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第十話 2 脱出 

bandicam 2012-07-28 04-34-43-272
**********************************************


蔵を改める官軍兵たちを、インスが険しい顔つきで微動だにせずに見据えている。その隣に何気なく並んで、ヨンハが言った。

「泥棒は捕まったか?」

ふん、とインスは鼻で笑って、答えた。

「心配はいらない。奴は袋のネズミだ」

このインスの非情さを、彼の指導者としての能力の高さの現れと思っていたときも確かにあった。
だが今のヨンハは、ほんの一欠片でもいい。この男に情けというものがあったらと心底願わずにはいられなかった。
無駄なことだと、わかってはいたが。

一方。
外の慌ただしい物音に、座敷の商人たちもすっかり落ち着きをなくしていた。

「なんとしても捕まえてください、大監」

うわずった声でおろおろと訴えるソン・ヨンテに、ハ・ウギュは渋い顔で言った。

「そう狼狽えるな。我が官軍が信じられぬと言うのか?」
「我が家の蔵は、ただの蔵ではありません。あそこが暴かれれば、火傷をするのは私どもではなく、そちらですよ」
「……どういうことだ」

ソン・ヨンテは声を落とし、ほとんど囁くように言った。

「蔵には、闇市の品だけでなく、帳簿がしまってあります。その帳簿には、これまでの記録がしっかりと残っております」
「記録だと?」

微かに唇を震わせたヨンテの顔が、ウギュには、笑っているようにも見えた。それまでの媚びやへつらいの影に隠されていた、商人の狡猾さがむき出しになった瞬間だった。

「皆様に差し上げた───私どもの誠意でございますよ」


*   *   *

隠し部屋の中は、さして広くはなかった。中央の棚に、かなりの数の帳簿類が整然と積まれている。
二人はそのうちの幾つかを手に取り、それぞれに中を調べ始めた。ややあって、ユンシクが はっと息を飲むような気配があった。

「これ……!」

そう言ったまま、絶句する。見ると、彼が手にした帳簿には、ソン・ヨンテが献金したと思われる役人たちの名と、その金額の詳細が、びっしりと記されていた。
ユンシクは張り詰めた表情で帳簿を閉じた。そのまま持ち出そうとする手を、ソンジュンは咄嗟に掴んだ。

「駄目だ、危険すぎる」
「どのみち捕まれば危険なのは同じだろ」
「ここで何かあったら、たとえ陛下でも君を助けられない」

胃の腑を締め付けられるような思いで、ソンジュンはユンシクを見た。自分たちが、とてつもなく大きなものを相手にしていることを、今更のように実感したのだ。
ユンシクはまだ少し不満気な上目遣いでソンジュンを見ていたが、強く握り締められた手に、ソンジュンの真剣さを感じたのだろう。やがて小さく わかった、と言った。


*   *   *

商人たちの宴は、泥棒騒ぎのために早々にお開きとなった。花代を期待していた妓生たちは不満たらたらである。
通用門へと向かうエンエンとソムソムも、揃って唇を尖らせた。

「都中の商人が集まる宴だから、たっぷり稼げると思ったのに。がっかりね」
「ほんと、ついてないわ。いい思いをしたのはチョソン姐さんだけね」

聞き咎めて、少し前を歩いていたチョソンが振り返った。

「私が?なぜ?」
「キム・ユンシク様と、逢ったんでしょう?二人で楽しく過ごせました?」
「……知らないわ」

えぇ?とエンエンが目を丸くする。

「変ね。確かに門の前で会ったのに。中に入るのを手伝ってくれって言われたから、てっきり姐さんに逢いに来たのかと……」

チョソンは眉をひそめ、蔵の方へと視線を投げた。
そんな彼女たちの会話をたまたま物陰で聞いていたヨンハは、扇でぱしんと手のひらを打った。
ソンジュンはまだ捕まっていない。あのお坊ちゃんが、いったいどうやって上手く逃げたのかと思っていたが。

「そうか、テムルが来たんだな」

そうとわかれば、ぐずぐずしてはいられない。ヨンハは道袍の裾を翻し、足早に裏門へと向かった。




「あああ、なんてことだ。大変だ」

蔵に一歩足を踏み入れた途端、ソン・ヨンテは情けない声を上げた。床に散らばった商品には目もくれず、奥の開け放たれた扉を見るや、くたくたとその場にへたり込んだ。
賊は、いや、イ・ソンジュンはおそらく、老論と特定商人の癒着の証拠となるものを手に入れたのだ。
あの、王の蕩平策に毒された男が真実を知ればどうなるか───
インスは、官軍の指揮官を振り返った。

「本当に誰も見なかったのか?」
「男が、いました。妓生と一緒だったので、てっきり……」
「妓生と?」

ウギュが怒鳴った。

「馬鹿者が!犯人はそいつだ!裏門へ兵を回せ!男女の二人組を捕えるのだ!」
「はっ!」

指揮官が慌ただしく出ていくと、ウギュは忌々しげに頬を歪め、呻くようにインスに言った。

「お前も行け。そして奴を捕らえるのだ。取り逃せば、我ら老論に明日はないぞ」


蔵から最も近い裏門へは、たいした距離ではなかったが、そこへ辿り着くのは容易ではなかった。屋敷の方々に散っている官軍の目から身を隠すには、大きく広がった女人のチマは目立ちすぎた。
しかも着慣れないせいか、ユンシク自身もかなり動きづらそうだ。
彼が、相当な危険を冒してここへ来たのだということを、ソンジュンは改めて思った。

門まであと数歩、というところで、はっと声を飲み込んだユンシクが、慌てて物陰にソンジュンを押し込んだ。

「掌議だ。官軍もいる」

押し殺した声で、ユンシクが言った。唇を噛む彼の顔は、緊張のためか血の気を失っていた。
インスに気づかれたのかもしれない。砂利を踏む足音がこちらへ近づいてくる。ここまでかと思った、そのときだった。ぽんと肩を叩かれ、ソンジュンはぎょっとして振り向いた。

「……先輩」

そこにいたのは、ヨンハだった。相変わらず神出鬼没だ。だが肝を潰したのは向こうも同じだったらしい。
ソンジュンの隣にしゃがみ込んでいるユンシクを見て、あんぐりと口を開けている。

「テッ……テムルか?」

ユンシクはきまり悪げに視線を泳がせ、成り行きです、と言った。
流石のヨンハも、自分の目が信じられない、といった顔で、ぱちぱちと瞬きしたが、すぐに気を取り直すと、言った。

「ここは任せて、早く行け」

と、ヨンハのすぐ後ろから、大勢の妓生やその客たちの集団がぞろぞろと列をなしてこちらへ歩いてくるのが見えた。彼等を使って、官軍兵たちを足止めしてくれるつもりなのだろう。
ソンジュンは頷くと、ユンシクの手を引き、急いでそこを離れたのだった。


*   *   *


「どうした?芸達者なクマなんだろう?」

土塀の上に、おっかなびっくりといった表情で固まっているユンシクを見上げ、ソンジュンは少しばかり意地の悪い笑みを浮かべた。
インスと官軍から逃れて越えられそうな塀を見つけたはいいが、小柄なユンシクには少し厳しい高さだったようだ。
先に外へ降り立ったソンジュンを、恨めしげに見下ろしている。

「さっさと降りろ。追っ手が来る」
「わ、分かってるよっ!今降りるから………わ、わわっ!」

いざ飛び降りようとしては、怯えきった顔で塀にしがみつく。もう三度目だ。当初の緊張感はどこへやら、ソンジュンはおかしくなってくすりと笑った。

「ほら」

高いところに登って降りられなくなった子猫をあやすように、腕を伸ばし、小さく手招きする。
その仕草につられるように、ユンシクが口元をほころばせた。

まただ。

ソンジュンの胸が、ぎゅっと絞めつけられるような音をたてる。
月あかりに淡く浮かび上がるユンシクの輪郭。
薄衣をまとい、こちらを見下ろして微笑むその姿は、彼がいつだったか夢に見た天女そのものだ。

きれいだ、とただ素直にそう思った。ずっとこうして見ていられたら、と思うと同時に、そのまま天へ昇っていってしまいそうな不安にかられる。
なのに、この手で触れる勇気が、彼にはないのだ。

つと、伸ばした腕を下ろしてしまった。彼の手を取ろうとしていたユンシクが、眉根を寄せる。

「は………早く降りろ。これくらい、たいした高さじゃないだろう」

とても視線を合わせていられずに、ソンジュンは顔を背けた。

「あそこだ!急げ!」

塀の向うから官軍の声がし、ユンシクが切羽詰まった顔でソンジュンを見た。「早く!」彼は慌てて両手を伸ばし、塀の上からユンシクを抱き降ろした。
勢いのままに飛び込んできた身体を、支える。結果ユンシクを抱きしめる格好になってしまい、その柔らかい感触が、まともにソンジュンの全身に伝わってきた。一瞬、すべての思考が吹き飛び、頭が真っ白になる。彼の胸はもう破裂寸前だった。
ぎこちなく身体を離すと、戸惑っているような黒い瞳が、ソンジュンを見上げた。

ばたばたと走り寄る無数の足音に、はっと我に返る。こんなことをしている時と場合ではなかった。ソンジュンはユンシクの手を取り、駆け出した。






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2012/07/28 Sat. 04:44 [edit]

category: 第十話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

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# | 
2012/08/01 22:47 | edit

ちびたさま

衣装からするとコレですな~
ソウルの2ndツアーのときの。

http://www.youtube.com/watch?v=fXdfY3-rmFQ&feature=related

Phantomです。好きー(^^)
しかし少女時代のこれ、口の動きが恐ろしいくらいぴったり合ってるわ……すごすぎ(笑)

あまる #- | URL
2012/07/31 01:26 | edit

ぎゃーー

あまるさん!ティッシュ、ティッシュ!
いちいち、てのひらひらした動きがエロいっす・・・・orz

そんなあまるさんに、質問!

http://www.youtube.com/watch?v=KvKi5qossdE
このつべも結構エロいっすけど、曲が違うんですよ~
で、この元ネタというか、なんの歌歌ってるか知りたいんですが、如何せんライブなんで、さっぱりわかりまへん。

もしどなたかご存じなら教えてくださりませー
(うっとおしい上に、内容関係ないコメントで皆様申し訳ありましぇん)

http://www.youtube.com/watch?v=dUjJ13hjSg4

エロいユチョさんの後は、情けないユチョさんどぞ!。(若いなあ)
かっちょえくってエロいユチョさんも好きですが、私としてはこの情けなーい感じも結構好きです。

ちびた #- | URL
2012/07/30 22:29 | edit

Re: 手まねき

いや、まったく同感(笑)
ソンジュンの(とゆーよりここはあえてユチョの、と言いたい)あの手はエロいです!もーたまらんですっ!
ユチョンはもともとエロ番長ですので、役に滲み出てしまうのもいたしかたないかと。
そんなちびたさんにここ数回のつべのお返しとゆうわけでもないですが(笑)このエロユチョンを投下だ!

http://www.youtube.com/watch?v=HreItJ8bqH0

ぜひ鼻血ふいてきてください。

あまる #- | URL
2012/07/30 07:39 | edit

手まねき

あー、今回もうっとおしい感想で申し訳ないです(先に謝っておこう)

まずぅ、この最初にユニっこを手まねきしたイ・ソンジュン君子の手の動きがエロいです(爆!)
この手、というか指の動き見た瞬間『あんた、ほんとーに女の子と付き合ったことないんか!』と画面に向かって叫びそうになりました。
その位エロかったっす。(どこにくいついてんだか)

ところで、この回、ク・ヨンハもコロ先輩もイ・ソンジュンもいい仕事してるのに、ご褒美(ユニっこの妓生姿ね)をもらえなかったのはコロ先輩だけ。
どこまで行っても報われないなあ・・・
せめてどっかでなんとか拾ってあげて欲しいもんです。
もー、画面見るたびに、コロ先輩が不憫で不憫で。

ちびた #- | URL
2012/07/29 13:16 | edit

Re: ちゃむさま

ど~もです~。こちらではお初ですね~(^^)/

ワタクシも基本男女とも美形好みなんですが……
台湾版「花盛りの君たちへ」見たときは、ヒロインがあまりにもブサイク過ぎて逆に目が離せませんでした(爆)
(でも本国ではトップアイドルらしい)
ドラマって何がどう転ぶかわからないもんだと感じた一作です(^^ゞ



あまる #- | URL
2012/07/29 00:17 | edit

ヤッパリ

おじゃします。初コメント欄。常々思ってますがヒロインは花がなくっちやダメですね~ユンシクの妓生姿は秀逸でした。ソンジュンじゃなくても見とれる(*^-^)b恋愛ドラマはキャストで見るのやめちゃう美形好きなので私にとってこの作品はまさに珠玉の一作です。脇役だってクオリティ高いしo(^-^)o

ちゃむ #- | URL
2012/07/28 10:02 | edit

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