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第十一話 11 誘い 

bandicam 2012-11-01 15-52-53-783
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兵曹判書ハ・ウギュは、脇息にもたれていた身体を起こし、息子の顔をまじまじと見返した。

「心当たりがあるだと?紅壁書の正体を知っているというのか?お前が?」
「まだ、一人には絞れておりませんが」

父の文机を挟んで座るインスは、落ち着き払った様子でそう答えた。

「いったい誰だ、それは」
「旬頭殿講で、裏帳簿を盗んだ奴ら───イ・ソンジュン、キム・ユンシク、ムン・ジェシン、そしてク・ヨンハ。紅壁書は間違いなく、この四人のうちの誰かです」

ウギュは何か考えを巡らすように顎髭を撫でつけていたが、やがて言った。

「ではお前は成均館で、奴らをしかと監視しろ。辛亥通共の一件で結局、王と紅壁書にしてやられた形になった。このまま手をこまねいていては、取り返しのつかないことになる」
「何か、お考えが?」

尋ねるインスに、ウギュは片頬を上げてにたりと笑ってみせた。

「紅壁書に、罠を仕掛けるつもりだ」

それまでちらとも感情というものを見せなかったインスが、目の前の父親と同じ顔をして、薄く笑った。
ところで、とウギュは心持ち身を乗り出して、息子の顔を窺い見つつ、言った。

「───まさか左議政の息子は、違うよなぁ?」



昼下がりの成均館。
その左議政の息子、イ・ソンジュンの姿は、この時分は大抵尊経閣で見ることが多いのだが、その日は珍しく人けの無い東斎の片隅にあった。

縁側〈マル〉に腰掛け、肩を落とした彼の背中はどこか物憂げで、いつもの、あの尊大にも見えるほどの堂々とした風情は今は微塵も感じられない。
左手で顔を覆っていた彼は、撫でるようにゆっくりとその手をずらした。現れた目は、憔悴しきってどんよりとしている。しばらく宙をさまよっていた視線は、やがて力なく地面に落ちた。

あの晩、忍び込んだ商人の蔵で見た、ユンシクの妓生姿。自分がおかしくなったのはあれからだ。
男が、しかも大道芸人ならともかく、民の規範となるべき両班の家の息子が、化粧をして女の格好をするなんて、本来なら恥もいいところだ。君子のすることではない。

なのにあの姿を目の前にして、そんなことは頭を掠めもしなかった。
彼の、天女とも見紛う完璧なまでの美しさにただ目を奪われ、圧倒された。
そしてそれは、彼がいつもの姿に戻ってからも尾を引いた。

『ここ?』

濡れた唇からちらりと覗いた、ユンシクの舌。まるで別の生き物であるかのような、その妖しい動き。
絡め取られたように、目を逸らすことができなかった。
あのとき、身体の奥からいきなり突き上がってきたものは、一体何だったのだろう。

昨日の、ヨンハの言葉が脳裏をよぎる。

『まさか、女が嫌いなわけじゃないよな?お前ひょっとして、男が好きだとか?』

馬鹿な、とソンジュンは頭を振った。

母親以外に周囲に親しい女性もおらず、これまで女人というものに対して特別な感情を抱いたことがないのは確かだ。しかしだからといってこの僕が、男色だなんて有り得ない。
孔子の教えに従い、立派な士大夫〈ソンビ〉としての道を歩むべく心を尽くしてきた、この僕が。

ソンジュンは深く息を吐き出すと、意を決したように立ち上がった。



部屋を訪れたソンジュンを、ヨンハは満面の笑みで迎えた。大仰に両手を広げてソンジュンを抱き締めると、彼は満足気に頷いた。

「よく決心した!そうとも、男なら女を拒んだりできないもんだ。うん!」
「キム・ユンシクには、僕から伝えます」
「じゃあ、コロには言っとく。麻浦の渡し場に、酉の刻だ」

では、と一礼し、出て行こうとするソンジュンに、ヨンハが「カラン」と声を掛けた。

「───悪い、勘違いしてたよ。麻浦の渡し場に、申の刻だ、申」
「わかりました」
「テムルと二人だけで乗れよ。後はうまくやってくれるから」

そう言って、ぱちんと片目を瞑る。
そのときのヨンハの表情(かお)に、何となく引っ掛かるものを感じないではなかったが、何しろソンジュンは今の自分がまともではないと自覚している。きっと気のせいだろうと打ち消して、ヨンハの部屋を後にした。

恐らくは四六時中男ばかりの中にいるから、こんな風におかしくなってしまうのだ。そこにたまたま、ユンシクという中性的な人間がいて、しかも自分と一番近しい友人として一緒にいるものだから、何か変な錯覚を起こしているに違いない。
本物の女人と少しでも接すれば、きっとわかるはずだ。
彼への気持ちと、女性に対するそれとは、全く別物なのだということが。


*   *   *


「キム・ユンシク」

写本を抱え、明倫堂から東斎へ戻ろうとしていたユニは、いきなり呼び止められ、振り向いた。
とそこに、銀杏の木の陰からこちらへ歩いてくるソンジュンがいた。

「今日これから……予定はあるか?」
「別に……。家にでも帰ろうかと思ってたとこだけど」
「だったら、一緒に出掛けないか」
「どこに?」

ソンジュンはそれには答えず、ただ「忙しいか?」と訊いた。ユニは慌てて首を振る。

「ううん。全然、大丈夫」
「それじゃ、申の刻に。下馬碑〈ハマビ〉で待ってる」

伝えるだけ伝えて、彼はさっさと行ってしまった。
昨日は何処か不機嫌で、何か怒っているのかと思っていたが、今日はいつもの彼だ。
ほっとすると同時に、誘われたことが嬉しくて、ユニは、口元に微笑みが浮かぶのを抑えることができなかった。

大急ぎで中二房に戻ったユニは、自分が持っている着古した道袍の中でも、一番こざっぱりと見えるものを選んで、着替えた。
化粧をするわけでもなかったが、手鏡を取り出して自分の顔を確かめた。男の格好でいるとはいっても、少しでもソンジュンに良く見られたいと思う気持ちはどうしたってあるのだ。
鏡の中に、うきうきと心弾ませている自分がいる。
ダメダメ、あんまりはしゃぎ過ぎるのも不自然だ、気を引き締めなきゃ、と表情を改めたとき。

部屋の扉が開いた。
ユニは反射的に、手鏡を足元に下ろした。振り返ると、入ってきたのはジェシンだった。

「どこか出掛けるのか?」
「ちょっと、用があって」

自分が、必要以上に浮かれているせいかもしれない。ソンジュンと出掛けるのだとは言いづらかった。
誰かを好きになると、心まで男でいるのは難しい。
逸る気持ちを抑え、ユニはジェシンに一礼すると、中二房を出た。




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あまるですどうもこんにちわ。

拍手のお礼ページ、皆様熱いコメント(笑)をありがとうございます~。
喜んでいただけて嬉しいです。
特に、に**ゃ♪様、そしてコロ*好き様(ほとんど意味のない伏字ですがお許しを)、
お二方のコメントにはもーワタクシの方がむっちゃ楽しませていただきました~。
頑張って画像掻き集めた甲斐があったとゆうモノです(笑)
hag**h様、ク**ム・*ンタ様、き*****の香り様、そういう風に言っていただける
ワタクシは本当に幸せ者ですワ(T_T)ダァ~

お礼ページに関しては、今後もたまに増えたりする可能性大ですので、
気が向いたらまた覗きに来てくださいね~(^^)/




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2012/11/01 Thu. 16:19 [edit]

category: 第十一話

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