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第十話 5 宴の名残り 

bandicam 2012-08-07 12-33-44-167

******************************************************************


「少しはじっとしてろよ。よく目が回らないな」

まるで檻の中の熊のようにうろうろと落ち着きなく歩き回るジェシンに、ヨンハが呆れた声を出した。
ジェシンの我慢もそろそろ限界のようだ。彼はヨンハに向かい、同じ問いをまた繰り返した。

「確かか?本当に、あいつらは無事に逃げたのか?」
「百聞は一見に如かずだ。───見ろ」

と言って、ヨンハは扇子でくい、とジェシンの顎を持ち上げ、通りの向こうを指し示した。
そこには、後ろ手を組み、やや大股でこちらに歩いてくるソンジュンと、その後をほとんど小走りになってついてくるユンシクの姿があった。

「これでお前も心配しなくて済むな」

一瞬、ほっと息をついたジェシンの肩に腕を回し、ヨンハはニヤニヤしながら言った。ジェシンは途端にむっつりとして、ヨンハの腕を振り払った。

「心配?誰が心配してるってんだ。戻るぞ」
「先輩!」

二人を見つけたユンシクが駆けてきて、あっと小さく声を上げる。

「怪我したんですね。大丈夫ですか?医者に見せた方が……」

ジェシンの、切れて血の滲んだ口元にユンシクが手を伸ばした。ジェシンは咄嗟にその指先を掴み、傷口に触れさせまいとした。が、うっかり握ってしまった か細い指に狼狽えたのだろう。まるで高価な壊れ物でも扱うようにびくつきながら、彼はユンシクの手を離した。

「お、大袈裟なんだよ。………男のくせに」

端で見ていたヨンハはおかしくてたまらない。何が男のくせに、だ。取ってつけたみたいに。
扇の影で必死に笑いを押し隠していたヨンハだったが、ふと、刺さるような視線を感じてそちらに目をやった。
そこには、少し離れて立つソンジュンがいた。おそらく自分では気付いていないのだろうが、彼は何やら只ならぬ気配を発して、ユンシクとジェシンをじっと見つめていた。

これはますます面白いことになってきた、とヨンハはもはやこみ上げる笑みを隠すことができず、上機嫌でジェシンとユンシクの間に割り込み、二人の肩に両腕を回した。

「さあさあ、続きは夜通し語るとして。おいテムル、首尾はどうだった?」

ユンシクが、袂から さっと帳簿を取り出す。お、と眉を上げたヨンハを見上げ、彼は白い歯を見せて悪戯っぽく笑った。



帳簿をぽんと放り、ヨンハが言った。

「真犯人がわかった」

夜更けの中二房。ソン・ヨンテ宅から持ち帰った帳簿には、犯人の名前は書かれていなかったはずだが、ヨンハには何か彼だけに読み取れるものがあるのだろうか。ユンシクが身を乗り出した。

「本当に?誰なんです?」
「泮人。これで解決だろ」

事も無げに答えるヨンハに、壁にもたれかかっていたジェシンが呆れ返ったように言う。

「バカか。泮人が何人いると思ってる」

ヨンハは閉じた扇子の先でジェシンを指し、言った。

「しかしだ。成均館に出入りしても怪しまれない泮人となると限られる」

少し考えて、ソンジュンが「斎直の家族ですか?」と問うと、ヨンハは「そのとおり」と頷いた。

「でも、むやみに疑うのはどうかと……」

あまり気分のいい話ではないのだろう。ユンシクが眉を寄せてそう言った。“優しくて綺麗なテムル庠儒”になついている斎直は多い。

「根拠ならちゃんとあるさ」

いきなり、ヨンハは身体を捻ると中二房の扉を開け放った。縁側に身を乗り出すようにしていた子供の影が、弾かれたように飛び上がる。悪戯が見つかったとでもいうように、そのまま ぱたぱたと逃げて行ってしまった。
外は暗いので顔まではわからなかったが、あの青い上下の服装は確かに、成均館の斎直のものだった。

「見たろ。身内の罪が発覚するかと不安だったんだな」

ソンジュンは密かに感心した。外にあの子供がいることに、いったいいつから気付いていたのだろう。
もう寝るぞ、とヨンハは僅かに表情を厳しくして、立ち上がった。

「明日は朝から泮村で、私の紫禁城を盗んだヤツを捜し出すんだ」

ヨンハが、扇子で手のひらを軽く打つ。その固い音が、室内に響いた。


*   *   *


清斎の裏手を歩きながら、インスが呟くように言う。

「ソン・ヨンテの屋敷にイ・ソンジュンがいた理由は何だと思う」
「真犯人の手掛かりがそこにあったのでは?」

ビョンチュンは、すかさず答えた。掌議の質問にはいち早く答えるのが有能さの証だと彼は信じて疑わない。

「では次に何をすべきかわかるな?」
「手段を問わず、全力で奴らの真犯人捜しを妨害します」

インスが振り返ってビョンチュンを見た。

「駄目だ。それでは手ぬるい」
「そうそう、真犯人なんてどうでもいいんです。私は全く興味ありません、掌議」

ビョンチュンの後ろから顔を出し、コボンが不揃いな歯を剥き出して笑った。だがすぐに、インスの冷えきった一瞥をくらい、たちまちしゅんとなる。

「またうっかり失言をしたようです、掌議……」

しっかりしろ、とビョンチュンが舌打ちし、コボンの頭を小突いた。

「真犯人は、我々が先に見つけるのだ」
「はい?」

揃って間の抜けた声を上げるビョンチュンとコボンに向かい、インスは低く言った。

「キム・ユンシクが犯人を捜し出せぬよう、手を回す。絶対に遅れをとるな」

前回の大射礼での失敗を考えると、ここで挽回しなければ後がない。ビョンチュンが力んだ表情で頷いたそのときである。

清斎へと続く門から、小さな影が飛び出してきて、インスの足元に勢い良くぶつかった。
地面に尻もちをついたのは、斎直の子供だった。インスを見上げるその顔は、暗がりでもそれとわかるほど青ざめ、震えていた。

「お?こんな夜中に何してるんだ?」

ビョンチュンが尋ねるが、子供は答えず、仔鹿のような敏捷な動きで立ち上がると、婢僕庁の方へと駆け出して行った。

「なんだ?盗み食いがバレたみたいな顔してたな」

彼等は、成均館で働く斎直の名前をいちいち記憶してはいなかった。ただ、朝に晩に、顔や足を清めるときや明かりを灯したりするときにちょろちょろしている顔だということくらいはわかった。

「中二房の方から来たようだったな……」

ほとんど独り言のように、インスが呟いた。


*   *   *


明かりの落ちた中二房で、ジェシンは首まで引き上げた布団を両手で握りしめ、身じろぎもせずに天井を見つめていた。
彼の左隣には、ユンシクが眠っている。普段から寝付きはいい方だが、今日は余程疲れていたのだろう。枕に頭をつけた途端、気を失うように すとんと寝入ってしまった。

ジェシンも勿論疲れてはいるはずなのだが、うっかりすると触れそうなくらい近くで、ユンシクが無防備に横たわっていると思うと、目が冴えて一向に眠れない。
ユンシクが寝返りを打つ度にびくりとして、ちょっとずつ右側へ枕と身体をずらし、距離をとる。そんなことを繰り返して、今やジェシンは、彼の右隣でこちらに背を向けて眠るソンジュンに、貼りつかんばかりになっていた。

「───先輩」

ぼそりと、ソンジュンの背中が言った。

「訊こうと思ってたんですが……この間から、何故急に寝場所を変えたんです?」

理由も告げず、強引に真ん中の寝床を陣取るようになったジェシンを、ソンジュンは不審に思っていたようだ。
だがどう思われようと、この寝相の悪いユンシクをソンジュンの隣に寝かせるわけにはいかなかった。
ジェシンはユンシクの方に背中を向けると、押し殺した声で、ソンジュンの肩のあたりに向かって凄んだ。

「俺の寝場所は、この部屋全部だ。だから黙って寝ろ」

嫁入り前の娘が、あんな風に、男にぴったりくっついて眠るなんて、冗談じゃない。
お堅いソンジュンといえど、男であることに変わりはない。あんなちっこくて柔らかいモノが傍にあったら、寝ぼけて変な気を起こさないとも限らない。
なにせ、この成均館という閉塞的な場所では、男同士が間違いを犯すこともしばしばなのだ。(もちろん発覚すれば即刻退学だが)
テムルの父親代わりとして、彼女と、彼女の秘密を守ると決めた。そのためなら、多少の睡眠不足など───

そのときである。ころん、と転がってきたユンシクが、ジェシンの背中にぴたりとくっついた。
ジェシンの心臓が跳ね上がった。溺れる者は藁をも掴む。この場合ジェシンが思わず掴んだのは、ソンジュンの腕だった。
先輩、と明らかに怯えの混じったソンジュンの声が尋ねる。

「老論の隣は、嫌だったのでは……?」

バカ、お前なんか誰が襲うか。気持ち悪いから怖がるな、阿呆。

最早寝たフリを決め込むしかないジェシンは、胸の内で散々悪態をつきながら、固く目を瞑った。





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2012/08/08 Wed. 14:54 [edit]

category: 第十話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: みずたまさま

でしょでしょ~ゲキ馬でしょ~(^^)
ただ一つの難点はお値段なのだが……でもアレで100円とかだったらみっともなく大人買いしてしまいそうなのでむしろ堪え性のないワタシには良かったのかもしれんです。
ちなみにワタクシは毎度お疲れちゃん自分用に購入。ってどんだけ疲れてんだか(^^ゞ

あまる #- | URL
2012/08/14 03:17 | edit

うましかて✿

いちごのしろくま食べたよ~(^O^)/

ゲキうま~\(^o^)/

ハー○ンダッツよりウマい。

7時~11時までとしろくま屋さんコラボで、定番商品なのかな?

《気分を↗↗、がんばれ!自分!≫用にノミネートしたいな~✿

みずたま #- | URL
2012/08/11 07:39 | edit

Re: みずたまさま

やっぱじぇらしーは恋愛ドラマのスパイスなのですよ。ほほ。これがなきゃですわ。

ウチの近所のセブンイレブン、いちごの白くま売り切れてたー!!!(号泣)
フツーのフルーツ白くまはあったんだけど違うんだ。オイラの欲しいのはいちごのやつなんだ。
ああ~無いとなると余計食べたいっス(T_T)
みずたましゃん、味わって食べてね~。お嬢ちゃんがたに見つからないように~(笑)

あまる #- | URL
2012/08/10 00:54 | edit

Re: ちびたさま

コロは最後までユニのおとーさんとゆーか兄ちゃんとゆーかな立場を貫きましたものねぇ……(T_T)
ほんのちょっとでいいから男な部分も見たかったな~とか。ちょっと強引に迫ってユニびっくり、みたいな。
ああ、でもそれはそれで報われないからやっぱ辛いか……うーんジレンマ。

あまる #- | URL
2012/08/10 00:47 | edit

Re: にゃん太さま

お布団ニギニギしてビクついてるコロが異様に可愛い……(笑)
中二房の夜の攻防は何度かありますが、やっぱこの回のコロがピカイチですわ~

あまる #- | URL
2012/08/10 00:39 | edit

オトメは度胸☆

男子~ズぢゃ、あの状況から帳簿もってこれんだろーよ(-"-)

トライアングル☆やきやき、もちもちな場面アラフォーのツボだべ☆
今回も現場からライブ中継ありがと~✿
あまるさんの打ちだす話はホントよ~くわかるよ~✿

あ!!
今晩《いちごのしろくま≫げっとしたよ~(^^ゞ
新潟の冷菓子《桃太郎 58円≫の隣にいらっしゃったわ~♪

後は、いかにひそひそこそこそ食べるかだわ~(;一_一)

みずたま #- | URL
2012/08/09 23:25 | edit

にゃん太様

の意見に1票!(笑)
10話超えたあたりから、もう、コロさんといい、イ・ソンジュンといい、ユニっこの天然ボケっぷりにコロコロ転がされまくる二人がおかしくてねえ。

また、あまるさんがいい感じの物語書いてくれるんですわ。
この、イ・ユチョンのエロ王子っぷりと、パク・ソンジュンの嫉妬感情のおたおた具合の描写といい、コロたんの娘を見守るおとっちゃまぶりったらたまりまへん~(爆!)

今回の画像がまた想像を掻き立てますわー(じゅるる)

あー、今回もええもん見せてもらいました!

ちびた #- | URL
2012/08/08 22:37 | edit

ここのシーン

大好き!
コロがさ~、かわいいんだも~ん!
何事にも一途なコロが、好き!
ジェシンのたたずまいもいいんだけど、
不器用ながら、ユンシクを守ろうとしているところが
いいんだな~e-266

にゃん太 #- | URL
2012/08/08 21:45 | edit

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