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第十一話 12 暗雲 

bandicam 2012-11-06 00-24-43-956
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ソンジュンがユニを連れてきたのは、漢陽の都の南、麻浦の渡し場だった。
夕刻になって少し冷えてきたせいか、豊かな水を湛える漢江には、うっすらと川霧がたちこめている。
目の前に広がる、山水画そのままの幻想的な風景に、ユニは目を輝かせた。

「舟で行くの?」

乗ろう、と短く言って、ソンジュンは渡し場に待たせていた小さな舟に先に乗りこんだ。
ユニも後に続こうとしたが、舟べりに足を掛けた途端、重心を失ってよろけてしまった。振り返ったソンジュンが、さっと手を差し出す。ところが、ユニがつかまる前に、彼は何故かその手を引っ込めてしまった。
そういえば、とユニは思い出した。
前にも同じことがあったような気がする。商人の屋敷から逃げようと、塀を越えたあのときだ。
それまでは普通に手を貸してくれていたのに、一体どういうわけだろうと思わないではなかったが、本来、男同士はそういうものかもしれない。
ユニは気を取り直して、どうにか舟に乗った。

「間に合って良かった。じきに天気が崩れそうです」

舟を器用に操りながら、船頭が空を見上げて言った。
そっぽを向いて、どこか居心地の悪そうな咳払いをしたソンジュンに、ユニは笑いかけた。

「舟で出掛けるなんて、生まれて初めてだよ」

ソンジュンはユニを見たが、黙ってまた川面に視線を投げた。
なんとなくぎこちない空気が二人の間に漂ったが、これといった理由も思い当たらないので、深くは考えなかった。
船頭が舟を漕ぐたびに、ギイギイとたてる軋むような音を聞きながら、ユニは、初めて見る水上の光景にしばし心を奪われていた。


*   *   *


「おい、テムルがどこ行ったか知ってるか」

わざわざ他人の部屋を訪れて訊くことがこれだ。誰も寄せつけない一匹狼が、変われば変わるもんだとヨンハは密かに笑った。

端から見れば、コロもカランに負けず劣らず、テムルにべったりだということを、当の本人は自覚しているのだろうか。どうやら彼らは、中二房でテムルと寝起きを共にしているだけじゃ、まだ足りないらしい。

「テムルなら、今頃漢江の上だよ。カランと一緒に」
「え?」

ほら、顔色が変わった。

ヨンハは、ジェシンのこんな無防備な反応を見るのが楽しくてたまらない。
こういうのをきっと、歪んだ愛情、と人は言うんだろう。

「二人で舟遊びでもして楽しんで来いって、行かせたんだ。誰もいない無人島にね」
「なっ……何だって?!」

小指に嵌めた指輪を弄びながら、ヨンハは殊更のんびりと言った。

「せっかく陛下が褒美にくださった休暇だ。今回の立役者はカランとテムルだと思ってさ」

テムルがカランと二人きりで一晩を過ごす。他人の目も、孔孟の教えも届かない場所で。
それがどういうことか、お前ならわかるはずだ。

ヨンハの胸の内の囁きが聞こえたかのように、ジェシンは青ざめた顔で身を翻すと、脱兎の如く部屋を飛び出していった。

「十年来の友に嘘をつくからだぞ、コロ」

一人そう呟いて、ヨンハはほくそ笑んだ。


*   *   *


「今日は舟を出すのはもう無理です。あの空をごらんなさいよ」

船頭が、漢江に低く垂れ込める黒雲を指差して言った。このわからず屋が、とジェシンが尚も食い下がろうとすると、背後から切羽詰まった女の声が飛んできた。

「ねぇ、酉の刻に、パム島へ行く舟を知らない?」

鮮やかな牡丹色の長衣に包まれた女の顔には見覚えがあった。確か、大射礼の前に差し入れだとかで成均館に来た、インスの妹───芙蓉花だ。
船頭は足元に突き出た船止めに綱を巻きつけながら、日焼けした顔に皺を寄せた。

「パム島行きの舟なら、申の刻に出ましたよ」
「申の刻……?それは確かなの?」
「もちろんですよ。左議政の若君が乗ったらしいです」

左議政の若君、と聞いた瞬間、ジェシンの頬が引き攣れるようにぴくりと動いた。
ヒョウンは頭上の空同様、今にも泣き出さんばかりに口元を歪めた。

「ソンジュン様が、そんな……。明日の朝まで、島から出られないのに。お願いよ、舟を用意して!早く!」

鬼気迫る表情で、ヒョウンが船頭に詰め寄ったそのときである。

「無駄だよ。舟は出せない」

聞き慣れた声がして、ジェシンは振り返った。相変わらず憎たらしいほど鷹揚な風情で、ヨンハがこちらに歩いてくるのが見えた。
ヨンハはヒョウンの前に立つと、川の上に広がる空に目を遣り、言った。

「天気もしっかり調べた上で予約したろ?ほら、雨が降りそうだ」

ヒョウンの憎しみに満ちた目が、ヨンハを睨みつける。だが彼は悪びれるどころか、こみ上げる笑いを噛み殺しているような顔だ。
そのヨンハのすました横っ面に、いきなりジェシンの拳が飛んだ。
ヨンハの身体は、一瞬で丸太敷きの渡し場の上に転がった。

「貴様、何て真似しやがった!」

ジェシンの怒声が、静まり返った漢江の川面に、響いた。







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2012/11/06 Tue. 00:52 [edit]

category: 第十一話

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