まあ、、、、わたしも、、、たしょーーーわああ・・・・そうー・・おもって・・・(もごもご)

コロさんはねえ、私も好きですが、ほんと辛いです。
なので、ここは別のところで辛さを解消!(あ・・・ご、ごめんなさい)

にしても、ソンスの皆様の文章力というか、構成力というか、下手な小説よりもすごいっす。
何より皆様、それぞれのご贔屓様への愛が素晴らしいっす。
ええ、愛されているわよね。ソンス

ちびた #- | URL
2012/12/02 23:53 | edit

Re: ちゃむさま

ご無沙汰です~。
ストーカーのように追い回したりしませんから、まぁ逃げずとも(笑)

ソンジュン……もともとむっちゃ頭いいハズなのに、ユニが絡むとアホな子になるのがたまりません。
でもってコロ。
彼がユニへのキモチを自覚したのってどのあたりなんだろうとか思いながら書いてました今回。
こっから先はコロに憑依するのは辛いものがあるワ(T_T)

あまる #- | URL
2012/11/17 00:39 | edit

ご無沙汰してます(>_<)

お久しぶりです。でも実は読み逃げしてましたm(_ _)m
ついに一夜を二人で明かしてしまいましたね~あ~もうソンジュン、完全に計画が裏目に…そして見ている私達はますます面白くなって…サイコーです。コロの心情表現があまるさん、うますぎです。続きを楽しみにしてます。

ちゃむ #- | URL
2012/11/16 13:00 | edit

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