スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

--/--/-- --. --:-- [edit]

category: スポンサー広告

cm --  tb --  

きみのためにできること 1 

あまるですどうもこんにちわ。

久々に番外編の更新です。ちょっと息抜き。(笑)
他の番外編とは独立した話にするつもりでしたが、やっぱり繋げて書くことにしました。
『寒い夜~』の続きということで。
(行き当たりばったりで書いてるのがバレバレ……(^^ゞ)

おヒマのある方は覗いたってください。
*******************************************************


その日、ユニは朝から落ち着きがなかった。
どのくらいかというと、まず洗顔用の桶を弟ユンシクの部屋に持って行こうとしたら、敷居に蹴躓いて中の水を寝起きの弟の頭に派手にぶちまけてしまった。
慌てて、庭先に干してあった手拭いを引っ張ったら、竿ごと地面に落として洗濯物を全て台無しにした。
朝餉を作れば釜の前でぼうっとして飯は焦がすわ、雑巾がけをすれば勢い余って縁側から落っこちるわ、その粗忽っぷりといったら呆れるばかりで、母はついにユニを部屋に座らせると、言った。

「ユニ、頼むからお前はもう何もしないで」

母のこめかみに浮き上がる青筋に、ユニは「はい……」と消え入るような返事を返すしかなかった。
大量の洗濯物と対峙すべく部屋を出ていった母の背中を見送りながら、はぁ、と深く息をつく。
すると、背後でユンシクのくすくす笑う声が聞こえた。

「姉さんはもともと鈍くさいところがあるけど、今日は特に酷いね」

ユニは弟を振り返った。かつてそこには、布団の上に半身だけ起こした、青白い顔の下げ髪の少年がいたはずだが、今は、きちんと身なりを整え、髷を結い、文机に向かう凛々しい姿の若者がいる。
姉をからかう口調すらも嬉しくて、ユニは笑った。

「そうかな。自分では、普通にしてるつもりなんだけど」
「どこが。お陰で僕は散々だよ。朝から水浴びする羽目にはなるし、朝餉は待たされるし」
「ごめん……。あ、身体平気?寒気とか、しない?」

額に触れようとする姉の手をやんわりと遮りながら、また、とユンシクはちょっと怒ったような顔をする。

「僕はもう大丈夫だって。いつまでも心配しすぎだよ、姉さんは。いくらたまにしか帰ってこないからってさ」
「うん……。そうだよね。ユンシクはもう、前とは違うものね」

そうだよ、ユンシクは笑った。以前の、痩せこけて痛々しかった面影は、既にそこにはない。
ユニが成均館から持ち帰ったり、たまにソンジュンがわざわざ取り寄せて持たせてくれる薬のお陰か、彼はすっかり健康を取り戻し、歳相応の若者の身体になりつつあった。
最近では、頻繁に外を出歩いたりもしているようだ。

ユンシクが元気になってくれるのはもちろん、嬉しいことには違いない。けれどユニは同時に、キム・ユンシクという名を早く彼に返してあげなければ、という焦りのようなものも感じるのだ。
ユニが大科に合格して、地方の小さな官職にでも就けば、怪しまれずに入れ替わることもできるだろう。
問題は自分が、大科にそんなに簡単に受かるのかということなのだが───

「………さん、姉さんってば!」

自分を呼ぶ声にはっとして、ユニは顔を上げた。いつの間にか、深い物思いに沈んでしまっていたらしい。
ユンシクが彼女の顔を心配そうに覗き込んでいた。

「あ、ああごめん。なに?」
「まったく。姉さんの方がよっぽど心配だよ。そんなにぼーっとしてて大丈夫なの?今日は姉さんにとってすごく大事な日だろ?」
「そうだ!もう時間!支度しなきゃ!」

ユニは弾かれたように立ち上がった。鈍色のチマの裾を翻し、慌ただしく部屋を出ていく。
そんな姉の姿に、残されたユンシクは苦笑交じりの溜め息を漏らすと、また手元の本に目を落とした。
あんなに慌てて、またどこかで躓いたりしなければいいがと思いながら。


南山のユニの小さな家に、ソンジュンの屋敷から求婚書を携えた遣いが来たのは、半月ほど前のことになる。
ある程度の話は聞かされていたとはいえ、まさかあの左議政宅から遣いが本当に来るとは夢にも思っていなかったらしく、母もユンシクもただ驚くばかりだった。
以来、最初の休暇となる今日は、ソンジュンがユニの家に挨拶に来るというので、母は朝から大わらわだった。
ただでさえそんな状況なのに、緊張のためか失敗ばかりやらかす娘のせいで更に母の仕事が増えることになったわけで、ユニは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

それは、母が貧しい家計をやり繰りして揃えてくれた上衣〈チョゴリ〉に腕を通したときも同じだった。
上品な薄紫が美しい。以前これを着たときは、ユニが女であるという事実を知った王に拉致されてしまい、結局ソンジュンに見せることはかなわなかった。
その後、何やかやとごたごたして延び延びになっていたソンジュンの訪問だったが、彼が半ば強行して送った求婚書により、ようやく今日の日を迎えることとなったのである。

鏡の前に座り、短い髪をまとめていると、部屋の扉が開いた。静かに入ってきた母はユニの横に座ると、貸してごらん、と言って櫛を受け取り、ユニの髪をとかし始めた。
「忙しいのにいいの?」とユニが問うと、母は何言ってるの、と笑った。

「好きな人に、女人の姿を初めて見て貰うんでしょう?うんと綺麗にしないでどうするの」

正確には初めてでもないんだけど、とユニはちらりと思ったが、黙っていた。
娘が、妓生の格好で大商人の蔵に忍び込んだなんてことを母が知ったら、きっと腰を抜かすだけでは済まないだろう。

「本当に綺麗な髪だこと。もう少し長ければねぇ」

溜め息をついた母に、ユニは鏡越しに笑ってみせた。

「また言ってる。髪なんて伸ばそうと思えばすぐ伸びるものだって言ったのはお母様よ」
「私みたいな年寄りの髪とお前のとじゃ、意味合いが違うのよ。───さ、できた」

鏡を覗くと、いつの間にか耳の横に、桃の花を象った髪飾りが刺してあった。

「お母様、これ……」
「私が若い頃に、お父様からいただいたものよ。この日のためにとっておいたの」

ユニは驚いて、母を振り返った。

「お父様、簪ひとつ買ってくれない人だったんじゃないの?」
「それは夫婦になってからの話よ。お父様だって、若いときはあったんだから」

ふふっ、と少女のように笑う母を、ユニはあっけにとられて見つめた。そうだった。思えば母は裕福だった老論の家を捨て、南人である父と駆け落ち同然に結婚した人だったのだ。

「……結婚したら、夫は妻のことなんて構わなくなるの?」

急に不安にかられて、尋ねた。母はユニの手を両手で包み込むように握り締め、言った。

「それは妻次第よ。学問好きの男を夫にするなら、お前が書物よりも愛される妻にならなくてはね」

四書五経よりもソンジュンに愛される?そんなの絶対無理だ。
ユニは暗澹たる気持ちになって、母に弱々しい微笑みを返すのだった。




↓楽しんでいただけたらポチっとお願いします
にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
スポンサーサイト
web拍手 by FC2

2012/10/04 Thu. 02:46 [edit]

category: きみのためにできること

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 0  tb 0 

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://amaru0112.blog.fc2.com/tb.php/130-42669ae4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

2017-08
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。