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第十一話 4 彼等の進む道 

bandicam 2012-09-26 20-30-42-905
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仁者は憂えず、知者は惑わず、勇者は懼(おそ)れず。

開いた頁には、整然と文字が並んでいる。自らを省みたソンジュンは小さく溜息をついた。
情けないことに全滅だ。
自分は仁者にも、知者にも、勇者にもなれない。

これまで、自身の歩んできた道を疑ったことなど、一度としてなかった。それは、父という確かな指針が常に目の前にあったからだ。父の背中さえ見失わずにいれば、道を誤ることはないと信じていた。
だがそれが初めて、ソンジュンの中で揺らいだ。
我が父を疑うなど、孝の道にもとる行為だと悩み、懼れる一方で、役人たちの蛮行や泮村の現実が彼を迷わせた。

結局、最後に彼の背中を押したのはユンシクの言葉だった。
自分自身よりも、イ・ソンジュンその人を信じるとユンシクは言った。
己の判断が正しいかどうかなんてわからない。けれど、ユンシクが信じるのなら、ソンジュンも自分を信じられる気がした。父の背中ではなく、初めて、己の心が向かうに任せた。

───だが正直、これが正しい行動だったのだという確信をようやく持てたのは、王から可を下賜されたときではなく、君の笑顔を見たときだったと言ったら、君は驚くだろうか。それともやっぱりまた、笑うんだろうか───。

老論の力は強大だ。天にも等しい地位にあるあの王にさえ、意のままに行動することを許さない。
努力がすべて報われると心から信じることができたのは、自分がそれだけ恵まれていたからだ。
本人がどれだけ歯を食いしばり、頑張っても、どうにもならないことは存在する。ポクスがそうだったように。

所詮、何も変わらないかもしれない。自分たちのやったことは、何の意味もないことかもしれない。

「それでも、君は立派だよ。イ・ソンジュン」

ユンシクは、言った。彼は微笑んでいた。
ソンジュンが悩み、苦しみ、そして決断したこと。結果がどうなろうと、彼にとってはそれがすべてだとでも言うように、真っ直ぐな敬意を示した。
父のつけた道筋をただ歩いていた、左議政の息子にではなく、イ・ソンジュンに対しての敬意を。

誰かに褒められて喜ぶなんて、まるで子供だ。だが彼がそんな風にして笑うと、自分のしたことは何もかも全部、彼のこの笑顔を見るためだったのだという気がしてくる。
正義だとか、道理や法に則ってとか言うのはどこか今の自分には嘘くさく思えて、ソンジュンは妙な気持ちになるのだった。

覚えておいてくれる?と、ユンシクは言った。
いつか二度と会えなくなっても、ソンジュンを信じる自分という人間がいたことを、思い出して欲しいと。

いつも、思っていた。はっきりと言われたわけではないが、彼の言葉の端々や態度から、なんとなく感じていた。
どうして、彼はいつもそうやって、二人がいずれ永遠に離れることが決まっているかのように話すのだろう。
僕との間に線を引いて、そこから少しずつ遠ざかって行こうとするのだろう。

立ち去ろうとするユンシクの手を、ソンジュンは思わず掴んでいた。行くな、と。
これは自分の、我侭なのかもしれない。けれど、彼なしでは、自分が正しい道を歩いているのか確信が持てない。
進む先に誰もいなくても、振り向けば彼がいて、そこで笑って、頷いてくれるなら。
迷うことなく、懼れることなく、歩いて行ける気がするのだ。これから先もずっと。

そばにいてくれ。
口にしたのは、切実な願いだった。大きな瞳に涙を溜めて、ユンシクは頷いた。
その微かに震える唇が、ソンジュンの視線を捉える。
それまでとは別の何かが、また彼の胸をざわつかせた。慌てたソンジュンは ぱっと、ユンシクから身を離した。

───なんなんだ、いったい。

一昨日、ソン・ヨンテの蔵に忍び込んだあの晩以来、どうもおかしい。
胸の中に、自分の意志とは関係なしに、いきなり勝手に現れる正体不明の“何か”。
不快なものというわけではなかったが、それが現れるとやたら動悸が早くなり、ソンジュンは落ち着かなくなるのだ。

踵を返して歩き出したが、思い直して、また戻った。
ユンシクとはこれからもずっと一緒にいる。ソンジュンはそう決めた。
だがこれだけは、困る。
訝しげに見上げるユンシクに、彼はもうひとつ、切実な願いを口にした。

頼むから、今後僕の前で、二度と女の格好はするな、と。


*   *   *


その夜。
左議政イ・ジョンムは、口に含んだ酒を苦々しげに飲み下すと、低く押し殺した声で言った。

「その帳簿は、存在してはなりません。我ら老論の存亡に関わる」

兵曹判書ハ・ウギュは、小料理の並んだ卓の上に覆い被さるようにして、左議政の目を覗き込んだ。

「存在してはならぬとは、どういう……」
「宮殿にいる者を使い、帳簿を消すのです。王の口は、私が塞ぐ」
「どうやって?」

ジョンムは酒盃を置いた。わかりきったことを訊くなとでも言いたげに、ウギュを見返す。

「かの王を今の地位に就かせたのは、我ら老論です。代わりなど、いくらでもいる」

ウギュは思わず、ごくりと唾を飲み込んだ。左議政の口から、大変なことを聞いてしまった気がしたのだ。
今更ながら、己が加担している事の重大さに、膝が僅かに震える。

「大監、外においでくださいませんか」

下がらせていたはずのチョソンが部屋に入ってきて、そう告げた。美しい双眸に、ただならぬ緊張感を漂わせている。
何事かと回廊に出ると、辺りは騒然としていた。妓生たちが口々に悲鳴を上げながら右往左往している。
と、すぐ脇の柱に、一本の矢が固い音をたてて突き刺さった。その鏃近くに結び付けられた赤紙を見、ウギュの眉が釣り上がった。

「紅壁書め……!誰かおらぬか!直ちに奴を捕らえろ!」

どこからともなく現れた黒い影が、左議政を見下ろす。その視線を感じたジョンムは、回廊から向かいの楼閣の屋根を見上げた。
揺らめく灯籠の明かりを挟み、二つの視線が鋭く交差する。
だがそれはほんの一瞬だった。怒涛のように押し寄せてきた官軍兵の足音に、紅壁書の黒い影は夜の闇に瞬く間に掻き消えた。

その晩、都の至る所でばら撒かれた壁書は、いつにも増して鮮やかな筆致で、漢城府の役人たちや暴利を貪る老論を痛烈に批判していた。


朝鮮は貧国と誰が言う
貧者は只民なり
商人の蔵を守りし犬は
米を食い肥え太り
禁乱廛権の暴政の下 
民は飢え老論のみただ潤う
今こそ金縢之詞 老論を罰す
誰を主と奉るべきか
〈まさ〉に知るべし


「こんなけしからんものを書く紅壁書が、ウチの学生だというのですか?」

鼻息荒く言うと、大司成は壁書をぐしゃぐしゃと丸めて、ぽいと放った。

「漢城府と兵曹がそう主張しています」

ユ博士の表情は険しい。この夜更けに官軍への対応に追われたためか、疲労の色が濃く滲んでいる。
チョン博士は大司成が丸めた壁書を広げ、丁寧に皺を伸ばした。

「文体には、書き手の人となりが現れるものです。この詩文の中に、隠された顔があるはず───さてさて」

拡大鏡を目にあて、じっくりと検分を始めたチョン博士に、大司成が恐る恐る尋ねた。

「何か、見えますか?」
「大胆且つ勇猛、そしてこの、流れるような筆さばき……」

低く唸りつつ、壁書に目を凝らしていたチョン博士だったが、ふいに「そうか!」と顔を上げた。
息を呑んだ大司成が、掠れた声で問う。

「教えてください、チョン博士。いいいいったい、誰なんです?」
「紅壁書は……」

言いかけて、辺りを窺う。大司成とユ博士は思わず身を乗り出した。
そしてチョン博士は、彼の発見した重大な秘密を口にした。

「紅壁書は、男です。それも、とても立派な」




******************************************
あまるですどうもこんにちわ。

朝晩いきなり冷え込むようになってきましたが、皆さん風邪とかひいてないですか?
たまの休みに天気に恵まれず、毛布干したくてもできなかったあまる家。
根性で今だにタオルケットで寝てたんですが(何の我慢大会(^^ゞ)
本日やっとお洗濯できました~。サンキュウサン社員!
そしてすまんかったな息子!よく頑張った!今日からあったかくして寝れるぞ!(爆)

あー親子ともども頑丈で良かった。
お布団は早めに用意しないといけません。反省。




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2012/09/26 Wed. 20:53 [edit]

category: 第十一話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: みずたまさま

お忙しい中ご訪問ありがと~(^^)

今年の夏はやたら暑かったから、急に冷え込んできて慌ててしまったワ。
お米農家の方々は日本で一番早く新米を食べるのだと思って勝手に羨ましがってましたが(笑)
そーゆう事情もあるのね~。
どっちにしてもコメ好きのワタシにはウラヤマスィ話ですが。コシヒカリ~
ちなみに我が家の定番は県産米の「めし丸くん」です。(^^)

あまる #- | URL
2012/09/27 21:40 | edit

天高く ウマ肥ゆる秋✿

やあ~(^O^)/
あまるさん、こんにちは~(^^ゞ

なんだかバタバタ子な日々を送っていて、こちらにコメントを残さず読み逃げしてたよ~(>_<)
ココで癒されてますわ~✿ありがとう☆あまるさん♪

寒くなったよね~。
タオルケットは今年は出さず肌がけまたはなにもかけず、熱帯夜もクリアーして、今はフリース地が裏打ちされてるかけ布団だわ。
スゴい・ワープ★~~~。
一歩一歩、冬に向かってるね。

穀倉地帯のこの辺りではこしひかりの新米収穫が宴たけなわです。
コメ農家の我が家は古米から食べつくしてるんで新米にたどり着くにはまだまださきでござる。


みずたま #- | URL
2012/09/27 12:45 | edit

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