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第十一話 3 彼等の進む道 

bandicam 2012-09-21 01-06-01-614
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来てくれてありがとう、とユニが笑顔を向けると、ポクスはくすぐったそうに片頬を上げた。

「礼なんていらねぇよ。あんたの無実を晴らすために、来てくれってそこの兄さんが泣いて頼むもんだからさ。めんどくせぇから、仕方なく来たんだ」

と、顎をしゃくって傍らに立つジェシンを指す。たちまち憤慨したジェシンが怒鳴った。

「泣いて頼んだって、いつ俺が!」

笑いを噛み殺して横を向くと、同じような顔で拳を口元にあてているヨンハと目が合った。
去り際、ポクスはふと思い出したように振り向いて、「おい、兄さんたち!」と言った。

「真面目に生きろよ!俺が、あんたたちの背中を見てるんだからな!」

悪戯っぽい笑顔を残して泮村へと戻って行くポクスを、ジェシンは苦笑混じりに見送った。
ヨンハが「何のことだ?」と尋ねる。
横顔のジェシンは、眩しいものを見るように目元に皺を寄せ、「ちょっとな」と言った。

「先輩、ぼく、ちっとも知らなくて……」

ユニ自身は退学の覚悟も決めていたのに、何も言わず、陰で支えてくれたジェシンの気持ちがありがたかった。
彼がいなければ、今頃ここでこうして笑うことなどできはしなかっただろう。
ジェシンは一瞬、戸惑ったような表情を見せたが、気恥ずかしさを隠すためか殊更むっつりした顔を作って、言った。

「もういい。別に、お前のためにやったわけじゃない」

ははん、とヨンハが面白そうに鼻を鳴らした。

「テムルのためじゃなきゃ何だ?成績のためか?三年連続落第生のムン・ジェシン」

そう茶化してみたものの、すぐに横っ腹に強烈な肘鉄をくらい、情けない声を上げる羽目になる。

「痛たた、わかったわかった、愛してるからそう怒るなって。な?」

懲りずに笑いかけるヨンハと、不貞腐れてそっぽを向くジェシン。
そんな二人を微笑ましく見ながら、ユニは頭の隅で考えていた。
昨夜、ジェシンがユニに問い掛けた言葉だ。

"こんなことで諦めるくらいなら、どうして成均館に入ったんだ"

成均館に来るまで、ユニが餓えていたのは食べることだけではなかった。
道端に横たわる物乞いのように、残った力を振り絞り、書に腕を伸ばしていた。学ぶことを、必死で求めていた。
そんな自分には、ソンジュンがくれたこの場所はまさに渡りに船だったのだ。
生活の心配はなくなり、弟の薬も手に入る。生まれて初めて、師という存在も得た。

だが成均館はそんな、一人の無力な者の飢えを満たすためにあるのではない。
自分たちがここで学ぶ陰には、数多くのポクスたちがいるのだ。

そして宮廷で志有る者たちを待つ、あの王が。

ジェシンは優しい。ヨンハも、ソンジュンもだ。
だが自分は、彼らの優しさや友情に報いることができるのだろうか。この先も成均館の儒生でいられるようにと、彼らが力を尽くしてくれるほどの価値が、自分にあるのだろうか。
成均館にいて、いったい自分に何ができるのだろう───。

「ところでカランが見当たらないな。急に怖気づいて隠れたか?」

ヨンハの声に、ユニは はっと我に返った。とにかく今、やるべきことを思い出したのだ。
彼女の足は、自然と尊経閣に向かっていた。



「否定するつもりか、それともまさか本気で信じているわけではないだろうな?」

尊経閣の扉をくぐった途端、嘲笑うような声が聞こえてきて、ユニは思わず足を止めた。
書架の間から向こうを伺うと、こちらに横顔を見せて立つソンジュンとインスがいた。

「商人の裏金が老論の政治資金となることくらい、お前にもわかっているはずだ。老論の長であるお前の父親が、無関係だとでも思うのか?お前は、自分の父親を追い詰めたのだ」

相変わらず歪んだ笑みをうっすらと浮かべているインスを、ソンジュンは無表情に見下ろし、言った。

「僕の父は、息子に恥じることはしません。そして僕も、父に恥じない選択をしたまでです」

ふん、とインスは鼻先でせせら笑った。

「お前の行為は立派だが、たかが帳簿一冊で世の中が変えられると思うか?王は、何もできないはずだ。なぜなら、お前の父親がどんな手段を使ってでも王のやろうとすることを妨害するからだ。お前の尊敬する完璧な父親がどういう人間か、お前もじきにわかるだろう」

インスが身を翻した。入り口近くにいたユニは慌てて通路に背を向け、目の前にあった本を闇雲に手に取った。
足音が尊経閣の扉を出てしまうのを待ってから、そっと振り向く。すると、書架の向こうからこちらを見ているソンジュンと目が合ってしまった。

盗み聞きしていたと思われたかもしれない。なんとなくきまり悪くなったユニは目を逸らし、抱えていた本を戻そうとした。ところが、焦っていたせいか戻すつもりの本は全てドサドサと足元に落ちてしまった。

ああもう、と小さく舌打ちして、しゃがみ込む。その視界に、長い腕が すっと伸びてきた。
拾い上げた本を、きちんと角を揃えて棚に重ねるソンジュンを見上げ、ユニはためらいがちに腰を上げた。

「お礼を、言いたかった。それから……謝んなきゃいけないことも」
「本を拾ったくらいで、随分大袈裟だな」
「今日の、帳簿のことだよ。君に重荷を負わせることになって、後悔してる。君に言われたとおり、あんな帳簿なんか、持ちださなきゃ良かったんだ」

ユニはしおれてそう言ったが、ソンジュンの答えは明快だった。

「僕たちはお互い、やるべきことをやったまでだ。誰かに詫びる必要などない。だから気にするな。───それに」

ふと視線を落として、彼は言った。

「もしかしたら掌議の言うように、僕たちのやったことは、何の意味もないことかもしれない」

少し、驚いた。イ・ソンジュンは、己の努力次第で世の中を変えられると、信じて疑わない男ではなかったか。
奇跡すら起こしてみせると言い切って、実際にそれをやってのけた彼が、自分のやったことが無意味かもしれないと?

固い表情でユニの脇をすり抜けたソンジュンに、ユニは思わず声を掛けた。

「それでも、君は立派だよ、イ・ソンジュン」

振り向いた彼に、明るく微笑んでみせた。

「頑張っただろ?この先どうなるかはともかく、君が頑張ったのは確かだから。偉いと思うよ」

正直な気持ちを伝えると、ソンジュンは張り詰めていた顔をふっと緩めた。そして笑った。
ユニの好きな、あの笑顔だ。また見られたことが嬉しくて、ユニも笑った。
ほんの束の間、そうして二人で笑いあってから、ユニは言った。

「ぼくは、今この瞬間をずっと忘れない。成均館を卒業したら、二度と一緒にはいられないだろうけど、それでも、覚えておきたいんだ。ぼくたちが悩んだり、不安に思ったり、嬉しかったりしたこと。それから、いつも一緒だった───」

じっと自分を見つめる本人を前にして、その名を口にすることが躊躇われ、つい、「同じ部屋の、仲間たちのこと」とはぐらかした。

「想い出があれば、きっと前向きに生きていける。だから君にも、覚えてて欲しいんだ。いつか、今日みたいに辛い決断を下すとき、君自身よりも、イ・ソンジュンを信じる人間がいたってこと」

それだけで充分だ、とユニは思った。一緒にいることはできなくても、せめて共に時を過ごしたこの記憶を、彼が時折思い出してくれたら。そしてそれがこの先、彼を助け、彼の慰めになってくれるなら。
本当に充分だと思うのに、それ以上のことなど望んでやしないのに、ユニの胸は締め付けられるように痛んだ。

耐えられなくなった彼女は、足早にそこを出ようとした。
だがソンジュンとすれ違いざま、手首をぎゅっと掴まれ、立ち止まった。

「嫌だ」

彼はそう言って、ユニを見た。

「そばにいてくれ」

ユニは、目を溢れんばかりに見開いてソンジュンを見つめた。
彼女の手首を握る彼の手には、痛いくらいの力がこもっていた。

「遠く離れて、君を思い出すなんてまっぴらだ。見守っていて欲しいんだ、僕の進む道を。僕も君を見ていれば、きっと今日のことを忘れずにいられるから。だから」

いいかキム・ユンシク、とソンジュンはユニの肩を両手で掴み、自分と真っ直ぐに向きあわせた。

「君はずっと───僕のそばにいるんだ」







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2012/09/21 Fri. 01:55 [edit]

category: 第十一話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: ちびたさま

後半はソンジュンのトキメキが驀進してますから~。
ワタクシも今からドキドキですわ。(笑)
次の山場は例の無人島シーンですかね。ああ~早く書きたいのに時間が(T_T)

あまる #- | URL
2012/09/23 07:46 | edit

>snowwhiteさま

おかえりなさい~(^^)
またお越しいただいて嬉しいです。

> 主人におねだりをしよーかしら笑
> でも、言ってもらってもときめくかしら?笑

意外にときめくかもデスよ(笑)
できればおねだりしなくても言って欲しいもんですけどね~。

そうそう、ワタクシ買いました!
「太陽を抱く月」原作本。ミステリ要素もあって面白いですよ。下巻も予約ちうです。
楽しみ~(^^)

あまる #- | URL
2012/09/23 07:43 | edit

鯉 じゃなくて 恋やねえ(しみじみ)

このあたり、後半戦から『トキメキ』の名にまけないような、セリフやら場面やらがでてくるんですよねえ。
日本のタイトルつけた人はきっと全部みて『これはトキメキをつけるしかありえまい!』と思ったんだろうか??

ちびた #- | URL
2012/09/21 20:55 | edit

きゃっ

君はずっと───僕のそばにいるんだ

ああ、そういうセリフ、人生で一度でいいから言われたかった・・・!
主人におねだりをしよーかしら笑
でも、言ってもらってもときめくかしら?笑

snowwhite #bSUw9.7Y | URL
2012/09/21 10:44 | edit

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