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第十一話 2 王の裁断  

bandicam 2012-09-14 03-04-41-786


***********************************************


講堂が、水を打ったように静まり返った。
王は儒生たちを見渡すと、言った。

「余は、キム・ユンシクを犯人とみなした掌議ハ・インスとその他の学生たちに、“不可”を与える」

儒生たちは、溜息とともにがっくりと肩を落とした。ビョンチュンが青ざめた顔でインスを見上げるが、彼は王を見据えたまま、微動だにしない。
王は続けた。

「しかしそれは、キム・ユンシクの他に犯人がいたからではない。───掌議、キム・ユンシクを救うため、漢城府の権知として何をした?」

インスは王の質問の意図を測りかねているのか、怪訝な顔で王を見返した。

「彼の無実を証明するため、どんな努力をしたかと訊いておるのだ」
「私は、キム・ユンシクが犯人だと信じていました。陛下」

それが理由だ、と王は一層表情を厳しくして、言った。

「役人として、そしてまた、成均館の掌議として、そなたはキム・ユンシクを救うために、彼の無実を信じ、再捜査すべきだった。余の民を慈しむことのできぬ役人など、余は必要としていない。それが掌議ハ・インスと、彼に同調した者たちに不可を与える理由であり、余が示す王の権威である」

王の言葉に、ユニの胸は震えた。自分の無実を信じてくれていたのは、ソンジュンたちだけではなかったのだ。
本当に、自分が男だったらどんなによかっただろう。このとき、ユニは切実にそう思った。
漢城府の権知だったこの二日間、朝鮮という国に感じた失望は大きかったが、この王の元でなら、何かが変わるかもしれない。この王の元で、身を粉にして働けたなら、夢が夢で終わらずに済むかもしれない。
もし、自分が真実、男であったなら。

さて、と王は玉座を立った。

「残すは、真犯人の処罰だな」

前庭に跪くポクスが、緊張で全身を硬直させる。

「漢城府権知、キム・ユンシク」
「え?はい、陛下」
「そなたに濡れ衣を着せたこの者に、どのような処罰をくだすか?」

ユニは、庭先で面を伏せているポクスに視線を移した。地面の上についた両の拳が、微かではあるが震えているのがわかった。
強気で、粗暴な口をきいてはいても、彼はまだ子供なのだ。だが親を亡くしたせいで、早く大人にならざるを得なかった。これからもそれは続くだろう。
弟や母を守るために、ユニがそうしてきたのと同じように。

「盗品を弁償しても、その罪は償えません」

王は、そうか、と頷いたが、ソンジュンやジェシンは、不意を突かれたような顔でユニを見ている。
ユニは続けた。

「彼を書吏として成均館に置き、今後、このような不祥事が起きぬよう、厳重に警戒するよう命じます。お許しくださいますか」

驚いて顔を上げたポクスが、ユニを見た。その顔に、ユニは優しく微笑んだ。

「それでは、軽すぎるな」

王は言い、ポクスに向き直った。

「そなたは成均館で、彼等四人が正しい心を持ち続けられるか、余の代わりに監視せよ。これが余の下す罰だ」

ポクスの目が、みるみる真っ赤に染まった。陛下、と言ったきり彼は言葉に詰まり、感極まった様子で頭を地に擦りつけた。
王は帳簿を手に取ると、静かにソンジュンに歩み寄り、言った。

「真の事件の犯人は、この中にいる。余もそう信じる」

ソンジュンが頭を垂れると、居並ぶ儒生や博士たちを見渡し、王は笑った。

「次は余が解決にあたる番だな。なんと、旬頭殿講に来て、余が宿題をもらって帰ることになるとは。実にけしからん学生たちだ。のう、大司成」

大司成は一瞬、顔色を変えたが、すぐに居住まいを正した。

「もう騙されませんよ。ご冗談だとわかっております」

王はまた笑い、その低くよく響く声で、一同に告げた。

「約束どおり、真犯人を突き止めた庠儒キム・ユンシク、イ・ソンジュン、ク・ヨンハ、ムン・ジェシンを、旬頭殿講の合格者とし、“可”を与える。───以上だ」


*   *   *

枡形に仕切られた箱の中身をひとつずつ指差しながら、チョン博士は言った。

「川芎〈せんきゅう〉、白朮〈びゃくじゅつ〉、葛根、桔梗、甘柿……何だかわかるかね?」

傍らに立つインスは、口元に微かな笑みを浮かべている。自分がなぜ薬房になど呼ばれたのか、皆目見当がつかないという表情で、彼は答えた。

「さあ。卑しい医書などに興味はありませんので」
「先日の帰宅日に、君がキム・ユンシクに渡した薬材だ」

そうですか、と答えるインスに、博士は更に続けた。

「川芎、白朮、葛根、桔梗、干柿───これは、キム・ユンシクが売った、いや、売ったとされる薬包に入っていた薬材だ。興味深いだろう?」

そう言って、博士は二つの枡から薬材をひとつずつ取り出すと、インスの目の前にかざして見せた。

「甘柿と干柿。卑しい医書など見たことのない者には、区別するのは難しいだろうな」
「確かに……よく似ていますね」
「キム・ユンシクが売ったように見せかけてはいるが、どうやら失敗したようだ。つまり今回の事件は泮村の少年以外にも、別の犯人がいたことになる。薬材と、キム・ユンシクの号牌を盗み、彼を陥れようとした犯人が。違うかね?」

インスはさも驚いたように眉を寄せ、言った。

「いったい誰がそんな真似を……。旬頭殿講で話すべきだったのでは?」

チョン博士の表情が、それまでとは一変して険しくなった。

「君に機会を与えたのだ!罪を悔い、恥を知り、そして、自白する勇気を出せと」

インスは薄く笑った。

「なぜ私が、自白をしなければならないのです?私は、何の罪も犯してはおりません」

この期に及んでも、まだしらを切るつもりなのだ。チョン博士はあきれ果てた眼差しでインスを見た。

「哀れな奴だ。今回の旬頭殿講で、君は何も学べていない。君が蔑んでいるあの泮村の少年の方が、少なくとも成均館の掌議よりずっとマシだな」

チョン博士は吐き捨てるようにそう言うと、背を向けた。インスは一礼すると、薬房を後にした。


*   *   *

ビョンチュンの目の前に、1両銀貨の束が重い音を立てて落ちてきた。

「病気の母親の面倒を見てやるつもりだったが、残念だ。泮人に渡すつもりだった金をくれてやる。今後はそれで何とかしろ」
「ち、掌議!」

ビョンチュンは真っ青な顔をして文机の向こうのインスにいざり寄った。

「何もかも私のせいです!二度としくじりませんから、今回だけ、今回だけお許しください。次は必ず……!」

インスはビョンチュンの襟首を掴むと、噛みつかんばかりに言った。

「貴様のせいで私が!この、ハ・インスが……!」

激しい怒りを剥き出しにしたインスの形相に、ビョンチュンは怯えきって言葉も出ない。

「いいか、二度と言わせるな。私は忍耐など持ちあわせていないのだ」

突き飛ばすようにして手を離すと、足音高く部屋を出て行く。その背中を涙に濡れた目で追いながら、ビョンチュンは低く呟いた。

「このまま私を捨てさせたりしませんからね、掌議……!」








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2012/09/14 Fri. 03:09 [edit]

category: 第十一話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

>ちびたさま

ごめんにょ~。
↓のコメント、宛名間違えてた……(^^ゞ失礼千万。

あまる #- | URL
2012/09/20 00:11 | edit

Re: ちゃむさま

ぐっさん(違)好きだー!最近時代劇ばっか見てるせいか、王様とか世子とか
やんごとないお立場に萌え(爆)
この王様も陰で孤独に頑張ってたんだろうなぁと思うとつい涙が。

巷はきな臭いことになってますが、ビジネスの世界ではお互い頼り合ってる大事なパートナーですもの。
おさまるとこにおさまって欲しいと切に思います。

あまる #- | URL
2012/09/19 01:38 | edit

きゃー!ぐっさーーん!じゃなくて王さまー!
あんたほんとーにナイスミドルや!(いや、王様にその口のきき方って)
あまるさん、ありがとー!

悪役が悪役然と、味方は味方然としていて単純な設定ではあるんですが、適材適所の役者さんでなくてはなかなかはまれません。

日本のドラマももう少し頑張って欲しいところではありますが、それぞれにいいところがあるからね。

国同士も花の四人のように遠からず近からずの距離でうまくいけばいいね。

ちびた #- | URL
2012/09/17 22:53 | edit

Re:ちゃむさま

以前ソンスのDVD貸した同僚の中には、インスが一番イケメンだと断言した人もいました(笑)
あの目ヂカラはたいしたもんです。
しかし彼は今のところ悪役やってるとこしか見たことないのがザンネン……。

あまる #- | URL
2012/09/15 07:36 | edit

チョン博士とインスの戦い。博士の優しい目が鋭く変わるとこが素敵。このドラマは脇を固めている役者さんも芸達者ですよね。インスの嫌な奴ぶりもいいわ~。以前チャングムを見てた時、敵役は美形がいいと聞いた話を実感したのでインス適役です。

ちゃむ #- | URL
2012/09/14 10:53 | edit

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