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第十一話 10 幻惑 

bandicam 2012-10-27 05-48-29-394
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大成殿へと続く門の方から、弾けるような笑い声が聞こえてきた。
ソンジュンは足を止め、そちらに目をやった。すると、ユンシクとジェシンが互いを小突きあいながら楽しげに笑っているのが見えた。

ずきりと、胸に鋭い痛みが走った。
同時に、足が、深い泥に呑まれたかのように動かなくなった。

ソンジュンはユンシクの笑顔が好きだった。彼が笑っていると、何故か自分まで明るい気分になって、自然に笑うことができた。
なのに、今は何かどす黒いものが胸を覆い尽くしているのを感じる。

ユンシクもジェシンも、自分の同室生だ。彼処まで行って、何か面白いことでもあったのかと訊けばいい。ユンシクはきっと嬉々として話してくれるだろう。そしたら、そんなつまらないことでと、二人に混ざって笑えばいい。
それだけだ。
たった、それだけのことなのに。

ソンジュンは足をそこに縫い止められたまま、一歩も踏み出すことができないでいた。

踵を返した。彼らと反対の方向になら、楽に動くことができた。
笑い合う二人から遠ざかりたい一心で、彼の足元は次第に速くなる。

「キム・ユンシクはただの同室生だ。単なる同室生……」

念仏のようにそう繰り返した。

中二房に戻ってからも、ソンジュンは室内をうろうろと歩き回り、考えていた。
彼にはわからない。
ユンシクの笑い声が、眩しいくらいの笑顔が、何故こんなにも心を重くするのか。
大射礼も、旬頭殿講も、正直なところ可を貰うことなどどうでも良かった。
それまで、彼の行動理由は李 先俊〈イ・ソンジュン〉の名に違わず、“常に人より先んじ、俊(すぐ)れること”のはずだった。
誰かの笑顔がそれに取って代わるとは思いもしなかったが、きっとこれが、友を持つということなのだと理解していた。
なら、これはどういうことなのだろう。笑っているユンシクを、直視できなかった。まるで、彼の前から逃げ出すようにここへ戻ってきてしまった。

自分で自分がわからない。
こんなことは、生まれて初めてだった。

『ワン殿〈ソバン〉!』

ふいにそんな声が聞こえて、ソンジュンは振り返った。そこには、こちらを見て、にっこりと微笑むユンシクがいた。

『ワン殿』

また呼ばれた。今度は、小首を傾げ、悪戯っぽい顔でソンジュンを見上げている。
彼は激しく動揺した。いったい何が起こっているのか、気づくと、部屋のあちこちにユンシクがいた。

文机の前で、顰めっ面で本を読んでいるユンシク。床の上に寝転がって、頬杖をついているユンシク。
小さな身体をいっぱいに伸ばして、棚の上のものを取ろうとしているユンシク。
書写をしながら、居眠りするユンシク……

部屋中にいる様々な姿のユンシクが、くるくると表情を変えながら皆、あのぱっちりとした瞳で、あの可愛らしい声で、彼を呼ぶのだ。
ワン殿、ワン殿、ワン殿───。

目眩がした。動悸が速くなり、変な汗まででてきて、ソンジュンは思わず天を仰いだ。
信じられなかった。こんな幻覚を見てしまうほど、ユンシクのことが頭から離れないなんて、絶対にどうかしている。
出なければ。ユンシクで埋め尽くされたこの部屋から、一刻も早く───

ソンジュンが手を伸ばすより一瞬早く、入り口の扉が開け放たれた。そこに現れたのは、ヨンハだった。
彼はソンジュンを見るなり眉をひそめ、その顔を覗き込んだ。

「おい、どうしたカラン。顔色が悪いぞ。悪い病気にでもかかったのか?ん?」

検分のつもりか、ヨンハは無遠慮にソンジュンの瞼をひっくり返したり、頬をびたびた叩いたりする。
いっそ病気だったらどんなにいいだろう。
ヨンハにいいように顔を弄ばれながら、ソンジュンは尋ねた。

「先輩、何の用ですか」

ヨンハは、今思い出したとでもいうように はっとすると、途端にころりと表情を変えた。

「舟遊び!行こうよぉー。いいだろ?芙蓉花も誘ったから。準備は彼女がしてくれる。豪勢になるぞ」
「僕は結構です」
「お前が来てくれないと、頭数が揃わないんだよ。な、このとおりだから」
「何度頼まれても無駄です」

冷たく言い放つと、ヨンハは ええい、と苛立たしげに被っていた笠を脱いだ。

「よぉしわかった。こうなったら、お前が行くって言うまで、ここから動かないからな!覚悟しろ!」

部屋の中央に大の字に寝転がり、袂から何やら怪しげな本を引っ張りだす。
ソンジュンは小さく溜め息をつき、文机を引き寄せた。舟遊びなど行く気はさらさらないし、ヨンハが動かないと言うなら仕方がない。長期戦になるのを覚悟して、ソンジュンも棚から本を取り出した。

とそのときだった。

「でも、助かったでしょ?」
「お陰様でな」

互いにそんなことを言い交わしながら、ユンシクとジェシンが部屋に入ってきた。まるでヨンハやソンジュンのことなど眼中にないかのように、くすくす笑っている。

「それにしても、びっくりしたらしゃっくりってほんとに止まるんですね。そんな人、初めて見ました」
「もうやめろって」

ソンジュンは黙ったまま不機嫌に眉間に皺を寄せ、手にした本を猛然とめくり始めた。
その本が逆さになっているのを横目に見て、ヨンハがちらりと笑う。
何気ない風を装いながら、彼はユンシクに尋ねた。

「コロのしゃっくりが止まったって?」

話したくてうずうずしていたのだろう。ユンシクが目を輝かせて頷いた。

「ぼくが、先輩に特効薬を処方したんです。まさかあんなに効果があるとは思わなかったけど」
「テムル。いい加減黙れ」
「さっきのコロ先輩の顔、見せたかったなぁ。もう可笑しくって……」

叩きつけるように本を閉じる音が、ユンシクの言葉を遮った。三人の視線が、終始無言だったソンジュンに集まる。
が、彼は誰とも視線を合わそうとせず、固い表情で空(くう)を睨み据えている。
いつになく腹立ちを露わにした彼の様子に、その場の空気が一瞬、凍った。

ふうっ、と息をついて、ヨンハが本をめくりながらのんびりと言った。

「一時期さぁ、疑ってたんだよね。テムルが、ほんとは女なんじゃないかって」

ユンシクがさっと顔色を変え、寝転んだままのヨンハを見下ろす。

「先輩、何を馬鹿なこと……」
「だけど、もうそういうのは止めにした。そんなことより、もっと気になることができちゃったからね」

ユンシクを間に挟んで、ジェシンとソンジュンが微動だにせずに座っている。
開いた本の陰からそれを眺めながら、ヨンハは一人、ふふっと楽しげな笑みを漏らすのだった。




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あまるですどうもこんにちわ。

ええと、当ブログ、開始当初から何故かコメント欄より拍手コメントの書き込みを利用される方が多いという特徴がありまして。
皆さんシャイなのかしら。くす。

それはともかく、拍手コメはなかなか即レスできずあまりに心苦しいので、プラグインをちょっといじくりまして、拍手のお礼ページを頑張って作ってみました。
今のところ16パターンあります。←17パターンでした(^^ゞスマソ
連続押ししても1カウントなので、気にせず押しまくってください(笑)

いつも拍手&拍手コメくださる皆様、ほんとにありがとうです。
諸事情によりお返事できなくてスミマセン。
代わりと言っては何ですが、ちょこっとでも楽しんでいただければ幸いです(^^)




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2012/10/27 Sat. 06:31 [edit]

category: 第十一話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: snowwhiteさま

運命の一夜ですよ~。ひょひょひょ~←もっとアヤシイ人
悶え苦しむソンジュンを書くのがこんなに楽しいとわ……
もしかしてドSですかワタクシ(笑)

あまる #- | URL
2012/10/29 00:03 | edit

いよいよ、ソンジュンの妄想の世界が・・・!
と一人悶えております笑。

もうすぐ運命の一夜ですね♪←なんか響きが怪しいですが。

超楽しみにしております!

snowwhite #bSUw9.7Y | URL
2012/10/28 13:34 | edit

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