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第十話 1 危機 

bandicam 2012-07-26 10-13-14-550

第十話 1
*******************************************************


「蔵に泥棒が入ったと知らせがあった。誰も外に出るな。今からここを改める!」

庭園に、ものものしい姿の官軍兵たちが突如として雪崩れ込み、一方的にそう告げた。宴に興じていた客たちは皆驚き、口々に騒ぎ始めた。

「泥棒だって?いったいどういうことだ」
「どうして官軍が?」

呼んだのは私だ、と言ってそこに現れたのはインスである。

「どうやら、曲者が潜り込んだようでね。……随分遅かったな」

インスが、官軍の指揮官をちらりと見遣ると、指揮官は申し訳ありません、と頭を下げた。

「ここに向かう途中で、妙な邪魔が入りまして」
「まあいい。向こうの蔵の辺りだ。絶対に取り逃がすな」

はっ、と指揮官は一礼し、兵を先導して蔵へと向かった。

まずいことになったな、とヨンハは蔵の方に目をやり、唇を噛んだ。ソンジュンに官軍が来たことを知らせようにも、最早手立てがない。気付いて、上手く逃げてくれることを祈る他はなかった。


*   *   *


突然の物音に はっとして、ソンジュンは見入っていた帳簿から顔を上げた。
不覚だった。自分としたことが、誰かがここに近づく気配に全く気付かずにいたとは。
咄嗟に、近くにあった燭台を掴み取った。武器というには甚だ心許ないが、相手を殴りつけて逃げ出す隙くらいは作れるだろう。
振り向きざま、身構えた彼の手が、ぴたりと止まった。

一瞬、何が起きたのかわからなかった。

開いた扉から、外の灯火の光とともにこぼれ出てきたのは、およそこの黴臭い場所には似つかわしくない、桜色の薄衣だった。
それが、滑りこむように中へ入ってきたかと思うと、再び閉じられた扉に煽られ、ふわりと舞った。
あたりはまた暗くなったが、淡い桜色はまるで月の帳がそこに留まったかのように ぼうっと浮かんで見えた。

それが、女人の笠だと理解するまでに、ソンジュンは一時を要した。
花中陰逸。洒落者のヨンハならおそらくそう喩えるだろう。

頭上に乗せた女笠から、花びらのように垂らされた薄衣。
その奥にこそ、本当の花が隠れているのさ、カラン。

いや、ヨリム先輩が言っていたのは、笠ではなくチマだったか───。

雲が晴れたのか、明かり取りの窓からゆっくりと月の光が差し込んできた。振り返った女の顔が、今度ははっきりとソンジュンの目に映る。

彼は息を呑んだ。

黒曜石のような、冴えた光を湛えた大きな瞳。白く滑らかな頬、そして、物問いたげに微かに開いた、薔薇色の唇。
花などには喩えようもなかった。少なくとも、ソンジュンの知るどんな色鮮やかな花よりも彼女の美貌は艶やかで、その佇まいは静謐な美しさに満ちていた。

知っている。自分は確かに、この顔を知っている。だがあれは夢だ。夢に出てくる天女が目の前に現れるなんて、あり得ない。

目眩にも似た感覚が、ソンジュンの思考を根こそぎ奪っていった。その隙を突くかのように、女は たっと駆け寄ってきたかと思うと、いきなりソンジュンの胸に飛び込んできた。

(え……っ?)

反射的に身を引こうとしたソンジュンだったが、女は彼の背中に回した腕を更に引き寄せ、柔らかな身体を押し付けてくる。

「だ……誰だ?」

干枯らびた喉から、やっとの思いで言葉を引き摺り出した。

「ぼくだよ、ワン殿」

聞き慣れた声が、ソンジュンの耳元をくすぐった。

「芸はクマが演じ、金はワン殿が受け取る」

完全に思考停止していた頭が、驚くべき速度で回転を始める。
暗号のようなこの言葉、この声。思い当たる人間はただ一人だ。

「キム・ユンシク?!」

肩を掴み、引き剥がした。バツの悪そうな上目遣いで彼を見るその顔は天女などではなく、確かに彼の同室生、キム・ユンシクだった。
握りしめていた帳簿が、ばさりと床に落ちた。
打ちのめされたと言ってもいいほどの衝撃だった。
華奢な体つきと、その綺麗な顔立ち。女みたいだと思ったのは正直なところ一度や二度ではない。
だがこれは、この姿はまるで本当に……。

その時だった。蔵の外に敷き詰められた玉砂利が、騒々しく音をたてるのを彼は聞いた。無数の足音が、ソンジュンとユンシクのいるこの蔵に向かって近づいてくる。

「まずい……!」

ユンシクの表情に緊張が走った。未だ呆然としているソンジュンの胸を、細い腕が突き飛ばす。ソンジュンの長身が、あっけなく床板の上に転がった。
ユンシクが仰向けに倒れたソンジュンの上に覆い被さるのと、蔵の扉が派手な音をたてて開け放たれたのは、ほぼ同時だった。

どかどかとなだれ込んできた官軍の兵たちが、暗がりに目をこらす。いくつもの口が、あっけにとられたようにぽかんと開いた。
掲げた灯篭の向こうに彼らが見たものはおそらく、人目を避けていかがわしいことに励んでいる浮わついた両班の若様と尻軽妓生、そんなところだろう。

全身を硬直させたソンジュンのこめかみを、冷や汗が伝う。この緊張は、官軍に捕らえられるという恐怖のためか、それとも、触れそうなほど近くにある紅い唇と、伝わってくる体温のせいなのか、彼にはもうわからない。
鼻先をくすぐる、微かな白粉の匂い。薄い下衣越しに感じる、チマの中の細い脚───。
ごくり、とソンジュンの喉が鳴った。彼は目の前のふっくらとした紅い唇が、意を決したように固く引き結ばれるのを見た。

ユンシクはがばと上体を起こして役人たちを振り返ると、手近にあった売り物の木箱や真鍮の器を次々と彼らに向かって投げつけた。我に返った役人たちは、飛んでくる物から頭を庇いつつ、きまり悪げに外へと出ていった。
何と言っても相手は両班だ。お楽しみを邪魔して機嫌を損ねられたら、後でどんな仕返しをされることやら、彼ら下級役人は骨身に染みて知っているのだ。
当のユンシクが吐き気のするほど嫌っている一部の両班たちの振る舞いが、皮肉なことに今回ばかりは彼らの身を救ってくれたわけである。
 
辺りが、急に静かになった。
ぎこちなく身体を起こした二人は、しばし無言だった。

ソンジュンは言葉を失ったまま、ただユンシクを見ていた。目を奪われていた、と言った方が正しいかもしれない。自分でもどうしてと思うほど、彼の美しい姿から、一瞬たりとも視線を外すことができないのだ。
そんな彼とは逆に、ユンシクは一度ちらりと盗み見るようにソンジュンに視線を投げただけで、すぐに向こうを向いてしまった。さして汚れてもいない赤いチマを、しきりと手で払っている。
何か言わなければと思うのに、言葉が出てこない。
あまりにまじまじと見過ぎていたせいだろうか。ユンシクがいたたまれない様子で小さく息をつき、言った。

「……官軍が来るのが見えたから、知らせなきゃと思って」

ソンジュンはなおも黙っている。そうしようとしたわけではなく、声が出ないのだ。
もしや自分は、発声する方法を忘れてしまったのか?
ユンシクは自分に注がれる視線に困ったように、更に続けた。

「仕方なかったんだ。特定商人しか入れないって言うから」

唇を尖らせて言うその顔も、今はやけに愛らしい。

「本当に……芸達者なクマだな」

どうにかそれだけ口にして、ソンジュンはようやっと視界からユンシクを追い出すことができた。

「お陰で、折角見つけた帳簿が何処かへ行ってしまった」

帳簿を探すフリをして、ユンシクに背を向ける。彼は激しく高鳴る胸に、密かに手のひらを押し当てた。
一体どうしてしまったのか、妓生姿のユンシクが目の前に現れたその瞬間から、心臓が自分のものではないかのように、まるで言うことを聞かないのだ。

落ち着け、落ち着くんだイ・ソンジュン。キム・ユンシクは男じゃないか。同じ男相手に、なんでこんな。

いくら女人と見紛う程の容貌をしているといっても、ユンシクは立派な男だ。こんな風に動揺するのは、友人である彼に対して礼を失することだし、恥ずべきことだ。

ソンジュンは胸に手をあてたまま、深く息を吐き出した。感情を抑制する術なら、幼い頃から叩きこまれている。彼の場合、むしろ得意の範疇に入るといっていいだろう。

問題ない。相手は単なる同室生、キム・ユンシクだ。今までと何も変わらない。

「帳簿って、これ?」

背後の声に、振り返る。古びた帳簿を差し出すユンシクと、まともに視線がぶつかった。
どくん、とまた心臓が大きく跳ねた。

おかしい。こんなのは普通じゃない。

思い通りにならない自分の感情にうろたえながらも、彷徨う彼の視線は知らず、ある一点に吸い寄せられていた。
淡い紅色の、濡れたような艶を放つ───くちびる。

訳のわからない衝動が、身体の奥から突き上がってきた。ソンジュンはその正体不明の何かを、必死で抑えこまねばならなかった。
返事をすることさえままならず、無言のまま、帳簿を受け取ろうと手を伸ばす。
情けないことに、彼の心の動揺を指先は正直に伝えていた。

「───震えてる」

ユンシクが、さっと顔色を変えた。

「まさか、怪我したの?」

躊躇いのない白い手が、ソンジュンの左手をぎゅっと掴んだ。ほっそりした指が袖の内側に滑りこんでくる感覚に、ソンジュンは思わずユンシクの手を振り払った。
その拍子に、肘をしたたかに壁にぶつけてしまい、ソンジュンは顔をしかめた。
驚いたユンシクの目が、更に見開かれた。だが彼が凝視しているのはソンジュンではなく、彼が肘をぶつけた壁の方だ。
視線の先を追うとそこには、ぽっかりと開けた空間があった。板を貼り合わせた壁だとばかり思っていたそれは、巧みにそう見せかけた扉だったのである。
いわゆる“隠し部屋”だ。外からはそうとわからないように、隣の蔵と壁を接する部分にその部屋は作られていた。
こんな手の込んだことをしてまで、商人が隠さなければならないもの───。

ソンジュンとユンシクは、同時に互いの顔を見合わせた。



************************************************
あまるですどうもこんにちわ。

本日より試しにちょこっと表示方法を変えてみました。折り返し点だし、1周年だし、少し気分を変えるのもいいかなと思ったんですが……どうでしょ?
画像って、やっぱあった方がいいですか?(笑)



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2012/07/27 Fri. 00:06 [edit]

category: 第十話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: にゃん太さま

コチラでは画像は一切のっけてなかったですもんね~(笑)
確かに我ながら違うサイトのようだ……(^^ゞ

あの姿を見ても男と信じて疑ってないとこがなんとも鈍いとゆーか。
まーその頭の固いとこがソンジュンのカワエエとこですが。ぐひ

あまる #- | URL
2012/07/31 02:03 | edit

Re:ちびたさま

世間がオリンピックで盛り上がってますので、ワタクシも一人ソンス祭り?で盛り上がってマス(笑)
10話はホントに見所がいっぱいで、ワタクシ的にぢっくり書きたい部分もあちこちあって、他の回よりどんだけ長くなるかと今から恐々としております(^^ゞ

うっとおしいのはコチラも同じですわ~(笑)
毎日暑くてしんどいですけど、ヨロシクおつきあいくださいましぇ。

あまる #- | URL
2012/07/30 07:29 | edit

No title

一瞬、違うところに来たのかと思った!
でも、いい感じ~v-218

ソンジュン、こうであったら、という願いが
目の前に現れた、って感じ?
夢なら覚めないで
なんて思ったんだろうな~ ぐひ

にゃん太 #- | URL
2012/07/29 18:04 | edit

しろくまー、芸達者のくまー

いよいよ後半戦の悶えシーンですねえ。
この回、かくいう私も何度見なおしたことか(爆)

ユニっこの綺麗な事。ほんと眼福、眼福。
にしても、この回のイ・ソンジュン君子の心の動揺といい、かりそめとはいえ女の姿で立つことができたユニっこの女心といい、ほんといい演技してるわーとつくづく感心してしまいました。

この回は掌議とチョソンのもう一組の心の動きも抑え気味のええ感じで花を添えてますなあ。
あ、もう一組いたか、ク・ヨンハとコロ先輩のところも(え?それはちょっと違うって)

イ・ソンジュンがどういう思いだったのかをあまるさんの文章で読みたかったんですよー
もー、どんぴしゃ!でした!

あー ほんと悶え苦しむイ・ソンジュンはソンスの醍醐味!名言だわあ。
後半戦、もだえ苦しむ若者やナイスミドルがてんこ盛りかと思うと(鬼)
オリンピックなぞ見てる場合か!(いや、それはそれ)

あ、画像、私も皆様と一緒で入れてくれるととても喜びます。
お手数ですがどうぞよろしく!(でもどのシーン入れるか悩みどころですよねえ)

本日暑い日がつづいているというのに、うっとおしい感想で申し訳ないっす!

ちびた #- | URL
2012/07/29 13:06 | edit

Re: 追記

すいません。トラックバックっていまいちよくわかってなくて(^^ゞ
とりあえず記事のリンクってことでイイのかちら……。ううむ。

あまる #- | URL
2012/07/28 01:54 | edit

Re: snowwhiteさま

ハイ、ついでにテンプレも変更しました。白くま色です←しつこい

画像入れるのはちょっと迷いますね~。
特にウチみたいなブログだと、無意識に画像に頼っちゃって書き込みが足りなくなったりしそうだし。
かといってぱっと見、細かい字がずらずら並んでるだけなのも、来た人に「ウゲッ」とか言って回れ右されそうだし~とか(笑)

でもよくよく考えたら、ドラマの画像をそのまま使えるのはエセノベライズの特権だよね~とわけのわからんリクツで(爆)トップにだけ載せることにしました。
画像のチョイスがちと大変(笑)

あまる #- | URL
2012/07/28 01:49 | edit

Re:ちょぼさま

コメありがとうございます~(^^)

ワタシも大好きなんですよ~このシーン。個人的にソンスの中では1番と言ってもいいくらい。DVDでも何度見返したことか……。
このブログ始めるきっかけでもあったので、画像まで載っけてみたりして特別扱い(笑)
あのソンジュンのドキドキがちょっとでも伝わってると嬉しいデス(^^)

あまる #- | URL
2012/07/28 01:23 | edit

追記

トラバ送信しました!

snowwhite #bSUw9.7Y | URL
2012/07/27 13:38 | edit

テンプレも・・・

テンプレも変更されましたよね?涼しげでいいですね♪

画像があるとぱっとイメージが浮かびあがりますよね。
画像がないとあまるさんの文章が際立ち、画像があるとドラマのイメージが呼び起こされる、という感じでしょうか?

それにしてもユニはきちんと化粧をすると綺麗でしたね~!羨ましい~

snowwhite #bSUw9.7Y | URL
2012/07/27 13:37 | edit

No title

いつも楽しく読ませてもらっています♪
このシーン、ソンジュンのドキドキ感が伝わってきて大好きなシーンです!!
写真付きなのも素敵ですね♪

ちょぼ #- | URL
2012/07/27 09:29 | edit

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ユニの唇が気になるソンジュン・・・ さぁ、いよいよ、ソンジュンの気持ちが激しく揺れ動いていきます笑。萌え~笑。 なんちゃらかんちゃら言っても、『トキメキ☆成均館スキャ

『トキメキ☆成均館スキャンダル』に夢中。 | 2012/07/27 13:37

2017-10
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