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第十一話 1 真犯人 

bandicam 2012-09-08 02-35-02-506
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ソンジュンが差し出した帳簿は、まず大司成が受け取り、王に手渡された。
王は、さっと頁をめくり、中を確かめると、尋ねた。

「この中に、此度の盗難事件の真犯人がいると?」
「成均館だけではありません。都で多発している盗難事件の、真犯人と言えます」
「どういうことか、説明してみよ」

ソンジュンはひとつ息をつくと、真っ直ぐに王を見た。

「禁乱廛権〈クムナンジョングォン〉がもたらす特定商人の横行により、物価は日々暴騰し、貧しい民は闇市で生計を立てるしかありません。それは民にとって、罪人となることを意味します。禁乱廛権は、無力で貧しい民に、盗賊になれと言っているも同然。───その帳簿は、商人から裏金を受け取った役人の記録です」

大司成が、はあっと大きく息を吸い込む。講堂は一瞬どよめいたが、王は開いた帳簿に静かに目を落とした。
ソンジュンは場が落ち着くのを待って、続けた。

「一部の裕福な者の肩を持つ悪法、禁乱廛権と、民よりも金が大事な役人、そして役人たちの背後にいる官僚が───」

ソンジュンの視線が、ゆっくりと王から儒生たちへと移る。それが、ユニのところでひたと止まった。
彼はユニを見つめたまま、言った。

「───この事件の真犯人です」

それは昨夜弓場で見たものとは違う、ユニの知る一番彼らしい目の光だった。そこには、一片の迷いもなかった。
ユニはふいに涙ぐみそうになって下を向いた。
真実が明らかにされたことももちろんだが、ソンジュンが彼本来の姿でそこに立っている、そのことがただ嬉しかった。

ヨンハが、隣に立つジェシンの手をつついた。広げた扇の陰で、声を潜めて言う。

「あいつは、お前と同類だな。馬鹿だよ、馬鹿。とんでもない大馬鹿」

ジェシンはヨンハを相手にはしなかったが、否定する気もないようだった。
王が頷いた。

「盗難事件の犯人は、禁乱廛権と官僚たちだと言うのだな」
「それは詭弁です、陛下」

インスの声が響き渡った。

「この事件は儒生キム・ユンシクが、金品に目がくらみ起こした犯罪に過ぎない───それ以上でも、それ以下でもありません。どうか、キム・ユンシクを退学させ、更に彼を庇うため陛下を欺こうとしたイ・ソンジュンにも罰を与え、陛下の権威をお示しください」

王の口元が、僅かに上がった。

「王の権威を示せ、か。よかろう」

ユニは、握り締めた手に ぎゅっと力を込めた。
帳簿は確かに、都で多発する盗難事件の根本を説明するものではある。だがそれだけでは、ユニが今回の成均館での事件の犯人ではないという証拠にはならないのだ。
このまま、掌議の思惑どおりになってしまうのかと諦めかけたその時。

「それで?俺は、どうすりゃいいんだ」

いきなり、そんな荒っぽい声が明倫堂の前庭から聞こえてきた。
庭に面した講堂の扉は、旬頭殿講のためすべて取り外されており、柱だけが残る広い露台のようになっている。
王宮付きの内侍や禁軍兵たちが並び控えているその庭先に、ふらりと現れたのはポクスだった。

「証人だとか証拠だとか、難しくてわかんねぇよ」

居心地の悪さがそうさせるのか、ポクスは不貞腐れたような顔をして、言った。途端に、大司成が声を張り上げる。

「な、何ですかこの不届き者は!すぐにそいつを叩き出しなさい!」

大司成の声に、書吏や禁軍兵が取り囲み、ポクスを取り押さえにかかる。彼はそれを振り払うと、身を投げ出すようにして地面にひれ伏した。

「俺が盗みました!成均館で盗みを働き、売り払ったのはこの俺です、陛下!」

何処かでこの兄の姿を見ているであろうポクトンを思ったのかもしれない。ジェシンの頬が歪んだ。

「罪を白状したからには、罰を受けねばならぬぞ。───怖くはないか」

ポクスにそう問う王の声は威厳に満ちていても、その表情は穏やかだった。だが地面に頭を擦り付けるようにしているポクスにはわからない。

「今頃になって、何故自白したのだ」

王の言葉に、ポクスがゆっくりと面を上げる。彼はユニやジェシンのいる方を見、答えた。

「そこにいる人たちが、取り返しのつかないことを俺にしたからです。俺は、泮村に住む泮人です。貧しく、何の力もなく、世間から半端者扱いされる泮人。俺自身も、その名の通り、半端に生きるつもりでした。適当に生きていけりゃ、それでいいって。けど、それが……その」

ポクスは、自身の中にあるものを言葉にするのに、ひどく苦労しているようだった。
もどかしさに苛立ち、「クソッ」と小さく漏らしたのを、耳聡く聞いた大司成が「なんですって?」と訊き返す。

「続けよ」

王が促すと、ポクスは懸命に言葉を探しながら、途切れ途切れに、だがはっきりと言った。

「あの人たちは、俺のことを、同じ人間として扱った。だから───俺も、もっとまっとうに、人間らしく生きてみたくなったんです。そうすれば、俺の背中を見て育つ弟も、きっと人間らしく生きてくれる」

そうだろ?とでも言うように、ポクスがジェシンを見上げた。口を真一文字に引き結んだジェシンは、ポクスに向かい、力強く頷いた。

「───旬頭殿講の結果を伝える」

王が、静かに口を開いた。







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2012/09/12 Wed. 00:47 [edit]

category: 第十一話

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