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第五話 4 特訓 

ヤギョンは一人、東斎の前庭を歩きながら、灯りの消えた中二房に目をやった。
恩師キム・スンホン博士の娘、ユニ。
幼かったあの少女は、賢く、美しい娘に成長した。だが先見の明のあった師といえど、まさか想像だにしなかっただろう。我が娘が、男二人と同じ部屋で寝起きを共にしようとは。

どうしようもない状況ではあったのだろう、と思う。だがこれが正しいことだとは、ヤギョンにはどうしても思えない。
ただでさえ厳しい成均館での寄宿舎生活だ。講義や試験についていけず、脱落する者も少なくない。その上こんな秘密を抱え、毎晩、ろくに眠れもしなかっただろう。そんな神経をすり減らすような生活を、いつまでも続けられるはずがない。

中二房は静まり返っていて、物音一つ聞こえてはこない。だがこの障子の向こう側で、恩師の娘が一人、家族を想い、我が身を想い、寝付けずにいる。
彼女を追い込んだのは自分だとはいえ、ヤギョンの胸は痛んだ。

だが彼には知る由もなかった。
その晩、中二房の寄宿生たち───ユニ、ソンジュン、ジェシンの三人が三人とも、それぞれの想いを抱えて眠れずにいたことを。



人定の鐘が鳴ったのは、もう随分前だった。夜も更けたというのに、僅かな灯りを頼りに針仕事をしている母の手は、少しも休む気配がない。ユンシクは読んでいた本を閉じると、そっと母に声をかけた。

「もう休んだら?姉上のお陰で、薬代の心配もいらなくなったんだし………姉さんが見たら、また心配するよ」

母はつややかな藤色の反物から目を上げることなく、微笑んだ。

「おかしなものよね。娘が着ると思うと、かすんでた目も冴えてくる……疲れもね、感じないんだよ、本当に」
「それ、姉さんの服だったんだ」

どうりで、とユンシクは納得した。
針を動かす母の表情が、どことなく幸せそうに見えたのだ。

「考えてみたら、あの子には、一度もまともな服を着せてやれなかった。花盛りの年頃に、着てる服といったら………」

母はまた、自分を責めているのだろう。近頃ではめったに見なかった明るい顔が、いつものように沈み込むのを察して、ユンシクは母の手元を覗き込んだ。

「わあ、きれいな色だね。きっと、姉さんによく似合うよ」

女人の衣らしく華やかではあるが、春の田に咲く蓮華草のような、慎ましやかな薄紫。
そこらの妓生なんかよりずっときれいな姉には、よく映えるだろう。

ユンシクの言葉に、母は嬉しそうに目元に皺を寄せた。


*   *   *


翌日。
成均館の学生名簿を指で追いながら、王正祖は驚きを隠せない様子で聞き返した。

「まことに、あの緑鬢紅顔───キム・ユンシクが、キム・スンホンの息子なのか?」

黙ったまま答えに窮しているヤギョンに、領議政チェ・ジェゴンが眉をひそめ、早く答えよと促す。
キム・ユンシクがキム・スンホンの息子であることは間違いないが、あの緑鬢紅顔がそうかと問われると、違う。
さようにございます、と答えはしたものの、王に嘘をついているという事実はヤギョンを人知れず苦しめた。

「顔に似合わず、大した度胸だと思ったが。血は争えんな。あれは、父親譲りだったか」

王は声を上げて笑うと、言った。

「それは是非とも会わねば。父親が守り抜いた金縢之詞をその息子が探す。これも何かの因縁、いや、天命というべきかな」
「それはなりません」

即座に異を唱えたヤギョンを、王の目が眼鏡の下から意外そうに見上げた。

「ならぬと?それはどういうことだ」
「金縢之詞の捜索は、国を左右する重大任務です。キム・ユンシクはまだ幼い学生に過ぎません」
「では、そなたが助けてやればよい」
「それに、何よりも」

ヤギョンの背を、冷や汗がつたう。彼は落ち着きなく目をしばたかせながら、続けた。

「何よりも、本人は父親の過去を知りません」

王は深く息を吐き出すと、眼鏡を外した。王が黙っていたのは、実際にはほんの短い間だっただろう。だが、ヤギョンにとっては永遠とも思える時間だった。
やがて王は立ち上がると、言った。

「そなたはこれまで、一度も余に反対したことがない。故に今回は黙って、忠言に従うこととしよう」

ヤギョンは心から恐れ入って、深々と頭を下げた。

「それにしても、これはますます楽しみになってきたな。大射礼まで待ちきれぬぞ」

王の、まるで少年のように生き生きとした笑顔とは裏腹に、ヤギョンの胸中は複雑だった。


*   *   *

同じ頃、成均館。

「急いで練習だ。大射礼までもう間がない」

ソンジュンがユニに弓を差し出し、いつにも増して厳しい顔つきで、言った。
見かねたヘウォンが割って入る。

「おい、ユンシクはまだ具合が………」
「治っていないなら、チョン博士も帰らせはしない」

そうだろう?とソンジュンは確かめるようにユニを見た。
ユニにとっては、そもそも病気だったわけではないのだから、治るも治らないもない。ただ、女であることをチョン博士に知られてしまった、そのことに対する精神的な打撃が大きすぎて、大射礼だろうが何だろうが、考える余裕がないのだ。

「お前、そんなに優勝したいのかよ」
「やめとけ。テムルを見ろ。今にも死にそうな顔してるぞ」

ウタクとドヒョンが口々にユニを擁護する言葉も、彼女の耳には入らない。頭の中に響くのはチョン博士の冷え冷えとした声だけだ。

『誰にも知られてはならん』

今は、成均館の学生としてやるべきことをやらなければ。
誰にも、疑われないように。

ユニはソンジュンを見返した。

「わかった。やるよ」


特訓が始まった。わかっていたことだが、弓場のソンジュンは、ユニが初心者だからといって決して甘い顔はしなかった。
ユニに立ち方と弓の握り方を教えた後は、傍らにじっと立ち、満足に矢をつがえることすらできないユニに、何度も何度も同じ動作を繰り返させる。
弦を引き絞ることができずに、つがえては落ち、つがえては落ちる矢。
その度に、「もう一度!」と針を刺すようなソンジュンの鋭い声が、丕闡堂に響いた。

弓懸に通した親指が、擦れて酷く痛い。科挙を受け、王に成均館に入れと命じられてから今までのことが、ユニの脳裏に次々と浮かんでは消える。

『僕らの名前に、泥を塗るなよ』

そう言って、差し出した自分の号牌と一緒にユニの手をぎゅっと握りしめた、ユンシクの笑顔。
新榜礼の夜、課題を切り抜けた自分にヨリム先輩が手渡してくれた、濃紺の儒生服。
初めての講義の日に体験したのは、難解な講釈ではなく、不思議な奇術だった。だがそこで、ユニは論語の面白さと奥深さを改めて知ったのだ。

全て、罪だというのだろうか?死をもって償うべき罪だと───。

「もう一度!」

ソンジュンの声が、ユニの気持ちに追い打ちをかける。この矢はユニ自身だ。前に飛ばすことすらできない悔しさに、堪えようとしても涙が滲んでくる。
知らなかった。的が、こんなに遠いものだったなんて。

「あれじゃイジメだ」

少し離れた射台から二人を見ていたヘウォンが、頭を振った。

「何が何でも優勝したいんだろ。自分は万能だと王に示したいんだ」

色眼鏡をずり上げてウタクが言うと、凝り固まった肩を回しながら、ドヒョンが同情のこもった眼差しでユニを見遣る。

「酷いよな、まったく。血も涙もない野郎だよ」
「もう一度!」

弓場に容赦無く飛ぶソンジュンの声を聞いていたのは、彼ら三人だけではなかった。
塀を隔てた、大成殿前庭の大銀杏の上。
昨夜の睡眠不足を補うつもりが、結局ここでも眠れずに、ジェシンは薄目を開けた。

吹く風は、丕闡堂の二人の様子を彼に伝えつつ、青々とした銀杏の葉を涼しげに揺らしていった。




*************************************************************

あまるですあけましておめでとうございます(^^)
新年イッパツ目の更新です~。ワタシにしては早い!エライぞ!と自分で言ってみる。ビバ正月休み。
我が家は毎年、大晦日に一日がかりでがめ煮やら豚の角煮やら作りおきできるオカズをどっさり作っといて正月三が日はサボる、という、目的だけは実に正しいおせち料理なんですが。
食べざかり男子は侮れん。ほぼ一日半で食い尽くしやがった……(涙)
くそぅ、明日は三食雑煮じゃあ!と思ったら白菜も切れてた……やっぱ買い物行かなあかんのか。うう。←すっかり出不精

そんなわけで(?)本年もユチョにトンにソンスに励みますので(笑)よろしくお願いします~





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2012/01/03 Tue. 03:19 [edit]

category: 第五話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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第五話 5 反発 

「コロの奴は成均館の行事に参加するはずはないし、テムルは弓も握ったことがない初心者。結果は火を見るより明らかです」

西斎。インスの部屋では、部屋の主が黙々と弓の手入れをする横で、ビョンチュンが涙ぐましいほどの愛想笑いを浮かべている。

「何か戦略はあるんですか?掌議」

コボンの言う“戦略”とは、この場合大射礼で勝つためのものではない。あの生意気なイ・ソンジュンの鼻っ柱をへし折ってやるための戦略だ。

「───今回は、奴の望みどおりにしてやるつもりだ」

螺鈿細工の施された弓を丁寧に拭き上げながら、インスが言う。

「ええっ?まさか、奴らを優勝させようっていうんですか?」

思わず声を上げたコボンを、インスが手を止め、ちらりと一瞥する。またバカなことを、とビョンチュンがコボンの頭をはたいた。

「も、もちろん、そんなことはないとわかってますよ、ハイ」
「あいつの望みどおり、身をもって学ばせてやろうということだ。お前たちも、その準備だけはしておけ」

承知しました、とビョンチュンとコボンが頷き、互いの腕をがっちりと交差させた。
その横で、カン・ムがきりりと弓の弦を引き絞り、具合を確かめる。その目には、静かだが並々ならぬ闘志が漲っているのがわかる。
彼らを見遣りつつ、インスは薄く笑った。



近づく大射礼に向かい、動き始めたのは儒生たちばかりではなかった。大司成は王が来館するというので、例によって大わらわだ。王に出す食器にはちり一つ残さぬよう茶母に拭き上げさせ、王が座す椅子もわざわざ職人に言いつけて作らせるほどの念の入れようだった。

そんな大司成が最も拘ったのは、大射礼の華ともいえる妓生たちの選別だった。
普段は女人禁制の成均館だが、こういう行事となると話は別だ。彼女たちの唄や舞は、場を盛り上げるのに欠かせない。もちろん、容姿が美しければ言うことはない、というわけで、チョソンを筆頭に、都でも屈指の妓生を揃える牡丹閣が専属として選ばれた。

大司成は自分の仕事に大満足だ。何せ、牡丹閣からはあのチョソンが直々にお出ましになるというのだ。たとえこの国の王といえど簡単には会えまいといわれるあのチョソンが、である。これも人徳か、と大司成が勘違いしたのは言うまでもない。こうして彼はまた、中央官僚への夢を大きく膨らませたのだった。


「チョソン姐さんたら、すっかり惚れ込んじゃった感じね。あのきれいな学士様に」

お抱えのお針子を早速呼び寄せ、新しい衣装の生地選びに余念のないチョソンを扉の影から盗み見ながら、ソムソムがひっそりと微笑む。

「意地よ」

隣で同じくチョソンを見ていたエンエンが、唇を尖らせて言う。

「新榜礼以来、きれいな学士様から何の音沙汰も無いんだもの。そんなこと、チョソン姐さんには初めての経験じゃなくて?」

エンエンには、あの誇り高いチョソンが男に骨抜きにされることが、面白くないようである。惚れっぽい自分自身は男に振り回されても、チョソンがそうなるのは嫌なのだ。

「何言ってるの。よく見てみなさいな。あれが意地を張ってる顔に見える?」

鏡を覗き込むチョソンの表情は確かに、自尊心や駆け引きとは無縁のものだった。恋しい人に逢える日を待ちわびて、胸をときめかせているうぶな娘そのものだ。

あのチョソン姐さんが。やっぱりあり得ないわ、とエンエンは自分の目が信じられずに、ただ首を振るばかりだった。


*   *   *


いったいもう何度目になるのか、腕は痺れ、指の感覚がなくなってきても、ユニはただの一本も、矢を飛ばすことができないでいた。
簡単にやっているように見えても、男たちは相当な力でもって矢を放っているのだ。しかもそれを的に当てる?
非力な自分には到底無理な芸当に思えた。

ソンジュンは腕を組んだまま、練習を始めた時と寸分違わぬ姿勢でユニの手元を見据えている。
いっそ呆れて、お前には無理だと言ってくれればいいのに、彼はそんな素振りすら見せない。自分の顎からぽたぽたと落ちるのが涙なのか汗なのかも、ユニにはもうわからなかった。

弦を引き絞った。矢じりの先が、ぶるぶる震えている。肩と二の腕の肉が悲鳴を上げているのがわかる。
もう限界だ、と思ったとき、耳元で、バンッ、と何かが破裂するような音がして、ユニは思わず握っていた弓を落としてしまった。
頬に、焼けつくような痛みが走る。弾かれた弦が、ユニの顔を打ったのだ。押さえた手を見ると、血が滲んでいた。

「………もういやだ」

そう口にした瞬間、堰を切ったようにまた涙が溢れ出した。出来ないことが悔しい。だからって子供みたいに泣くのはもっと悔しい。なのに、堪えることができない。

「もういい。やめる」
「まだ始めてもいないだろう」

ソンジュンが静かに言った。
始めてもいない?もう何刻過ぎたかもわからないのに?

「もうたくさんだ。こんなこと、ぼくには無理なんだ」
「よく言えたもんだな、キム・ユンシク。君はまだ、まともに弓すら握れていない。いったいいつまで、借り物みたいに扱う気なんだ。なぜ真っ直ぐに的に向き合おうとしない?」

唇を噛み締めた。自分は汗ひとつかいていない顔で、何を偉そうに。
激しい怒りで、腸どころか、頭の中まで煮え滾った。

「おい、老論」

不意に、そんな声がした。いつからそこにいたのか、ジェシンが、ソンジュンに掴みかからんばかりの勢いでずかずかと射台に上がってきたのだ。

「お前の頭ん中は、どうすれば王に認められるか、それしかねぇのか?出世に権力、そんなもんにしか興味ねぇんだろ」

まさに老論そのものだな、とジェシンは吐き捨てるように言った。

「こいつは弓で殺されかけたんだぞ。怖がってんだろうが!」

ジェシンが、ユニを連れ出そうと腕を掴んだ。すかさず、ソンジュンがそれを阻む。二人に痛いくらいに腕を掴まれ、ユニは顔をしかめた。

「怖いからと逃げてしまっては、二度と弓を握れなくなります!」

睨み合うソンジュンとジェシンの間に、見えない火花が散った。

「立ち向かうしかないんだ、ユンシク。弁解や言い訳では、何も解決しない」

そう言ってユニを見るソンジュンが、薬房でのチョン博士の顔と重なる。ユニの中で、何かが音をたてて弾けた。
掴まれていた腕を思い切り振り払い、ユニはソンジュンを見返した。

「弁解だの言い訳だの、簡単に言うな!ぼくにとっては切実だったんだ。君が、呑気に弓の練習をしてたとき、ぼくはただ生きるのに必死だった。君は、左議政の坊ちゃまのイ・ソンジュン。ぼくは、自慢にもならない南人の家の出で、父の顔さえ覚えていない惨めな───キム・ユンシクなんだ」

他に道があったのなら教えてくれと言いたかった。チョン博士にも、目の前のイ・ソンジュンにも。

「だったら機会を掴め。大射礼で優勝すれば、出仕の道も開ける」
「………つまり、今回もぼくのためだって言いたいのか」

ユニはせせら笑った。いい加減もううんざりだ。哀れみかそれとも篤志家気取りか。この男は、そうまでして優越感に浸りたいのだろうか。

「確かに、君のお陰で人生が変わったよ。君は、自分なら世の中を変えられるって思ってるんだろ?世の中の仕組みなんて何も知らないお坊ちゃんのくせに。出仕?機会を掴め?君にとっては当たり前のことでも、もしぼくにそんな機会があるとしたら、それは───奇跡だ」

そう、天地がひっくり返りでもしない限り、起こり得ない奇跡。
そんなことを望むのは、雀が鳳凰になるのを待つくらい馬鹿げたことだ。それが、どうしてこの男にはわからないんだろう。どうしてキム・ユンシクなんてちっぽけな人間の腕を、無理矢理掴んで引っ張り上げようとするんだろう。

ソンジュンは黙っていた。一言も言い返さず、ただユニを見ていた。その真っ直ぐな眼差しさえもが腹立たしく、ユニは横を向いた。

「判ったら、二度とぼくに偉そうな口をきくな。───絞め殺したくなるから」

言い捨てて、ユニは射台を降りた。弓も、イ・ソンジュンの顔も、見ていたくなかった。

『お前は、ここにいるべき人間じゃない』

飛ばない矢が、頬を打った弓の弦が、遠い的が、ユニを嘲ってそう言っている気がする。
そんなことはわかってる。チョン博士に言われなくても、自分自身が一番よくわかってる。だけど───。

丕闡堂を出る門の前まで来たときだった。突然、ユニの背後でガラガラと何かが崩れ落ちるような音がした。振り返ると、天幕を張るのに立てられていた丸太の支柱が数本、折り重なるようにして倒れている。その下敷きになって、苦しげに顔を歪めている儒生を見た瞬間、ユニは凍りついた。

「ソンジュン!」

近くにいたドヒョンら、数人の儒生たちが血相を変えて駆け寄る。
ユニはその場に立ち尽くしたまま、丸太の下から助け出されるソンジュンを、ただ呆然と見ていることしかできなかった。






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2012/01/06 Fri. 02:58 [edit]

category: 第五話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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寒い夜だから… 

あまるですどうもこんにちは。

本日の更新は番外編です。
本編ではソンジュンが大変なことになってるっていうのにもー性懲りも無くっ!(^^ゞ

というわけで例によって折りたたみます。
心の準備が出来たかたは下のリンクからどうぞ~


******こっから私信です******

某H3さま(ってこんなんでわかっていただけるのだろうか(^^ゞ)
お体の具合はいかがですか?まだここ覗いてくれてるといいのですが。
何度か拍手コメいただいたのに、長らくお待たせしてスミマセン。
ようやく更新できましたので、楽しんでいただけると嬉しいです(^^)






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2012/01/10 Tue. 14:52 [edit]

category: 寒い夜だから…

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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第五話 6 ソンジュンの決意 

薬房で、赤黒く腫れ上がったソンジュンの右肩に包帯を巻き終えると、ヤギョンは深い息をついた。

「幸い、骨に異常はないようだ。しかし………大射礼は」

言い終わらぬうちに、大司成が慌ただしく薬房に飛び込んでくる。

「なんと!これぞまさしく青天の霹靂!ああ、できることなら私の肩と取り替えてあげたい!ジャンボク!食堂に伝えなさい!今後全ての汁物は牛骨汁にしろと!」

他の儒生たちの怪我や病気にはまるで無関心な大司成だが、こと左議政の息子となると身を捩っての大騒ぎだ。窓からこっそり薬房の様子を覗いていたドヒョン、ヘウォン、ウタクの3人も呆れ顔である。
痛みに顔をしかめながら服を着たソンジュンは、ヤギョンに尋ねた。

「大射礼には、出られますか」

心配は無用です、とすかさず大司成が口を挟む。

「準決勝まで、不戦勝にすればよろしい」

大司成の学習能力の無さに、ソンジュンは最早諦め顔だ。そういう特別待遇は嫌いだと、何度言ったら理解してくれるのか。

「チョン先生」

改めて訊くと、ヤギョンは厳しい顔つきで言った。

「大射礼は………難しいだろう」

その言葉に、唇を噛んだのは当のソンジュンだけではなかった。薬房の外、ドヒョンら3人とは少し離れた場所で中の様子を伺っていたユニの胸にもまた、複雑な想いが交錯していた。




「イ・ソンジュンを恨んでるヤツなんて大勢いるからな」

東斎の井戸端で足を洗いながら、ヘウォンが言った。
天幕の支柱を支える縄は、儒生たちの安全を考えて全て新しいものが使われていた。その一部に、明らかに刃物で断ち切られた跡があったことは、既に書吏が確認している。
単なる事故ではなく、誰かがソンジュンを狙って故意にやったのだということは明白だった。

「確かにな。お前じゃないのか?昔から良く思ってないんだろ?」

ウタクの言葉に、ヘウォンは心外だとでも言いたげに口を尖らせた。

「俺を何だと思ってる。それを言うならテムルだろ?あんなにしごかれちゃあ、殺したくもなるってもんだ。違うか?」

いきなり、ドヒョンが足を突っ込んでいた金ダライの水をヘウォンにひっかけた。

「うわっ!汚ねぇな!何すんだ!」

バカ、とドヒョンが顎で指し示した先には、沈みきった表情で俯くユニがいた。

「あ………別に、冗談だって、テムル。でも、お前だって誰だか気になるだろ?」

ユニは答えなかった。ソンジュンに怪我を負わせた犯人が気にならないわけではなかったが、ヘウォンの言うように、彼が怪我をしたのはまるで自分のせいのような気がしたからだ。

殺したくなる、なんて本気で思ってもいないことを、高ぶった感情に任せて言ってしまった直後に、あんなことが起こったからかもしれない。
ソンジュンが大射礼に出られないなら、これ以上弓を練習する必要もなくなる。自分にとっては好都合のはずなのに、気持ちは重くなるばかりだ。
ユニは、桶の水に顔を突っ込んだ。弓場で、痛みに歪んでいたソンジュンの顔が、頭から離れなかった。


*   *   *


はっ、とインスはさも可笑しそうに笑った。

「私が、誰かに命じて奴の肩に怪我を負わせたというのか?このハ・インスが、奴が優勝するのを恐れて?」
「ぶっちゃけた話、一番疑われてるのはお前だってことさ」

壁に掛かった洋弓をいじりながら、ヨンハが言った。この洋弓が見事なのは、派手に施された細工のせいで一見装飾品のように見えるが、実際にはちゃんと殺傷能力もあるというところだ。おそらくはその隣に飾られている数々の銃もそうだろう。
どういうわけか、現掌議の私室には物騒なものが多い。
インスは傍らのビョンチュンとコボンを顎でしゃくった。

「この二人にそんな度胸はないし、カン・ムはあんな姑息な手は使わない。そして私は、そこまで愚かではない。私は成均館の掌議だ。奴を痛めつけるのが目的なら、何も今まで待つ必要はない。イ・ソンジュンごとき、名簿から永久に削除するのも、半殺しにするのも、その気になれば簡単だ」

インスの台詞に、ヨンハは「おっかないな」と肩を竦めた。

「私の望みは、奴が自ら服従を申し出てくること。今はその機会を与えてやっているのだ」

掌議ハ・インスの脳裏には既に、自分の足元に跪くイ・ソンジュンの姿が見えているのかもしれない。
この部屋で一番物騒なのはこいつだったか、と改めて思うヨンハだった。


その夜遅く、丕闡堂の射台に一人じっと座り込んでいるソンジュンの姿があった。
左手に弓を携えてはいるが、だからといって何をするでもなく、ただぼんやりと空〈くう〉を見つめている。

天幕が風に煽られ、バタバタと音をたてた。墨を流し込んだような空を、速い雲が流れていく。
やがて彼は正面を見据えた。
その視線の先にはただ、赤く塗られた的だけがあった。


*   *   *


その日、明倫堂から戻ってきたユニは、中二房の前で久しぶりにスンドルの姿を見た。
彼は今にも泣き出しそうな顔で、主人に縋りついていた。

「やめてください、坊ちゃん!もう、ご自宅に連れて帰るつもりで来たのに………」

弓と矢筒を肩に掛け、縁側に出てきたソンジュンは、スンドルを全く無視し、靴を履いている。
例によってドヒョンら3人組が、ユニとは反対側から遠巻きに見ていたのだが、ついに見かねてヘウォンが助け舟を出した。

「おい、その怪我で練習する気なのか?お前正気か?」

その隙に、スンドルはソンジュンの肩から弓袋と矢筒を奪い取り、両腕にしっかりと抱え込んだ。
これは渡しませんからね、と思いつめた目で主人を見る。
小さく溜息をついたソンジュンと、ふと、目が合った。ユニは思わず、胸に抱えていた写本をぎゅっと握りしめた。

ソンジュンはスンドルが抱え込んだ袋からすらりと弓を引き抜くと、真っ直ぐにユニの方へと歩いてきた。
ユニの目を見つめたまま、右手に構えた弓の弦を引く。その左腕は、微かに震えていた。

「この左腕は、今日初めて弓を引く。君と同じだ。───僕は、この左腕で没技〈モルギ〉をやる」

没技。5本の矢を全て的の中心に当てる技だ。
ユニは耳を疑った。利き腕で成功させるのも難しい技なのに、それを左腕で?

ソンジュンの背後で、カッコつけやがって、と言うヘウォンの声が聞こえた。ドヒョンとウタクも開いた口が塞がらない、といった顔をしている。

「左腕で没技か。奇跡を待つほうがまだマシだ」

彼らの失笑混じりの言葉にも、ソンジュンの目は揺るがない。

「奇跡が必要なら、起こしてやる。もし僕が没技に成功したら、ユンシク、君も───もう一度弓を持て」

はっとした。あのとき確かに、ユニは言った。南人である自分が、機会を掴むのは奇跡だと。彼はその答えを、導きだそうとしているのだ。イ・ソンジュン、その人のやり方で。

「僕が大射礼に出るには、君が必要だ」

そう言って、丕闡堂へと歩き出す。スンドルが慌てて、その後を追った。
諦めない背中が、そこにあった。








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2012/01/12 Thu. 02:07 [edit]

category: 第五話

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第五話 7 ソンジュンの決意 

「なんですって?あたしのソンジュン様に、矢があたったの?」

ヒョウンが、大きな目を更にひん剥いてポドゥルに詰め寄った。むしろ驚いたのはポドゥルの方だ。
いつこの私がそんなことを言いました?と慌てて両手を左右に振る。

「そうじゃありませんよ!弓の練習中に、近くの木材がガラガラッっと倒れてきて、それが左議政の若様に………あの、ちょっと、お嬢様?」

こうしてはいられない、とヒョウンはポドゥルが話し終わるのを待たずに、さっさと立って部屋を出た。
向かうは、父ハ・ウギュの部屋である。

「左遷と見せかけ、王はチョン・ヤギョンを成均館へ送った。───なぜだ?そして王は夜な夜なチョン・ヤギョンに密命を下している───どんな?………わからん」

兵曹判書ハ・ウギュはぶつぶつと独り言を言いながら、室内を歩き回っていた。先日、左議政イ・ジョンムが密かに彼に見せたもの。それは、ここ数日の王への謁見記録だった。
そこに記されたチョン・ヤギョンの名は、彼を驚愕させた。その数ときたら、尋常ではなかったのだ。
全く日を置かずに、ともすれば昼夜二度に渡ってその名が記されている日もあった。
いったい何の用があって、王はああも繰り返しヤギョンを王宮に呼びつけているのか。
理由はわからない。だが、長年宮中の権謀術数の中に揉まれていると、その手の勘だけは鋭くなってくる。
何かが動き始めている。ハ・ウギュのそれは、確信と言ってもよかった。

とそこへ、編んだ髪を背中で跳ねさせながら、ヒョウンが部屋へと入ってきた。

「私、行くから」

娘は唐突に、父に告げた。

「どこへ?」
「成均館」
「なぜだ?」
「大射礼があるから」
「どういうことだ」

さっきから疑問詞しか口にしていない自分に気づき、ウギュはうんざりした。まるで自分が頭の悪い猿にでもなったような気分だ。
だが彼の愛娘は、父の渋い顔など全く意に介さず、無邪気に言った。

「掌議であるお兄様の家族として、練習に励む学生たちに差し入れを持っていくべきでしょ?」

何を言ってるんだ、とウギュは頭を振った。

「ただでさえ私は頭が混乱しているんだ。おかしなことを言わないでくれ」
「準備は私が全部するから」
「ダメだ。成均館は、女がむやみに入れる場所ではないのだ」

ヒョウンはたちまちぷーっ、と頬を膨らませ、父を上目遣いに睨んだ。

「まったくお前は、いったいいつになったら大人になるんだ。成均館は遊び場ではないのだぞ」

そう娘を戒めはしたものの、ふと、ある考えがウギュの脳裏に浮かんだ。
これは、案外いい口実かもしれない。王がこのところやけに成均館に執心している理由を、少しでも探る機会になりはしないか?

「あー待ちなさい、ヒョウン」

拗ねて足音高く部屋を出ていこうとしていた娘を、父は呼びとめた。

「お前が全部準備するのだな?」

ヒョウンは ぱっと表情を明るくして、「お父様!」と声を上げた。

「掌議の家族として、奉仕してやらんとな。さりげな~く………」

父の思惑など知る由もなく、ヒョウンは目をキラキラさせて頷いた。


*   *   *

右手に弓を持ち、握りの位置を確かめる。やはりかなりの違和感だ。左手だとあれだけしっくり馴染んでいたものが、手を変えただけで重さまで違うような気がする。
左手の親指を弦にかけ、ぐっと力を込めて引いてみた。弓を支える右肩に痛みが走り、彼はわずかに顔をしかめた。

───できるのか?こんな状態で。

一瞬、そんな不安が頭をよぎったが、彼はすぐにそれを振り払った。
決めたのだ。必ずやり遂げてみせると。
これまで、一度決意したことを途中で投げ出したことなどなかったじゃないか、と、ソンジュンは自分を叱咤した。
絶対に諦めるわけにはいかなかった。今回ばかりは。

『君にとっては当たり前のことでも、もしぼくにそんな機会があるとしたら、それは───奇跡だ』

溢れる才気を持ちながら、自分の未来に何の希望も持てずにいるキム・ユンシク。
腹立たしかった。もどかしさが募った。始める前から、どうして全てを諦めてしまうのか。
自分次第で、運命はいくらでも変えられる。決めるのは、自分自身の強い心だけなのに。
なぜそれを、わかろうとしない?自分を、信じようとしない───?

ソンジュンは矢を手に取り、弓を構えた。前方の的を見据え、弦を引き絞る。
思うように力が入らない。無理に肩を引くと、ぶるぶると腕が震えて、狙いが定まらなくなる。
利き腕でするときの半分も弦を引くことができないまま、指を離した。
矢は、的まで届くことすらできずに、力なく地面に落ちた。

隣の射台から、ぷっ、と吹き出すヘウォンたちの声が聞こえたが、ソンジュンは気にもとめなかった。
彼は次の矢を手に取った。弓を構え、引き絞る。
放った矢が的に届くことはなくとも、黙々とそれを繰り返した。


*   *   *

「子曰く、巧言令色鮮し仁」

明倫堂に、論語を唱和する儒生たちの声が響く。

「曾子曰く、吾日に我が身を三省す。人の為に謀りて忠ならざるか、朋友と交わりて信ならざるか、習わざるを伝えしか」

声に混じって、きりりと小さな音が聞こえる。ユニはふと、隣のソンジュンを見た。
皆と同じように唱和しながら、彼の横顔には微かな苦悶にも似たものが浮かんでいる。
理由は、彼の文机の下にあった。
ここ数日の彼は、片時も弓を離そうとしない。食事の時と寝ている時以外は、たとえ講義の最中でも、こうして左手で繰り返し弓を引き、腕を鍛えているのだ。

「子曰く、千乗の国を道むるに、事を敬みて信あり、用を節して人を愛し、民を使うに時を以てす」

論語の頁をめくるソンジュンの指には、弓懸がはめられている。その下に見える皮膚は擦り剥け、赤くただれていた。
彼はユニに何も言わない。講義が終われば、その足で丕闡堂へ向かい、的に向かって矢を射る。
指がそんな状態になっていても、まるで痛みを感じていないかのように、ただ一心に、的に向かう。
陽が落ち、弓場に誰もいなくなっても、彼は一人、弓を射続けた。
始めは彼を笑っていたヘウォンやウタクたちも、やがてそんなソンジュンの姿を、息を詰めて見守るようになっていった。

そしてついに。

ソンジュンの放った矢が、ダンッと力強い音をたてて的に突き刺さった。中心から大きく外れてはいたものの、確実に的を捉えることができたのだ。

「やったな!」

ドヒョンら3人組から、自然と拍手が起こる。
的までの距離の半分にも届かなかった最初に比べれば、驚くべき進歩だった。

「すげぇな、あいつ。この短期間で」

普段何かというとソンジュンに絡むヘウォンまでもが、感嘆の声を漏らしている。
ソンジュンの表情に、ようやくかすかな安堵の色が浮かんだ。

───届いたか。

弓場を望む大銀杏の上。
ジェシンは視線を手元に戻した。手にしているのは、親指ほどの小さな木片である。彼は小刀を握り直すと、器用にそれを削り始めた。







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2012/01/17 Tue. 22:39 [edit]

category: 第五話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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2012-01
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