スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

--/--/-- --. --:-- [edit]

category: スポンサー広告

cm --  tb --  

第十二話 1 川霧 

bandicam 2012-11-09 01-21-06-142
****************************************************


舟から降りると、その場所はすぐにわかった。
鬱蒼と繁る緑の中、薄布を幾重にも垂らした天幕が、まるでそこだけ虹が降りたかのような淡い色彩を放っている。
中を覗くと、これなら地面の固さや冷たさを気にせずに済むだろうというくらいの、綿入りの分厚い敷物が敷き詰められており、そこに更に柔らかそうな円座や座布団が所狭しと置かれていた。
卓の上には、茶器の一揃いと、皿から溢れんばかりの果物や菓子が用意され、香り高い花々が彩りを添えている。
それはまるで、荒れ果てた小島に、天帝が住まうという雲上の楼閣が突如として出現したかのような光景だった。

「すごい。いつの間に準備したの?」

ユンシクが、目を丸くしてソンジュンに尋ねる。
ヨンハが確かに、豪勢になるぞとは言っていたが、まさかここまでとは。
ソンジュンはただ当惑して、答えた。

「僕が準備したわけじゃない」
「じゃあ誰が?あ、ひょっとしてヨリム先輩?」
「いや、たぶん……」

ソンジュンが事の次第と芙蓉花の名を口にした途端、ユンシクはその表情をさっと強張らせた。

「……つまり、女に会うために、こんな遠くまでぼくを連れて来たわけ?」

自嘲するように はっと息を吐いて、小さく呟く。

「馬鹿みたいだ。そうとも知らずに、のこのこついてきたなんて……」
「何故、怒るんだ」
「勝手なことするな。ぼくが、女を紹介してくれなんていつ頼んだ?」

ソンジュンは内心、酷く慌てた。彼のこんな顔を見たくて誘ったわけじゃないのに、どうしてこうなる?
どうして僕は、あんな風に───コロ先輩みたいに、彼を笑わせることができない?

くるりと踵を返して、ユンシクは来た道を戻り始めた。ソンジュンはその背中を追いかける。川べりまで降りてきたところで、小さな肩を捕まえ、振り向かせた。
きつい眼差しで自分を睨み返すユンシクに、ソンジュンは一瞬、たじろいだ。と同時に、思わず彼の肩に触れてしまったことに気付き、躊躇いがちに手を離した。

「僕は……だからつまり、僕は、君が喜ぶかと思ったんだ」

つっかえながらそう言うと、ユンシクが怪訝な顔で「なに?」と訊き返した。だが情けないことに、ソンジュンは彼の視線をまともに受けることすらできなかった。

「男なら、女は拒めないものだと、ヨリム先輩が言ってた。だから」

いきなり、息が詰まるような感じを覚え、ソンジュンは無理矢理それを飲み下した。そして消え入るような声で言った。

「君も───男だろう」

自分が口にしたにも拘わらず、その言葉はソンジュンの胸をきりきりと締め上げた。
そうだ。キム・ユンシクは男。それは覆ることのない、純然たる事実だ。だがその事実が、どうしてこんなにも苦しいのか。

「だったら、そんなに女に会いたかったんなら、一人で楽しめばいい」

吐き捨てるように言うと、ユンシクは身を翻した。冷たい川の水に躊躇することもなく、ざぶざぶと入っていく。
既に帆を上げ、岸から離れて行きつつある小舟に向かい、彼は声を張り上げた。

「待ってくれ!舟を止めて!」

ソンジュンが川の水を跳ね上げ、ユンシクの後を追う。霧の向こう、なおも深みへ行こうとする彼の腕を掴んで、引き止めた。

「何の真似だ!」
「放せよ!」

ユンシクが、ソンジュンの腕を振り払おうともがく。その拍子に、川底の石に足を取られ、ユンシクの上体が大きく傾いだ。ソンジュンは咄嗟に、彼の腰を引き寄せて抱きかかえた。

「放せったら!」

叫んだユンシクが、ソンジュンを突き飛ばす。
ぐらりと、周囲が揺れた。足元が不安定な上に、思わぬ力で拒絶され、ソンジュンの身体は水飛沫を上げて水中に倒れ込んだ。


一方、麻浦の渡し場。

ゆらりと立ち上がったヨンハが、仁王立ちになっているジェシンに向かい、頬を歪めてぼやいた。

「酷いなぁ。殴るほどのことかよ。まったく」

口元に滲んだ血を親指で拭いながら、薄く笑う。

「……可笑しいか」

低く張り詰めた声で、ジェシンが言った。
握り締めた拳が震える。
激しすぎる怒りは、喉を塞いで逆に怒鳴ることができなくなることを彼は知った。

「お前はいつだってそうだ。何もかもが、お前にとっちゃ単なるおふざけなんだろ?自分が楽しけりゃ、他人のことはどうだっていいのか」

濃さを増した川霧が風に乗り、渡し場の上まで漂ってきていた。
長く一緒にいるが、ジェシンは今ほど、この男を理解できないと思ったことはなかった。
紗のかかった視界の中にいるヨンハの顔を、燃えさかるような眼で睨み据えながら、ジェシンは言った。

「あいつに何かあったら、俺はお前を絶対に許さない。───覚悟しとけ」

大股で立ち去ろうとしたジェシンの背に、ヨンハが「おい、コロ」と声を掛ける。

「今のでよぉくわかったよ」

振り返ったジェシンを、ヨンハが眉を上げてすくい上げるように見た。

「そんなにテムルが気になる?今のお前はまるで、恋人を心配してるみたいだぞ」

ジェシンが再び、ヨンハの襟首に掴みかかった。

「てめぇ……まだ殴られたいか!」

拳を振り上げたそのとき、わっ、と声を上げて、ヒョウンがその場にうずくまった。

「どうしよう。私のせいで、ソンジュン様に何かあったら……私どうしよう、どうしたらいいの」

ヒョウンは涙をぽろぽろと零し、時折しゃくりあげながら子供のように泣きじゃくっている。
毒気を抜かれたジェシンは拳を下ろし、ヨンハを開放すると そっぽを向いた。
ヨンハはくすりと笑ったが、切れた唇が痛んだのか、またすぐに頬を歪めた。

ぽつりと、ジェシンの肩を雨粒が濡らした。雨脚は瞬く間に勢いを増し、漢江の川面を激しく叩き始めた。






↓楽しんでいただけたらポチっとお願いします
にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
スポンサーサイト
web拍手 by FC2

2012/11/09 Fri. 01:42 [edit]

category: 第十二話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 3  tb 0 

コメント

みずたまさーん!的確なコメントありがとー!(爆!)
もうね、みずたまさんのコメントのファンなんですわ。私(ばか??)

こののたうちまるイ・ソンジュンに黒い尻尾を生やしたファンが群がり、くっくっくと忍び笑いをしている図を思い浮かべると(え?そんなのは私だけ??)
たまらん!!

ちびた #- | URL
2012/12/02 22:28 | edit

Re: みずたまさま

ホントご無沙汰~(笑)

いやいや、お忙しい中コメありがとう~
ソンジュンののたうち回る様が愛しい12話にいよいよ突入よ~(^^)

とはいえこのあたり、あまる的に一番感情移入したのはなぜかヨリムだったりするのでした。
コロに怒られてちょっと反省ザルな気分(笑)

あまる #- | URL
2012/11/12 03:21 | edit

久々の登場←ワタシ✿

ご無沙汰でござる~✿

ヒョウン=プョンファ の大胆アタック(注;ヨリム含)
イマドキのgirlでも使わん手を屈指して がんばった(注!ヨリム含)
パンチDeデート?(古っ)の舞台を けちょんけちょんにされ~>(笑)
ウロウロのコロ、にんまりのヨリム・・・・。
なんて楽し~場面ぢゃろうか!(^^)!
ホントにいい作品だよ~☆
ソンジュンlove♡♡♡の我らにはどきんどきん度 1000%↑よ~(^^♪

あまるさん いつも読み逃げして ごめんね(@_@)
いつも 丁寧なお話ありがとうございます~✿✿✿

みずたま #- | URL
2012/11/11 21:18 | edit

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://amaru0112.blog.fc2.com/tb.php/142-8b1f8e6a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

2017-10
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。