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第九話 12 潜入 

その晩、ソン・ヨンテの屋敷では、都のおもだった特定商人たちが招かれ、盛大な宴が催されていた。
主賓として座敷の上座に座っているのは兵曹判書ハ・ウギュである。
傍らに座す嫡男、インスは、臨席する商人たちの賛辞の的だ。成均館の儒生だというだけでも充分なのに、その上彼はとりわけ優秀な学生しかなれないという掌議なのである。将来、父である兵曹判書と同等、もしくはそれ以上の権力者となることは既に約束されているといっていい。商人たちにとっては、今のうちからご機嫌をとっておくに越したことはない相手だった。

だがそんな中でたった一人、インスに全く関心を示さない者がいた。
座敷の入り口近くで伽耶琴を弾く、チョソンである。
口元に微笑を湛え、しなやかな指先で琴を奏でる彼女の姿は美しく、まるで当代きっての流行画家、シン・ユンボクの絵の中から抜け出てきたようだ。
だがその内側に氷のような冷たさがあることを、インスは嫌というほど知っている。
インスがいくら周囲に褒めそやされていようと、ちらとも視線を動かさず、伽耶琴を弾き続けていることがその証拠だ。妓生の仕事に忠実な振りをして、この自分を無視しているのだとインスには思えてならない。
琴の音色が見事であればあるほど、それを紡ぎだす姿が優美であればあるほど、彼女の拒絶が頑なであることを示しているようで、インスの苛立ちは募るのだった。


*   *   *

約束の時刻、貰冊房の件の地下室にヨンハとソンジュンはいなかった。ジェシンが見たのは、呆然と立ち尽くしているユンシクの背中と、机の上にはらりと置かれた手紙だった。
毟り取った置き手紙には、見慣れた文字。

“帳簿は取ってくる。心配しないで待っててくれ 
                          ヨリム”

「あいつら……!」

手紙を握り潰し、机に叩きつけたジェシンを、ユンシクの思い詰めたような瞳が見上げた。

「ここで待ってるだけなんてできません。原因はぼくです。また負い目を感じるのは嫌です」
「テムル!」

ぐずぐずしていては止められると思ったのだろう。ユンシクは一礼すると、さっと身を翻し、部屋を出ていった。

「───くそっ!」

ジェシンは苛々と頭を搔き毟り、その後を追った。


一方、こちらは既に大商人ソン・ヨンテの屋敷に到着していたヨンハとソンジュンである。
大勢の招待客や妓生たちで賑わう庭園は、無数の灯火に照らされ、昼間のように明るい。
門の脇に立つヨンハは、覚悟を決めたようにふっと息をついた。

「お前の言うとおりにしたはいいが……生きて戻れたとしても、テムルとコロに殺されるな」
「蔵には、一人で入る方が安全です。キム・ユンシクには瞬発力がなく、適任とは言えない」

はっきり言うね、とヨンハは小さく笑ってソンジュンを見た。そういう、ちょっとトロいところがあいつは可愛いのに。

「コロ先輩はいざというときの冷静さに欠ける」

それについては全く同感だ。ヨンハは頷いた。

「確かに。あいつが一番危なっかしい」
「ヨリム先輩は、ここで人の目を逸らしていてください。誰も蔵に近づかないよう注意を」
「わかった」

二人は目を合わせて頷くと、各々の持ち場へと散った。




外の空気を吸おうと出てきた中庭は、座敷に劣らず、酔った人々の喧騒と酒の匂いに満ちていた。
ふと、目の端にどことなく見覚えのある背格好の男を捉えたインスは、その男が宴会場とも厠とも違う方へ姿を消したことを不審に思い、眉を顰めた。

招待客で賑わう宴会場をざっと見渡す。そこにも一人、見覚えのある人物がいることに気づき、彼はそちらへと足を向けた。
地面に敷いた茣蓙の上で、酒盃を手に、はべらせた女たちをいつもの軽口で笑わせているのは、やはりク・ヨンハだった。

「なぜお前がここにいる」

ヨンハは妓生に酒を注がせながら、インスを振り仰いだ。よお、と手を挙げて答える。

「酒と女のあるところ、ク・ヨンハありだ。当然だろ?」
「特定商人以外は出入り禁止のはずだが」
「私は市場の商人たちに店を貸してる家主のお坊ちゃんだが、何か問題あるか?お前こそなんでここにいる?」

尋ねておきながらヨンハは、ああそうかと膝を叩いて片目を瞑った。

「特定商人たちと老論は、家族も同然だったな。忘れてたよ」
「一人で来たのか」
「ああ。こんなひどい宴に好き好んで来る奴が他にいるか?」

なるほど、とインスは薄く笑った。ある疑念が、確信へと変わったのだ。彼は黙って踵を返すと、再び座敷へと向かった。
奥に座る父親の傍らに跪き、低く耳打ちする。

「官軍を招集してください。───内密に」

何事かと眉を上げる父に、インスは冷ややかに言葉をついだ。

「義弟を教育してやらねばなりません」


*   *   *


角を曲がった先でユンシクを捕まえたジェシンは、その両肩を掴むと、言い聞かせるように言った。

「妙な意地を張るな。みんながお前を心配してるのがわからないのか?こういうときはおとなしく待ってろ」

危険に飛び込むのは男の役目だ。女のお前が、俺たちを差し置いて行く必要はない───

いっそそう言ってしまいたかった。この無鉄砲で意固地な女を止められるなら。
だがユンシクはいくらか青ざめた顔で、言い返した。

「ぼくだって同じです。先輩たちがぼくを心配してくれるように、ぼくも二人が心配なんです」
「なら俺が行く。だから───」

言いかけて、ジェシンは近づいてくる無数の足音に気づき、はっと口をつぐんだ。
松明を掲げた官軍兵たちの集団が、二列になって通りの向こうから歩いてくるのが見える。腰帯には太刀を差し、三叉槍を手にしている者もいるが、彼等に殺気立った様子はない。
息を詰めるようにして官軍の列が通り過ぎるのを待っていた二人は、すれ違いざま、彼等がぶつぶつと不平をこぼすのを聞いた。

「せっかくの非番が、無謀な野郎のせいで台無しだ」
「無謀?」
「ああ。商人の蔵を破りに入った奴がいるらしい。兵判ご臨席の宴会中だぞ。大胆というか馬鹿というか。まあ、屋敷はもう封鎖したらしいから、すぐに片付くだろうが」

官軍兵たちの背中を見送ってから、ジェシンはユンシクに向き直り、言った。

「事情が変わった。俺が官軍を足止めするから、お前は行ってあいつらに知らせろ。───できるな?」

ユンシクは真剣な眼差しで、頷いた。

「気をつけろよ」
「……コロ先輩も」

馬鹿、俺の心配なんかするな。
ジェシンは、ユンシクの顔を振り切るように、官軍を追って走りだした。
この辺りの抜け道は知り尽くしている。兵の列には、難なく追いついた。ざっと数を見積もる。時間稼ぎくらいなら、何とかなるだろう。
腹に力を込める。暗がりからゆっくりと姿を現した彼は、官軍の正面に立ち、その行く手を塞いだ。

「何だお前は」

訝る兵を見据え、拳を握り込んだ。

「───悪いが、こっから先は通すわけにはいかないんでね」

ほんの少しの辛抱だ、ムン・ジェシン。

にやりと笑って、彼は隊列の中に飛び込んでいった。


*   *   *


ユニは思案にくれていた。残してきたジェシンを心配しつつ、ソン・ヨンテの屋敷に来たはいいが、今夜は特定商人しか入れないと門番に突っぱねられ、ソンジュンたちを助けるどころか中にすら入れない有様だったのだ。

(どうしよう……あまり時間もないのに)

考えあぐねていると、色鮮やかなチマを揺らしながらしずしずと歩いてくる妓生たちの集団が目に入った。おそらく、今夜の宴に呼ばれたのだろう。中の一人がユニに気づき、声を上げた。

「あら、学士様じゃありませんか!こんなところでお会いできるなんて」

ユニはにっこりと微笑み、笠を軽く傾けて挨拶を返した。

「やあ、エンエン。久しぶりだね。ちょっと頼みがあるんだけど……いいかな?」
「学士様のお願いでしたら。何なりとおっしゃってくださいな」

とろけるような笑みを浮かべるエンエンに、僅かに罪悪感を感じつつも、ユニは助かった、と胸を撫で下ろした。


*   *   *

屋敷に8つある蔵のうち、ソンジュンが当たりをつけたのは北側にある一番大きな蔵だった。通用門にも近く、闇市から大量の品が頻繁に運び込まれても、ここなら都合がいいだろうと踏んだのだ。
幸いなことに、蔵には鍵がかかっていなかった。商人の家の蔵は、財産を守るというよりは売り物を置いておく目的で建てられているもののようだ。一歩中に入ると、棚には傘やら燭台やら陶器の壷やら、ありとあらゆる雑多な商品がひしめき合っていた。

品物は、何の分類も整理もされておらず、とりあえずまとめて突っ込んだ、という様子がありありと見て取れる。
間違いない。目指す帳簿はここにある。
ソンジュンは確信を持って、棚を捜し始めた。
すると意外にも、帳簿はあっさりと見つかった。表紙の擦り切れた、両手にすっぽり収まるほどの小さなそれは、他の商品に紛れるようにして、無造作に置いてあった。

ヨンハの言っていたことは全く正しかったのだ。同じ両班の若君だというのに、何故ああも世情に通じているのか不思議だったが、とにかくこれで、犯人への手掛かりが手に入った。
首尾良く行ったことに満足して、ソンジュンがふっと表情を緩めたそのとき。

入り口の扉が、音を立てて開いた。




***********************************************
あまるですどうもこんにちわ(^^)

梅雨が明けたはいいけど、暑いですねぇ……(^^ゞもーすでにバテバテ。
九州生まれのくせに暑さに極端に弱いワタクシ。家ではエアコンに頼りっきりで、
節電?エコ?それってナニ?とゆうバチあたりな生活を送っております。懺悔。
(まぁほとんど仕事で家にいない、っていうのがせめてもの救いですが。
夏休み中の小僧も補習でガッコ行ってるし……ゴニョゴニョ)

そうそう、こんなとこでナンですが、ちゃむ様。
フルーツサラダヨーグルト、食べてみましたよ~ん。フルーツがゴロゴロ入ってて
とってもゼータク!でもっておいちかった!(^^)プレーンヨーグルトの苦手なワタシでも
これなら食べられそうです~。ありがと~

サテ、この回で九話、終了です。ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回はちょっと手直しをするだけなので、明日にはアップできると思います。
でわでわ、皆さんも水分とって、熱中症には気をつけて~(^^)/




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2012/07/26 Thu. 01:50 [edit]

category: 第九話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

cm 6  tb 0 

コメント

Re: abiさま

はじめまして~
ご訪問&コメありがとうございます~

こんな地味っちいブログにもかかわらず、ずっとお越しいただいてたとは嬉しい限りです(^^)
しょっちゅうゆちょゆちょ言ってるウザイ管理人ですが(^^ゞご覧のとおり同じくユチョ&ソンス好きの皆様に甘えさせてもらってるようなブログですので、コメント等もどーかお気軽にどうぞ~。
ワタクシがとっても喜びますのでww

今後ともよろしくお願いします~(^^)/

あまる #- | URL
2012/07/27 08:28 | edit

はじめまして(*^^*)

はじめまして!ずっとこちらのブログを拝見し、あまるさんの文章力に惚れ込んでしまいました。今日は勇気を出して(笑)コメントしました。成均館のファンであり、ユチョン大好き!な私です。いよいよソンジュンが悶え苦しむ時期に入りますね♪今後も更新を楽しみにしています(*^^*)

abi #RSx9Hk0E | URL
2012/07/27 02:42 | edit

Re: ちびたさま

悶え苦しむソンジュンはソンスの醍醐味です(キッパリ)

日本全国どこもアッツイですね~(^^ゞ
食欲もハンパなく落ちちゃって、今のワタシの主食は白くまです。←あかんやろそれは
ビニールハウスで農作業とかやってるひとたちって、この暑い中どうしてんだろう。
ああ考えただけで倒れそうだ……ご苦労さまです。

未来創造堂さんきゅうです~。ユチョさんがトンの中でいぢられっ子だとゆうのが
よくわかる一コマですねっ(笑)ああカワユス……

あまる #- | URL
2012/07/27 00:29 | edit

Re: snowwhiteさま

今アップしてきました(笑)
なんせ一年もあっためていたブツなので、もう腐ってるかも……(^^ゞ

エアコンは身体に悪いとはわかっているんだけど~。暑くてすーぐ目が
覚めちゃって、ほとんど一晩中つけてるような状態です。あ、白状してしまった……

あまる #- | URL
2012/07/27 00:17 | edit

まーー!

いよいよ、例のシーンですわねーをほほ♪
さあ、イ・ソンジュン君子、もだえ苦しむがよくってよ!
をーっほっほっほっほ!(鬼)

と思えば、あっちにもこっちにも悶え苦しむ男どもが・・・
全く、恋って奴は、若いものの特権だあ!
苦しめ、苦しめ若人どもよ。をーっほっほっほ(鬼)

さて、北陸地方もやっぱり暑いですが、関東地方と比べると湿気が幾分少ないので
まだ過ごしやすいかも。
あまるさんも水分とってしろくま食べて体調崩さないでくださいねー。
お話もいよいよ前半の佳境ですもんねー

http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&NR=1&v=Hn5Igr-MD5Q
未来創造堂~ 後半部分。
納豆菌で発酵させた豆腐を無理やり食べさせられて涙目になるユチョさんが今回の目玉(爆)

あー、こういう動画探すのってたのしー!
で、人様に無理やり見せるのはもっと楽しい(やっぱり鬼)

ちびた #- | URL
2012/07/26 21:25 | edit

きゃっ

いよいよ、ソンジュン悶え第2章に入りますね☆

きゃーっと楽しみにしておりますwww


あ、関西人のわたしは節電真っ盛りの日々を過ごしておりますことよ~単にクーラーが苦手なだけですが・・・orz

snowwhite #bSUw9.7Y | URL
2012/07/26 15:04 | edit

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