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第十話 6 泮村 

bandicam 2012-08-14 03-06-20-780
***********************************************************************



「勧飯〈クォンバン〉!」

書吏の食事開始の合図と共に、儒生たちが一斉に匙を取る。進士食堂の、いつもの朝だ。
ヨンハは汁椀を一口含んだ途端、苦い薬湯でも飲んだかのように顔をしかめた。

「まったく酷いな。このク・ヨンハ様の味覚を舐めてるとしか思えない。鳩林〈クリム〉村の牛肉で出汁を取れと言ったのに……こんなもの飲めたもんじゃない」

ブツブツと文句を言うヨンハの隣で、ユンシクもあまり箸が進んでいなかった。といってもおそらく、ヨンハのように食事が口に合わないわけではなく(彼はとにかくモリモリと気持ちがいいくらいに何でもよく食べるのだ)、食べるより考えることに気を取られているのは、その眉間の皺を見ても明らかだった。

ソンジュンは白粥を匙で意味もなく掻き回しながら、向かいに座るユンシクを、いや正確に言うとユンシクの唇を、ちらりと盗み見た。

単に、食べ物を咀嚼しているだけの唇が、どうしてこうも自分の目を釘付けにするのか、彼にはさっぱりわからない。
昨夜の、女装したユンシクの姿を目の当たりにして以来、彼が何をしていても知らず知らずのうちにそこに目が行ってしまうのだ。

見ないようにしようとすればするほど、気になって仕方がない。ユンシクが近くにいると、そのことばかり考えてしまっている自分に気づき、彼は当惑した。自分の頭がおかしくなったとしか思えない。

ソンジュンは目で天を仰ぎ、小さく息を吐いた。そしてまた、ユンシクを見た。桃色の唇がふいにきゅっと引き結ばれたかと思うと、彼は箸を置き、すっくと立ち上がった。

「やっぱりぼく、先に泮村に行ってます」
「「座れ」」

ソンジュンとジェシンが、異口同音に言った。
二人の息があまりにぴったり合っていたためか、ヨンハが忍び笑いを漏らす。
ソンジュンの隣に座るジェシンは、箸を煮物に突き刺しながら、いつもの調子でユンシクに言った。

「全部食ってからにしろ。途中で腹減ったとか抜かしやがったら投げ飛ばすぞ」
「でも、急がないとあいつが泮村から出たら……昨日の一件で、雲従街には寄り付かないだろうし」

寄せた眉が、どこか頑固だった。旬頭殿講の期限は今日までである。彼にも焦りがあるのかもしれなかった。
気持ちはわかるが、おそらく今日は朝から動き通しになる。ちゃんと食べておかなければ体はもちろんのこと、頭だって働きはしない。
ソンジュンが口を開こうとした、そのときである。

「おやおや、何てことだ。結局泥棒になる気らしい」

汁物を口に運びつつ、素知らぬ顔でそう言ったのは、チョン博士だった。片手には匙、片手には本という博士らしい行儀の悪さだが、ざわついた食堂の隅からでも、その声は朗々としてよく通った。

「食堂で飯を食わずに、点数だけ稼ぐとは、円点泥棒だな。君の一食分の金があれば、惠民署で患者二人が重湯を2日食べられるというのに。ああ、つまり税金泥棒にもなるわけだ、いやはや」

チョン博士の言葉は、どんな脅しや説得よりも効果があった。ユンシクはあっけないほど素直に、すとんと腰を下ろした。
無言で白粥を口に押し込んだユンシクに、ヨンハが「泮村には行かないの?」と尋ねる。
彼はチョン博士の方を目を細くして睨みながら、言った。

「全部食べてから行きます」


そんな進士食堂でのやり取りを影で密かに聞いていたビョンチュンは、仕入れた情報を報告すべく、早速インスの元へと走った。

「掌議、泮村だそうですよ、泮村。奴らによると、真犯人は泮村に住み、昨日、雲従街で奴らと何かあったようです」

インスの部屋には、すでにコボンとカン・ムが控えていた。インスは茶器を置き、呟くように言った。

「泮村に雲従街か……」
「泮村なら、斎直と関係があるのでは?」

カン・ムの言葉に、「だろうな」とインスが頷く。
コボンは意味がわかっていないのか、ただ、ぼんやりと空〈くう〉を見つめるばかりだ。
ビョンチュンが尋ねた。

「しかし、成均館の斎直は、一人や二人ではありませんが、どこをどうやって捜せば?」
「見当はついてる」

言うと、インスは口の端に歪んだ笑みを滲ませた。



*   *   *


成均館のお膝元といえど、自分たち儒生の知る泮村はほんの一部に過ぎなかったということを、その日彼等は知った。
市場や外から通う儒生たちの下宿が集まる表通りに比べ、泮人たちが実際に生活圏としている地域は、さらに悲惨だった。

狭い土地に、ひしめき合うようにして立ち並ぶ藁葺き屋根の家々はどれも小さく、隣に建つ家畜小屋の方が余程広々として見えた。
あたりには汚物の臭いが漂い、真っ黒な蝿が大きな羽音をたてて、歩くのに難儀するほど無数に飛んでいる。

軒が触れ合うくらいに密集した家屋のせいで通りにはほとんど日が差さない。
なのに、人の数だけはこんなにいたのかというくらい多く、洗濯場にはぼろをまとった女たちが肩をくっつけあうようにしてしゃがみこみ、やはりぼろに向かい洗濯棒を打ち下ろしていた。

昼日中とはとても思えない暗さのせいだろうか。そこらじゅうに湿って淀んだ空気が凝り固まっているようで、少し歩くだけで息が詰まるような感じを覚えた。


表通りから掃き出されたすべてのものがここに溜まり、放置され、腐臭を放っている。
そのことに、ソンジュンは少なからず衝撃を受けていた。

ぽん、とヨンハがソンジュンの肩を軽く叩く。

「さて、ぼんやりしてる暇はないぞ。各自、人相描きは持ったな?手分けして聞き込み開始だ」

確かにヨンハの言うとおり、今は時間がなかった。
表情を引き締め、ソンジュン、ユンシク、ジェシン、ヨンハの四人は、それぞれ別の方角へと散っていった。

道行く人々を捕まえ、人相書きを広げては見覚えがないか尋ねる。
かなりの時間を費やしたが、成果は思うように上がらなかった。

知らないと首を振り、足早に去る村人もこれでもう何人目になるのか。振り返ると、人相描きを手にこちらに歩いてくるユンシクが見えた。
どうだった、と目で尋ねたが、向こうも進展がないのは同じらしく、疲れた表情で首を横に振った。

狭い通りですれ違った互いの右手が、軽くぶつかった。思わず振り返ると、驚いたような顔でこちらを見上げるユンシクと目があった。
変な気まずさが、二人の間に漂う。ソンジュンは無言でユンシクに背中を向けると、また歩き出した。

こんなときにいったい何をやってるんだと自分を叱咤する。
だが一瞬かすめたユンシクの手の感触はあまりに強烈だった。
まるで触れたその部分だけ熱を持っているかのように、じんじんと脈打っているのがわかる。

しっかりしろ、イ・ソンジュン。彼は同室生だ。ただの同室生……。

心の中で何度か呟いた言葉を、また呪文のように繰り返すソンジュンだった。





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2012/08/14 Tue. 03:07 [edit]

category: 第十話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

アラビン・ドビン・ハゲチャビン☆

《張禧嬪》のドラマっていったら3種類✿

その中の《妖婦 張禧嬪≫のほうだよ(^^♪
悪度いったらありゃしない~☆
悪知恵の働かせ方が《一休さん》のとんち並だよ☆

《張禧嬪》は見たことないけど~^^;

《トンイ》の張禧嬪はまた違った知的な感じだし・・・・。

みずたま #- | URL
2012/08/17 11:03 | edit

Re:みずたまさま

ビョンチュン、敵情視察はいいがちゃんと飯食ってんのか~?といらん心配してみたり。
チャンヒビン面白い?朝鮮3大悪女の一人ってやつだっけ。
今度捜して見てみよ~(^^)


あまる #- | URL
2012/08/16 00:05 | edit

Re: にゃん太さま

だはっ!ほ、褒め殺し?(照レ)
いやいや、嬉しいお言葉ありがとうです。(T_T)ダァ~
ご期待に添えるよう頑張りマス!

あ、映像は、全然見ていただいてイイですよ~(笑)
あまるここ違うやん!ってツッコミ入れながら見るのも、
なかなかマニアックな楽しみ方なんではと思いますので(^^)

あまる #- | URL
2012/08/15 23:59 | edit

桃色吐息☆?

ビョンチュンどの~✿
はや耳さんだこと~(;一_一)キャラが光ってる☆ペカ~☆

でもワタシの今一番お気に入りの《妖婦 チャンヒビン≫さまのほうがいじわる度がたか~い。
お~ほっほっほっほ~(笑)

いちごしろくま、こちらでは7じから11時までにいくと必ずゲット出来てます。ゲット率高し☆
みな、チープなモモタロウ・桃太郎(2会社あるんで商品名がカタカナ・漢字で違ってます☆)を
買うのかも(^^♪





みずたま #- | URL
2012/08/14 23:20 | edit

No title

私にとって
あまるさんの書いてくれたストーリーが全てです。
ここを読むだけで満足!
意地でも映像は見ないぞ!?

にゃん太 #- | URL
2012/08/14 16:55 | edit

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