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第九話 7 漢城府  

漢城府に着くまで、ソンジュンはほとんど無言だった。何か怒っているのかとも思ったが、話しかければ必要最小限ではあるが普通に返事は返ってくるので、そういう訳でもなさそうだった。
ユニは少し前を歩くソンジュンの背中を見つめながら、これでいいのだと思った。
今は、旬頭殿講のために行動を共にしているけれど、これが終われば、きっと一緒に何かをするということもなくなるだろう。
老論と南人という、党派や境遇の差はもちろんだが、何より自分はソンジュンに対して大きな嘘をついている。
この嘘を突き通すためには、いずれは断ち切ってしまわなければならない縁なのだ。
成均館を卒業すればきっと、二度と会うことはないから。

ずきりと、胸に鋭い痛みが走ったが、ユニはそれに気づかないふりをした。
漢城府の朱塗りの門は、もうすぐそこに見えていた。



取次の者によると、漢城府の官吏であるユン・ヒョングは、参軍たちの詰所にいるという。
細い廊下を抜け、少し緊張しながら詰所の扉に手を掛ける。
と、同じく扉を開けようとしたソンジュンの手が、ユニの手に触れた。思わずどきりとして、お互い、伸ばしていた手を引っ込める。男同士でそんな反応をするのは不自然だと気づいたのは、少し後になってからだった。

詰所の室内では、長机を真ん中に、参軍や数人の官軍兵たちが真剣な顔を突き合わせていた。

「成均館から漢城府権知として参りました。イ・ソンジュンとキム・ユンシクです」

ソンジュンがまずそう挨拶したが、意に介する者は誰もいない。あの、と更に声を掛けようとすると、一番手前にいた男が口元に指をあて「シッ!」と制した。
そして、机に広げた紙の上と、それを覗きこむ参軍たちを、交互に指で指し示す。

「お前はここ、お前はここだな。私はここだから、お前は、ここで待機だ」

余程重要な作戦会議でもしているのか。なら邪魔してはいけないと、戸口に立ったまま待つことにしたユニとソンジュンだったが。すぐにそれは、大きな思い違いであることを知る。

彼等が真面目くさった顔で遂行していた任務はなんということか、あみだくじだった。
ふと見ると、傍らには職務中、違法者たちから没収したらしい金品が積まれている。どうやら彼等はくじでもってそれを山分けしている最中であるらしかった。

これが役所の慣例というやつなのかもしれないが、それにしても。
くじの結果に一喜一憂する彼等の姿を見、ユニは気分が悪くなった。民に還元されるべき血税が、こんなふざけたやり方で役人の懐の中に入っている。一回の額は5文、10文と少額でも、一年続けば莫大な額だ。それがきちんと公的に使われれば、いったいどれだけのことができるか───。
たまらず、ユニは口を開いた。

「成均館の盗難事件を調査するために来ました。ご協力願えますか」

先程、あみだくじの陣頭指揮を執っていた男───おそらくはユン・ヒョングだろう───が、ようやく振り向き、肩をそびやかして二人の前に立った。

「大げさなこった。泥棒なんざ、成均館に限らず国中どこにでも出るだろう。君らの大事な一物を盗られやしないか心配なのか?なら、家に帰って母ちゃんのおっぱいでも飲んでろ。何なら、俺の乳をやってもいいぞ?うん?」

と、自分の胸に両手を添え、ユニとソンジュンに向かって突き出す。参軍たちから、どっと笑い声が上がった。
ユニの失望は大きかった。官軍といえば、民の安全と都の治安を守る、英雄にもなりうる職業だ。その官軍を率いる漢城府が、こんな下品で無礼な男たちの集団とは。

「私たちは」

鋭く切り込むようなソンジュンの声に、男たちの嘲笑がぴたりと止む。

「臨時職とはいえ、今は漢城府の役人です。あなた方も同じ役人なら、同僚に対し、礼を尽くすべきではありませんか」

ユニには、彼の静かな怒りが我が身のことのように伝わってきた。そうだった。彼は、ユニ以上に、こういう不正や無礼を絶対に許さない男だったのだ。
だが相手の無礼さはおそらく相当に年季が入っていると見え、多少のことではびくともしないようだった。態度を改めるどころか、ますますこちらを見下すような笑みを浮かべる。

「礼?はいはい。礼ね。ええ、もちろん尽くしますとも。ご立派な権知様」

漢城府では、その職務柄、相手を挑発する効果的な方法でも指南しているのかもしれない。
ヒョングのあまりのふてぶてしさに怒りを通り越し、ユニはつい、真剣にそう思ってしまった。


*   *   *


同じ頃、行き交う旅商人や売り子たちの声で賑わう雲従街を、ユニたちと同様漢城府の官服を着こみ、泰然と歩いているインスとその取り巻きたちがいた。
後ろ手を組み、両班特有の弛い歩調で通りの中央を練り歩くインスの不遜ともいえる様子は、身に着けているのが役人の服であっても変わることはない。比べて、ビョンチュンは落ち着きがなかった。彼は蝿のように手を擦り合わせながら、不安げな顔で言った。

「掌議、イ・ソンジュンとキム・ユンシクが、役人面して薬屋の主人を取り調べたらどうします?ユンシクの号牌を私が渡したと知れたら───」

じろりと一瞥してビョンチュンを黙らせてから、インスは言った。

「もう手は打ってある。薬屋の捜査どころか、奴は事件の情報など何も得られぬはずだ。これから、忙しくなるからな」

せいぜい権知の仕事に励め、とインスは暗い喜びをその目の底に光らせながら、片頬を上げた。


*   *   *

日昳の鐘が鳴った。ユニとソンジュンがここに来てから、さほど経ったわけではなかった。だがユニには、永遠に続くとも思えるような時間だった。
没収した金品の配分を終えた役人たちは、呆れ返ったことにヒョングを筆頭に全員、机にどっかりと足を乗せ、高いびきをかきはじめたのである。

ここへ来たのは無駄だったのかもしれない。自分たちには時間もないというのに。
どうするべきか迷ったユニがソンジュンを見上げると、彼は感情のこもらない目を寝入っている男たちに向けたまま、呟いた。

「これが役人の実態か」

ユニは返す言葉を思いつかず、視線を戻した。

「───陛下はこのことを承知で、僕らをここへ寄越されたのだろうか」

ソンジュンの声には、つい先刻ユニが感じ取った怒りは微塵もない。ただ深く考え込むような静けさだけが残っていた。

「わからない。だけど、もし陛下がぼくたちにこれを見せようとしたのだったら……」

旬頭殿講の課題が、全く別の意味を持って自分たちの上にのしかかってくる。
単なるコソ泥捜しで終わってはいけない。それでは答えを出したことにはならない。
そんな、王の声とともに。

「君の潔白を証明できたとしても、可は貰えないかもしれない」

ユニの考えていたことをそのまま、ソンジュンは口にした。
小さく頷いて、ユニはソンジュンを見た。ソンジュンも、ユニを見返す。微かに緊張の漂う彼の表情は、まるで鏡だとユニは思った。今の自分もきっと、同じ顔をしている。

昼寝をしていた男たちが、大きく伸びをしながら一人、二人と起き始めた。
椅子から立ち上がったユン・ヒョングは首をこきりと回すと、なめし皮のような顔に皺を寄せてユニとソンジュンを見た。

「では、お手並み拝見といきましょうか、権知様方」





*********************************************************
あまるですどうもこんにちわ。

職場がアツいです。いや皆が仕事に燃えてるとかじゃなくて、節電対策の話(笑)
エアコンの温度は下げられないし、蛍光灯は間引きされてるのでなんか暗いし、
PCの照度も暗めに設定してるのでこれがなかなか辛い……(^^ゞ
や~文句言っちゃイケナイのはわかってるんですけどね。

漢城府ではユニもソンジュンも怒り心頭ですが、今はシエスタタイムなんて
いうのを導入してる会社もあるようで。
うーん、時代が変わればジョーシキも変わるの典型ですにゃ~。



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2012/07/11 Wed. 15:16 [edit]

category: 第九話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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コメント

Re: 更新ありがと!

> にゃん太さま

うるっ……(T_T)
こんなとこでワタクシを泣かしてどーする気デスカ!(爆)
そーデスね……考えたら家族ですら、一生を通じて一緒に過ごすわけではないんだもの。
だから人との出会いは大切にしないと~っていつも思うんだけど。
どーもそのへんが雑なワタクシ。せめてメールと年賀状くらいはちゃんと返そうと反省。

あまる #- | URL
2012/07/12 20:11 | edit

Re: 去年は・・・

> snowwhiteさま

どよよ~ん(笑)そーなんですよね~。仕事の効率とか、多少なりとも落ちてんじゃねーかとか
思ったりもするんですが。ま、気分の問題といえばそれまでなんですけど。

ソンジュンの悶える姿がソンスの一番の見所だとワタクシは信じて疑いません(爆)
なのでバリバリ頑張ります~(^^)

あまる #- | URL
2012/07/12 20:05 | edit

Re: カッコーが鳴いてるよ☆

>みずたまさま

毎日ムシムシしますな~(^^ゞにしても最近の雨の降り方、尋常じゃないスね。
ワタシたちが子供の頃って、こんな怖くなるくらいの豪雨とか、なかったですもん。

しとしと降る雨の中でカッコーが鳴くなんて風情は、なかなか貴重かもです。(^^)

あまる #- | URL
2012/07/12 20:01 | edit

更新ありがと!

漢城府の様子がすっごく丁寧に描かれているね!あぁ、映像が目に浮かぶ・・・
(毎度同じコメでごめん)

人の出会いってさ・・・
別々に走っていた線が平行・交差しながら
いつかまた離れていく・・・
そんな繰り返しだと思う。
その時は濃密な時間を一緒に過ごし
そのうち、すっと遠退いていくんだ。


・・・だから何?といわれると困るけど、
>成均館を卒業すればきっと、二度と会うことはないから。
を読んで思ったことでした。

にゃん太 #- | URL
2012/07/12 13:50 | edit

去年は・・・

イチオー会社で働いておりましたので、あまるさんの状況が手に取るように分かります!
クーラーはなかなかつかないし、間引きされて暗いし、仕事をするうえで精神がどよよよーんと暗くなったものですorz

ともあれ、もう既にソンジュンは多少悶えていますが、今後、もっと悶え~に入ってきますね☆
ちょっと・・・いえ、大いに今後を楽しみにしております笑。

暑さ厳しい折、お体壊されませんように・・・

snowwhite #bSUw9.7Y | URL
2012/07/12 11:41 | edit

カッコーが鳴いてるよ☆

あっちぇーね~☀(こちらの方言;暑いの意)

今日は雨がしとしと降り少しだけひんやりしてます。

カッコーが元気よく鳴いてるのが聞こえます~w
(どんだけ田舎~?)

いま流行りの冷感グッツを権知様方にお届けしたいワ~♡
お二方ともヒートアップ間違いないですから~。
ファイティン☆

みずたま #- | URL
2012/07/12 11:17 | edit

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