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第十話 10 役人の資格 

bandicam 2012-09-03 22-35-35-691
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その夜、ユンシクが中二房でヨンハら三人の前に差し出したのは、一冊の帳簿だった。その表紙を見るなり、ソンジュンは咎めるような視線をユンシクに向けた。
帳簿をめくり中を改めたヨンハは、思わず息を呑んだ。
二人の只事でない様子に、横からひったくるようにして帳簿に目を走らせたジェシンも、さっと顔色を変え「テムル、これ……」と絶句する。

「特定商人が後ろ盾となっている老論の役人に渡した、裏金の内訳です」
「……危険だと言ったのに、やはり持ち出してたのか」

ソンジュンが諦めともつかぬ声で言うと、ユンシクは俯き、小さくごめんと言った。
ヨンハは、感嘆と呆れの入り混じった溜息をつく。

「お前、随分大胆な真似したな」
「この帳簿の存在が……ポクスを自白するよう説得できない理由でもあるんです」

手にした帳簿を放り、ジェシンが声を荒げた。

「何言ってんだ!このまま、濡れ衣を着せられて退学になってもいいってのか?」
「わかりません。でも、一つだけ確かなのは、こんな帳簿がある限り、ポクスのような者は存在し続けるということです。自分の濡れ衣を晴らすために、ポクスを罪人呼ばわりするなんて……。そうすることに、いったいどんな意味があるのか、ぼくに、そんなことをする資格があるのか、よくわからなくなったんです」

ユンシクの言葉を聞きながら、ソンジュンがゆっくりと帳簿の頁をめくる。そこに目を落とす彼に、表情は無かった。
ユンシクは居たたまれなくなったのか、少し頭を冷やしてきます、と言って座を立ち、部屋を出ていった。

「やっぱりテムルの奴には、人を混乱させる才能があるな」

ヨンハが小さく息を吐いて呟くと、ジェシンがさっと立ち上がってユンシクの後を追った。
傍らには、無言のまま帳簿をめくり続けるソンジュンがいる。さてどうしたものかとヨンハは指先で額を軽く掻いた。

「おいカラン、あんまり気にするな。テムルは、事の重大さがわかってないんだ。衝動的に持ち出しちまっただけだよ。大物〈テムル〉なだけあって、肝が座ってる」

ソンジュンは頁をめくる手を止めた。だが、その目線は一点に据えられたままだ。

「そんなに───気を遣わないでください。僕は大丈夫です」

大丈夫、ってのは大抵、大丈夫じゃない奴が言うんだよ。

ヨンハは胸の内で呟き、中二房の天井を仰いだ。



「テムル!」

呼び止めると、ぼんやりと歩いていた背中が振り返った。
庭先に降りる月明かりが、ユンシクの白い頬を冴え冴えと照らしている。急に不安にかられたジェシンは、その小さな肩を両手で強く掴んだ。

「お前は、それでいいのか?その程度なのかよ。こんなことで諦めるくらいなら、なんで成均館に入ったんだ?」
「先輩」
「お前、お前は……!」

女人禁制の成均館で、女の身であることをひた隠し、男たちの中に混じって暮らす。それはまさに命懸けの行為だ。
そこまでしてこの成均館にいる理由はなんだったんだと。
こんなつまらない計略で貶められ、老論の阿呆どもを喜ばせるためではなかったはずだと。
言葉は、胸に噴き出さんばかりにあったが、あらゆるものを押し込めたようなユンシクの深い眼差しを見ていると、ジェシンは何も言えず、ただ、どういうつもりだ、と問うしかなかった。

「勝手ばかりして……すみません」

呟くように言って、頭を下げる。そのまま、尊経閣の方へと足を向け、去ってゆく背中。

「クソッ!」

どうにもできない苛立ちを吐き捨て、地面の土を蹴り上げたジェシンに、外に出てきたらしいヨンハが声を掛けた。

「大丈夫か?テムルのヤツ」
「───老論の野郎は?」
「少し一人で考えたいってさ。カランも悩みどころだよな。たとえ帳簿の中に名前はなくても、左議政の関与は明らかだ」

ジェシンは縁側に身を投げ出すようにして寝転がると、「まったくどいつもこいつも」と悪態をついた。

だから嫌なんだ、誰か他の人間と関わるのは。
一人なら、自分一人の問題なら、こんな風に何も出来ずに苛立つこともないのに。

ジェシンの横に腰掛けたヨンハが、訊くともなしに訊いた。

「どうするつもりかな、あの帳簿」
「決まってる。どんなに汚い真似をしても、父親は父親。自分がその息子だって事実は、どうしたって変えられない。だから厄介なんだよ、親子ってやつは」

どれだけ己に嫌気が差しても、自分自身からは逃れられないのと同じだ。
息子は、父の中に自分を見る。可能性も、限界も、自分の奥深くに眠る、知りたくもない部分さえ。

ジェシンは固く目を閉じた。


*   *   *


自分以外誰もいないと思っていた尊経閣に、声が響いた。

「旬頭殿講は明日だが、真犯人は書物の中に隠れているらしいな。それともまさか、罪を認めるつもりなのか?」

ユニは開いていた本から顔を上げた。書架の間に、手にした本をめくりながら歩くチョン博士の姿があった。

「私は無実です。もし真犯人を捜し出せなくても、私が潔白であることは変わりません」

チョン博士は足を止め、ユニを振り向いた。

「いや。キム・ユンシク、お前は有罪だ。どれだけ民の苦痛を理解できても、問題を解決する力のない役人は罪人と同じ。自分の潔白すらも証明できないような、無能な漢城府の権知、キム・ユンシクは有罪───さすれば、退学も当然といえるな」

チョン博士の言葉を認めるのは悔しかったが、もっともだと思った。
たとえ二日間といえど、王命を受け、自分は役人だった。それは紛れも無い事実だ。
ユニは頭を下げた。そのまま出て行こうとしたが、ふと振り返って、チョン博士を見た。

「女には、役人になる資格がないとか。でも先生、おかしなものですね。朝鮮はなんて有様ですか。役人の資格を持つ男たちが、国を作ってきたというのに」

チョン博士の口元が、微かに上がった。

「何だと?」

ユニは一礼すると、踵を返した。
漢城府の権知であったこの二日間でユニの胸に湧き上がり、ずっと消えずにいるもの。
言葉にするなら、それは、怒りだった。
この、女だというだけでユニを決して認めない博士に、ちくりと言ってやらずにはいられないほど、それは、ユニの中で深く、大きく根を張っていたのだった。



**************************************
あまるですどうもこんにちわ。

前回の更新からちょっと間が開いちゃってスイマセン(^^ゞ
といっても最近の日韓情勢が影響してるとかゆうことはありませんので、どうかご心配なく~(笑)
ここんとこ帰宅したらビール飲みつつちょこっとピグやって現実逃避後爆睡、という生活を続けておりました。
えーもーヘタレなワタクシのキャパをとっくに超えてる仕事量のせいですワ。ふっ。

そのかわりというわけではないですが、本日2話いっぺんにアップしました。
ちと長いですが、読んでいただければカムサハムニダ。





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2012/09/03 Mon. 22:40 [edit]

category: 第十話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: No title

>き*****の*りさま

ご無沙汰です~。コメントありがとうございます(^^)
なんだかお待たせしちゃったようでスミマセン。
名言ですか?(ノ´∀`*)テレ
嬉しいお言葉ありがとうです。

ソンスはドラマのセリフにもともと名言が多いので、
なかなかハードル高いです。頑張りマス。

あまる #- | URL
2012/09/05 09:49 | edit

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# | 
2012/09/04 10:46 | edit

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