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第三話 1 チョソン 

「申し訳ありません、大監。今宵は新榜礼で……」

 さっきまでの大騒ぎはどこへやら、エンエンが膝を折り、慎ましく言った。ソムソムも、ユニが立ち上がるのを助けてやりながら、にこやかに言う。

「成均館の学士様ですわ。悪ふざけが過ぎました。どうかお許しください」
「成均館の学士だと?」

 途端、兵曹判書が眉尻を釣り上げた。

「貴様!私を誰と心得るか!直ちに大司成に命じ、成均館を追い出してやるから、そう思え!」

 ユニは脱げた笠を手早く被り、乱れた着衣を整えると、平伏した。

「申し訳ございません。無礼を、どうかお許しください」

 そのまま立ち去ろうとして、ふと、目の端に肌もあらわな妓生を捉えた。そんな恥ずかしい格好を衆人に晒しているというのに、騒ぎ立てることもせず静かに座っている。だが大きく上下する胸元と、朱を掃いたような肌、そして背けた横顔が、彼女が今必死で恥辱に耐えていることを物語っていた。

 それはユニの、同じ女としての感情だったのかもしれない。とても放ってはおけなかった。
 手にしていた道袍を広げ、その妓生の肩にそっと掛けてやる。ふわりと肩を包まれ、彼女は驚いたようにユニを見上げた。色素の薄い、だが引き込まれるような瞳だ。同性のユニが見ても、目の覚めるような美貌だった。
 ユニは兵曹判書の前に再び手をつくと、言った。

「どなたかは存じませんが、失礼いたしました。この女人は、私が連れて行きます」
「何だと?」
「成均館の掌議は、兵曹判書の息子だとかで、父親の権力を笠に着て、無理難題を私たちに押し付けるのです。彼女を連れてこなければ、成均館から私を追い出すばかりか、立てなくなるまで袋叩きにしてやると脅されました」

 向かいの部屋の客たちから、忍び笑いが漏れる。それを背中に聞きながら、ユニは続けた。

「こうなった以上、成均館を追い出されるのはいたしかたありませんが、殴られるのは私も困るのです。この身体が動かないことには、新榜礼の悪習を国王陛下に訴えることができませんので」

 ユニの口から王の名が出た途端、兵曹判書はきまり悪げな咳払いをし、居心地悪そうに座りなおした。

「では、私はこれで失礼を」

 座ったままの妓生の肩を抱き、立たせてやる。彼女は素直にユニに従い、兵曹判書に背を向けた。

「おい、貴様!待て、これで済むと……」

 部屋を出ていく彼らを追いかけようと兵曹判書が立ち上がると、向かいの客が笑いを含んだ声で、言った。

「まあまあ、そう興奮なさらずに、大監。成均館の新榜礼は、多少のことは大目に見てやるのが昔からの習いですよ」
「そうですとも。ご子息の体面も、少しはお考えになっては?」
「さあ、そんなところにぼんやりお立ちにならずに。こちらへいらして、一杯お呑みになりませんか?」

 客の間から、どっと笑い声が上がる。彼らにとっては、これ以上ない程の余興だったに違いない。兵曹判書は悔し紛れに、手にした扇子を自分の腿に打ち付けた。

「あの小僧め、覚えていろ。だがしかしあの顔……確かに見覚えがあるのだが……はて、どこで会ったのだったか」



「姐さん!待って姐さん!」

 ぱたぱたと追い掛けてきたソムソムが、気遣わしげに眉を潜め、チョソンの顔を覗き込んだ。後から来たエンエンも、彼女を心配して声を掛ける。

「大丈夫ですか?」

 返事の代わりに柔らかく微笑んで、チョソンは傍らを歩く歳若い学士に向き直った。

「先ほどはお気遣いいただき、ありがとうございました。あの、お名前は何と……?」
「下衆野郎」
「え?」
「あんな男が官僚なんかやってるから、この国がダメになるんだ。あんな奴ら、まとめて漢江にぶちこんでやりたいよ、まったく!」

 綺麗な顔を紅潮させて、彼は本気で怒っていた。一瞬、呆気にとられたチョソンは、すぐにくすりと笑った。こんな爽やかな正義感を持った儒生が、まだ成均館にいたのかと嬉しくなったのだ。

「……ぼく、なんか今変なこと言った?」

 微笑むチョソンに、澄んだ目が尋ねる。まるで仔犬のような瞳だと、チョソンは思った。エンエンが含み笑いしながら、彼の腕をつつく。

「学士さまったら。折角チョソン姐さんに会えたのに、ここで夜を明かす気ですか?」
「えっ?チョソン?この人が……ほんとに?」

 長い睫毛をぱちぱちと瞬かせて、今度はびっくり顔だ。体面ばかりを気にする両班の男たちの中で、彼のような素直さは貴重だ。心の中をそのまま映して、くるくると変わるその表情に、チョソンはすっかり惹き込まれてしまった。

「ご存知なかったの?」
「いや、すごく綺麗なひとだから、もしかしてそうかなぁとは思ったんだけど、まさか本人だとは……。さっきは夢中で、何も考えてなかったよ」

 そう言って、照れたように笑う。美しさを褒められたことは何度もあるが、彼の口からするりと出た言葉は、あまりにも率直で、全く別のもののように聞こえた。長くこの世界にいると、自らの美貌をいっそ煩わしく感じることさえある。だがこのとき初めてチョソンは、親がくれた自分の容貌に心から感謝した。

 それでもきっと、まだ足りない。この人の前では、もっと美しく見える自分でありたい。

 チョソンはふわりと笑って、彼の手をとった。

「どうぞこちらへ。貴方様をこのままお返ししては、このチョソンの名がすたります」


* * *


 夜道を一人歩きながら、ソンジュンは密命の書を広げ、考え込んでいた。

「”花中君子は蓮の花なり。その中で最も満開の芙蓉花〈プヨンファ〉を折れ”」

花中君子は蓮。芙蓉花も蓮を指す言葉だ。では、最も満開の蓮とは何だ?
それまで読んだ、ありとあらゆる書物や詩歌の類を思い浮かべてみるが、わからない。指令が解けなければ遂行のしようがない。眉間に皺を寄せたまま立ち止まってしまった彼に、どんっ、と背後から抱きつく者がいた。

「坊ちゃん!」

 首を巡らすと、肩のあたりから丸い顔がひょっこりと覗いた。

「スンドルか。どうしてここにいる?」

 スンドルはソンジュンの手から密命をひったくるようにして取り上げ、言った。

「外で待ってたんですよ。新榜礼で坊ちゃんを退学になんかさせられませんからね。こんな紙と睨めっこしてたって、時間が過ぎていくだけですよ」
「いいから、それをよこせ」

 取り返そうとするが、スンドルはひょいとソンジュンの手を避け、密命の文字を目で追った。
 スンドルは下男には珍しく、ハングルだけでなく漢字も読める。自分の勉強の傍ら、ソンジュンが教えたのだ。彼らがまだ幼い頃、書物を読むソンジュンの手元をスンドルがいつも不思議そうに覗いていたからだが、その頃の癖がまだ抜けないらしい。儒学の教本以外で、坊ちゃんの見ているものなら何にでも興味を示すのは相変わらずだ。
 スンドルは ちちちち、と舌を鳴らして、言った。

「儒学は得意でしょうが、男女の道理に関しては坊ちゃんは素人でしょ。いいですか?普通、花ってのは女人を指すんです。蓮の花が満開ってことはつまり、今まさに年頃の娘がいるってことで───ああ、なるほど」

 にんまりと、スンドルの顔に笑みが広がる。

「“花を折る”ってのは要するにぃ……アレですよ。アレ」
「……?」

怪訝な顔のソンジュンに、スンドルはぐふふふ、と意味ありげに笑って、小さな目をぱちぱちさせた。


* * *


「無礼な!儒教の道徳を学ぶ者が、女人をたぶらかそうとするとは!───こんな感じでいいの?」

 兵曹判書の邸内、中庭に面した板の間。刺繍台の前できちんと両膝を揃えたヒョウンは、悪戯っぽい微笑を浮かべてビョンチュンに尋ねた。中庭に立つビョンチュンは やに下がった顔で手を叩いた。

「素晴らしい!もう完璧!お嬢様の演技は、そこらの芸人よりずっとお上手です!」
「あら……芸人ですか?」

 ビョンチュンの下手な褒め言葉に、ヒョウンがふと眉を顰める。

「あわわ、高貴なお嬢様を芸人などと比べるとは……この口め!この口め!」

 言いながら、自分の口を何度も引っ叩く。ヒョウンは口元に手をあて、くすくすと上品に笑った。

「お兄様のお友達には、面白い方がいらっしゃるのね」
「お友達?や、お友達だなんて、そんな……」
「おい、来るぞ!イ・ソンジュンだ!」

 見張り役のコボンが、慌てふためいて中庭に走り込んできた。ヒョウンは姿勢を正すと、ちらりとビョンチュンを見て、微笑んだ。
 ビョンチュンはとろけそうな顔で、もぞもぞと身体を捩った。

 その頃。兵曹判書宅の塀の影で、声を落とし、何事か言い交わす両班の若様と下男が、いた。

「───そんなはずはない」
「絶対ですって。芙蓉花ってのは、兵曹判書の娘のことですよ」
「ハ・インスが、自分の妹に僕を会わせるとは思えない。何か別の意味が隠されているはずだ」

 スンドルは痺れを切らしたように、塀の下に四つん這いになった。

「何をやってる」
「こんな夜更けに、いらっしゃいませって中に入れて貰えるはずないでしょ。塀を越えるんです!」

 なんてことを、と途端にたしなめ顔でスンドルを見下ろすソンジュン。

「これは、道に反する行為だ」

 四つん這いになったまま、スンドルは頭を振った。まったくうちの坊ちゃんときたら、生真面目にも程がある。道理に従って解決できるなら、それは密命とは言えないだろうに。

「だぁーもう、これじゃ夜が明けちまう!さあほら、乗って!早く!」


* * *


「まだ来ないの?もう真夜中よ!左議政の息子だからって何よ!来たらとっちめてやるんだから!」

 着ているものを次々と脱ぎながら、ヒョウンは喚き散らした。兄とその友人たちが企てた計略に、面白そうだと乗ってみたはいいが、標的となる相手が一向に現れないので、癇癪を起こしたのだ。

「でも、皆様外でお待ちに……」

 おどおどと口を開く下女のポドゥルに、ヒョウンが苛立ち紛れに蹴飛ばしたチマが飛ぶ。

「立たせとけばいいわ!いい薬よ!」

 下着姿になったヒョウンは、脇息にもたれかかると、文机に積んであった本を一冊抜き取り、ぱらぱらと捲った。

「まったく、現実の男ってどうしてああもブサイクなわけ?物語に出てくるようなステキな殿方は、いったいどこにいるのよ」

 言いながら、早くも物語の世界に浸り始めたのだろう。ごろんと寝転んで本格的に読む態勢になったヒョウンは、くふふふ、と楽しげに笑って、足でポドゥルをつついた。

「ちょっとだけ休むって伝えてきて」
「お嬢様……でも坊ちゃまが、絶対に板の間に座っていろって……」

 杏の実のような大きな目が、肩越しに きっとポドゥルを睨みつけた。

「早く行って!あいつらが私のこと捜しに来ちゃうでしょ!」
「でも……」

 なおも渋るポドゥルに、ヒョウンはバン、と本を閉じ、身体を起こした。

「私がこんな格好のまま、外に出てもいいの?」
「ええっ?そ、そんな、それはいけません!」
「だったら早く行きなさい!ほら!」

 根負けしたポドゥルが、あたふたと部屋を出ていく。ヒョウンはまた物語の本を開くと、くすくす笑いながら頁を捲った。





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2011/09/08 Thu. 02:12 [edit]

category: 第三話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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第三話 2 花王と蘭 

「イ・ソンジュンめ……いったい何をやってる!」

 手にした棍棒を苛々と地面に突き立てながら、ビョンチュン、コボン以下数名は、標的の到着を今か今かと待ち構えている。そこへ、おっかなびっくりやってきたのはヒョウンの下女、ポドゥルだった。

「あのぅ……お嬢様が、お疲れなので一刻ほど休むとおっしゃって」
「一刻?」

 ビョンチュンは一瞬頬を歪めたが、急に深刻な顔をして、ぶるっと身を震わせた。

「なら今のうちに厠に……」
「あ、じゃあ俺も」
「俺も!」

 皆余程我慢していたのか、我も我もと厠へ向かう。誰もいなくなったその中庭に、静かに足を踏み入れる者が一人。 イ・ソンジュンである。

 辺りの様子を伺いながら、ゆっくりとした足取りで中庭を横切った彼は、正面に建つ離れに掲げられた文字を見上げ、納得した。

(“芙蓉堂〈プヨンダン〉”……か。なるほど、この部屋の主が芙蓉花というわけか)

 スンドルの情報もなかなか侮れない。いったいどこで仕入れたのか知らないが、芙蓉花が兵曹判書の娘だという推理はどうやら当たっていたらしい。
 しかし、とソンジュンはまた考え込んだ。

 芙蓉花が何を意味するのかわかったところで、どうするというのか。あの密命の解釈がスンドルの言う通りだとしても、今を盛りの花を手折る気など、彼にはさらさら無い。第一、相手はあのハ・インスの妹だ。遊び慣れた妓生とはわけが違う。

 ソンジュンはようやく、事態を呑み込んだ。掌議にはそもそも、自分に密命を完遂させるつもりなど無いのだ。始めから絶対に出来ないとわかっている指令を出し、橋から突き落とした挙句成均館を追い出す───。
 新榜礼の密命など、単なる口実に過ぎない。

(これが強者と弱者の道理だと言いたいのか。成均館の掌議にしては、やることが幼稚過ぎる……)

 まあいい、とソンジュンは気を取り直した。こんな悪習は、王に上訴して即刻廃止すべきだ。そのためのきっかけくらいにはなるだろう。この程度の密命、つけ入る隙などいくらでもある。

 ソンジュンが密命の書を袂にしまい、引き返そうとしたそのとき。

「ポドゥル!そんなところでいつまでグズグズしてるのよ!」

 甲高い声とともに、芙蓉堂の扉が勢い良く開いた。思わず振り向いたソンジュンが見たのは、白い下着姿の女人───芙蓉花だ。

 相手もまさか、そこに見知らぬ男がいるとは思わなかったのだろう。扉を開けた姿勢のまま、ぽかんと口を開け、石のように動かない。
 先に我に返ったのは、ソンジュンだった。仮にも両班の令嬢だ。いつまでもそんなあられもない姿を晒させるわけにはいかなかった。
 彼は慌てて、芙蓉堂の縁側に身を乗り出し、扉を閉めた。床板に手をつき、ほーっ、と息を吐いたのも束の間。閉じたはずの扉が、またすぐに開いた。

「申し訳ない。僕は……」

 言いかけた唇に、そっと人差し指が押しあてられた。

「何もおっしゃらないで。───人が、来ます」


* * *

 ユニは、物珍しげに辺りを見回した。ここが、チョソンの私室だということはすぐにわかった。他の部屋で見たような派手な装飾は一切なく、調度品はどれも彼女の身につけている衣の色合いのように、落ち着いていて上品だ。
 壁際に掛けてある伽耶琴や、おそらく剣舞に使うのだろう、二振りの刀剣は手入れが行き届いていて、ユニは好感を持った。どんな職業であれ、その人が使う道具は、主の仕事に対する姿勢を物語ってくれる。自分が硯と筆を大事にするのと同じ気持ちを、きっと彼女も持っている。そう思うと、目の前の美女に急に親近感が湧いた。

 チョソンは優美な指先で酒を注ぐと、静かに微笑んで、言った。

「さ、お話しください。私は、何をすればよろしいのですか?」
「あ……それが、その……」

 鳶色の瞳にじっと見つめられ、ユニは言いよどんだ。いきなり下着をくれなんて、失礼にも程がある。逆の立場だったら、相手の正気を疑うだろう。
 どう言ったものかと考えあぐねていると、先に切り出された。

「私の絹の下着に、情を込めてこい……そんなところでは?」

 ユニが黙って頷くと、チョソンはくすりと笑った。

「では、後はただ、私にそう頼むだけです」

 衣擦れの音がした。気付くと、チョソンの目鼻立ちの整った顔が間近にあった。同性だというのに、胸がどきどきするのはどういうわけだろう。こんな風に男の格好ばかりしていると、心まで男に近づいていくのだろうか?

 チョソンは薄く紅をひいた口元をすぼめると、ふうっ、とユニの鼻先に息を吹きかけた。ユニの顔に残っていた粉が、白く舞った。

───ダメ。これ以上は、無理。

 ユニはすっくと立ち上がり、チョソンの姿を視界から追い出した。いくらなんでも、あっちの方まで男の真似なんてできるわけがない。思わず雰囲気に飲まれそうになった自分に驚きながら、ユニは言った。

「今日は、これで失礼する」
「……もしや私が、何か失礼でも?」
「いや、君のせいではない。結局こうなってしまっては、ぼくも兵曹判書と何も変わらない。どうか、気を悪くしないで欲しい。無礼なのは、ぼくの方なんだ」

 自分で言いながら、気付いた。同じ女であれば尚更、こんなことはするべきではない。彼女を貶めることは、自分自身を貶めるのと同じことだ。

「私の下着を持ち帰らなければ、新榜礼で失格になるのでしょう?」

 よろしいのですか?と問うチョソンを振り返り、眉をひそめたその顔に微笑みかけた。

「自分でなんとかするよ。あんな悪ふざけのために、女性を辱めることはできない。───男として」

 立ち去ろうと背を向けたユニに、チョソンは言った。

「では私は、貴方様のそのお心をいただきます。貴方様は、私の下着だけをお持ちください」

 傍らの戸棚から、きれいに折り畳んだ下着を取り出す。床に置いたそれを、まるで高貴な人への献上品のように両手を添え、慎ましく差し出しながら、彼女は言った。

「これは、心を寄せた御方に差し上げる私の気持ちです」

 胸を突かれた。ユニは、チョソンの正面に座ると、神妙な面持ちでその下着を広げた。薄桃色の地に、牡丹の花の刺繍。美しいが、下着であることに変わりはない。こんなものを男たちの目に晒される恥ずかしさは、ユニには痛いほどわかる。だがそれを、彼女は自分にくれるというのだ。
 ユニは、傍らにあった硯を引き寄せ、筆をとった。

「これは、恥ずべきものではない。今夜の思い出として、大切にしよう」

 手早く筆を滑らせ、ユニはそこに一つの絵を描き上げた。丁度、百花の王である牡丹を、密やかに咲く蘭が見上げる格好である。咲く季節も春と秋で反対なら、ふたつの花の佇まいも全く逆だ。艶やかに咲き誇る牡丹に対し、剣のように鋭く空(くう)を刺す葉の間から、そっと覗く小さな蘭の花。
 現実には在り得ない構図だが、何故かユニは、この場に最もふさわしい絵だと思えた。

 絹の下着は、たちまちのうちに一枚の画布へと姿を変えた。チョソンは何のてらいもない満面の笑みを浮かべ、ユニを見つめた。それまでの妖艶さが嘘のような、まるで少女のような笑顔だ。ユニはそんな彼女を、今夜見た中で一番美しいと思った。

「では私は、お礼に詩を詠みます」

 ユニの手からそっと筆を受け取って、彼女はもう一度、微笑んだ。

* * *

 厠から戻ってきたビョンチュンは、苛々と身体を揺すりながら辺りを見回した。

「イ・ソンジュンはどこをほっつき歩いてるんだ?近くに来てたってのはほんとに確かか?」
「間違いないって。いるだけで周りが華やぐほどの男前なんて、そうはいないだろ」

 いひひ、と不揃いの歯を剥き出して、コボンが笑う。

「じゃなぜ来ない?!ずっとここで待って……って、しまった!」

 ビョンチュンは さっ、と顔色を変え、慌てふためいて芙蓉堂へと走りだした。

 ヒョウンが私室として使っている芙蓉堂にはまだ、障子越しに淡い光が漏れていた。その扉に、笠を被った男の影が、すっとよぎる。

「あいつめぇ!お嬢様!今、ビョンチュンが助けに参ります!」

 勢い良く扉を開け、ビョンチュンが部屋に押し入った。がそこには、下着姿のヒョウンが驚いた顔で見上げるだけで、他には誰もいなかった。

「な、何をするんですか!」

 夜具で身を隠すようにして、ヒョウンが叫ぶ。ビョンチュンは慌てて顔を背けながら、もごもごと口を動かした。

「それが……も、もしやこちらに……」
「なんて破廉恥な!いい方だと思っていたのに、貴方にはがっかりです!」

 飛んできた枕が、まともにビョンチュンの顔に命中する。

「ご、誤解です、お嬢様!」
「言い訳は結構!ポドゥル、何してるの!」
「は、はいっ!」

 傍らで呆然としていたポドゥルが、やっと我に返り、扉を閉める。
 ビョンチュンは眉尻の下がった情けない顔で、言った。

「確かに奴が部屋にいるのを見たんだ!」

「お前が見たのは、お嬢様の下着だろ」とコボンがにたにた笑いを浮かべて言うと、ポドゥルが ひいっ!と顔を引き攣らせた。

「違うって!あそこに、男の影が映ってたんだって!」
「今日のことは全部お兄様に報告しますからね!」

 まさにビョンチュンが指差した扉の向こうから、ダメ押しのようなヒョウンの声が聞こえてきた。ビョンチュンはごほん、と咳払いをし、急に真面目くさった声を作って、言った。

「で、ではお嬢様、我々は掌議の命令どおりこれで引き上げます」
「私、コボンはお嬢様の下着姿など断じて見ておりませんのでご安心を!」
「もう、いいから早く行ってください!」

 ポドゥルが、いい加減にしてくれとでも言いたげに男たちの背中を押す。
 彼らが去ると、屋敷は急に静かになった。

 芙蓉堂の室内で、息を殺して外の様子を伺っていたヒョウンは、近くに誰もいなくなったことを悟ると、身支度を整え、立ち上がって奥の屏風を畳んだ。
 その影から現れたのは、ソンジュンのすらりとした長身だった。

(なんてステキな人なの……)

 凛々しい眉に、涼やかな瞳。すっと通った鼻筋と、怜悧な頬。そのどれもが、これ以上ないくらいの理想的な配置で、彼の顔を創り出している。先程見たビョンチュンなど、もはや同じ生き物とは思えない。顔の造作はもちろんだが、その大きさなんて、目の前の彼に比べれば二倍はありそうだった。
 
 思わず ぼうっとしてしまったヒョウンに、彼は言った。

「無礼をお許しください」

 顔のいい男は声もいいらしい。少し掠れ気味の、低い声。だが微かに鼻にかかってもいて、それがたまらない甘さをヒョウンの耳に残した。
 腰のあたりから力が抜け、倒れそうになるのをどうにか堪えて、ヒョウンは言った。

「私の方こそ、失礼をお許しください。貴方に、相応しくないことをさせてしまいました。でも、あの者たちにはどうしても引き渡したくなかったのです。おそらくあの者たちは、貴方がここに忍び込んだことを口実に、よってたかって貴方に乱暴を働くつもりだったのでしょう。いくら新榜礼でも、度が過ぎます」

 途中まで自分もしっかりそれに加担していたことは、この際棚に上げる。だが不思議なもので、言っているうちに、本当にこんな計画を企てた兄やビョンチュンに腹が立ってきた。もちろん、全うな正義感からではなく、
『あたしの若様〈トリョンニム〉に、なんてことを!』という、所有格がついたことによる単純な怒りだったが。

「どうか、今夜の私はお忘れください。私も、今日の貴方のことは忘れることにいたします」

 当然、嘘だ。忘れるなんて冗談じゃない。今後、彼女が読む物語に登場する美しい貴公子の顔は、全て彼の顔にすげ替えられることが決定している。ヒョウンの頭の中で、イ・ソンジュンがすることになるあんなことやこんなことを想像し、彼女は高鳴る胸を抑えることができなかった。

 そっと見上げてみる。と、彼は戸惑ったような表情を浮かべ、視線を逸らした。きっと照れているのだと彼女は解釈した。凛々しいだけでなく、なんて可愛いんだろう。
 羽ばたき始めたヒョウンの妄想の翼は、もはや留まることを知らなかった。

* * *

「家の私兵は兵曹の役人より優秀です。不慣れな道でしょうから、私が出口までご案内します」

 なんとなく騒がしくなってきた屋敷の様子に、ヒョウンは焦りを隠しきれない。あの山猿みたいな顔のビョンチュンとかいう男が、彼を見たと余計なことを吹聴したのかもしれない。
 こんな綺麗な顔に、傷をつけさせてなるものか。
 ヒョウンは人目を避け、建物の影に隠れつつソンジュンを促した。

「こちらです。お早く」

 その肩をそっと引き止め、彼は言った。

「失礼を働いた上、道案内まで……。今日のご恩は、忘れません」

 真摯な目が、ヒョウンを真っ直ぐに見ていた。心臓を貫かれるとはまさにこのことだ。文字の上でしか知らなかった感覚を、彼女が初めて実感として理解した瞬間だった。

「で、では……こちらに」

 動揺が、彼女の足をもつれさせた。倒れる、と思った身体が、逞しい腕にがっしりと抱えられる。
至近距離で見つめ合ったソンジュンの頬に、さっと赤みが差した。

「こんな……物語みたいなことが……ほんとにあるんですね……」

 助け起こされ、手を離した後も、まだ彼の腕の感触が腰のあたりに残っている。ヒョウンはもう夢見心地で、突如として目の前に現れた本物の貴公子から、目を離すことができなかった。





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2011/09/10 Sat. 17:21 [edit]

category: 第三話

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第三話 3 紅壁書 

 兵曹判書ハ・ウギュは輿に揺られながら、先程牡丹閣で見た儒生のことを考えていた。
 あの顔、やはりどこかで見た覚えがある。このままではどうにも気が済まない。
 彼は手を上げ、官軍の隊列を止めた。

「牡丹閣へ戻る」

 官軍隊長が は、と短く答え、合図する。輿持ちが向きを変えようとした、そのとき。

「大監、あれを!」

 官軍の列から、声が上がった。見ると、月が煌々と照らしだす夜空に、無数の紙片がひらひらと舞っている。
 官軍隊長が腰の刀剣を引き抜き、吠えた。

「紅壁書〈ホンビョクソ〉だ!追え!」


 立ち並ぶ民家の屋根を、鼠のような素早さで走り抜ける影があった。途切れた瓦屋根を飛び越えるほんの一瞬、濃紺の夜空を背景に月明かりがその輪郭をくっきりと浮かび上がらせる。手には弓、背中には矢筒を背負い、全身黒ずくめだ。頭から被った頭巾で顔の殆どを隠しているので、その男を伺い知れる唯一のものは、隙間から見える鋭い眼光だけだった。

 男は雲従街の大通りまで来ると、背中の矢を引き抜き、弓を構えた。夜のしじまを切って放たれた矢は、空中で音を立てて弾け、真っ赤に染められた紙片をまき散らした。男が紅壁書と呼ばれる所以だ。

 赤い壁書は家路を急ぐ町民たちの上に降り注ぎ、否応なく彼等の注意を惹く。その赤い壁書を手にした者は皆、そこに書かれた見事な文章と共に、政治の腐敗や官僚たちの無能ぶり、国の窮状を知ることになるのだ。

「いたぞ!撃て!」

 兵曹判書の屋敷近くの屋根に、官軍隊長が敵の姿を発見した。その号令一下、いくつもの銃口が次々と紅壁書に向かい火を噴く。彼は慣れた動きで弾を掻い潜ると、再び、夜の帳の中に姿を消した。

「絶対に取り逃がすな!反対側から取り囲め!」

 兵曹から連絡を受けた兵士たちが合流し、あたり一帯は ますます騒然となった。



 同じ頃、ユニはといえば。
 チョソンから贈られた絹の下着を大事に胸に抱え、成均館への道を急いでいた。
 その足に、風に煽られた赤い紙がぴたりと張り付く。何気なく手に取り、そこに記された文面を見たユニは、ある単語に目を留め、呟いた。

「金縢之詞〈クムドゥンジサ〉……?」

 金縢之詞といえば、『書経』にある、大切に保管された文書を指す言葉だ。そんなものが、今の政治や民の困窮にどう関係するというのだろう。文体は素晴らしいが、意味がよく掴めない。
 首を傾げながら歩いているといきなり、その行く手を阻まれ、ユニは腰を抜かしそうになった。空から音もなく人が降ってきて、ユニの目の前に降り立ったのだ。

 はらりと、ユニの手から赤い壁書が滑り落ちる。登場の仕方にも驚いたが、問題はその人物の姿だった。黒装束に覆面。少なくとも、飲み屋帰りの一般市民がしている格好ではない。泥棒か、あるいは───

「追えーっ!」

 無数の足音とともに、響き渡る声。黒装束の男は地面を蹴ると、煙のようにユニの頭上に消えた。
 一つ向こうの角から、官軍がどっと走り出てくる。一人が立ち止まり、怪しい者を見なかったかと尋ねた。ユニはほとんど反射的に、見てない、と答えた。考えるより先に、口が動いてしまったのだ。幸い、官軍はそれ以上追求せず、来たときと同じように走り去っていった。

 通りの向こうに官軍の一団が見えなくなるのを確かめてから、ユニは改めて頭上を見上げた。そこには、いったいどうしたらそんなことができるのか、先程の黒装束の男が、民家の軒下に蜘蛛のように張り付いていた。

 男はさっと身体を折ってユニの前に降り立つと、軽く右手を挙げて、走り去っていった。瞬きするほどの出来事だった。男は、ユニに礼を言ったのだ。そう気付いたのは、通りから男の姿が消え、しばらく経ってからのことだった。




「奴を取り逃がしただと?数十人も雁首揃えて、曲者一人捕らえられんとは、貴様らそれでも官軍か?!」

 兵曹判書宅の中庭では、ハ・ウギュがこめかみに青筋を浮き上がらせ、部下を前に声を荒げていた。

「そ、それが、奴が泮村に入り込んだので、それ以上は追えず……申し訳ありません」

 うなだれていた官軍隊長がそれだけ言うと、兵曹判書は歩き回っていた足をぴたりと止めた。

「泮村?」

 成均館のある泮村は、いわば治外法権が認められている地区だ。いかな官軍といえど、王の許可なしにおいそれと踏み込める場所ではない。
 そこに紅壁書が逃げ込んだとなれば───。

兵曹判書は押し黙り、白髪混じりの眉を微かに上げた。


* * *

「───ということは、紅壁書は成均館に関係のある人物なのか?」

 煙草の葉を紙で器用に巻きながら、王正祖は淡々と言った。
 最近遠視の進んできた王は、細かい作業をするとき、職人に特別に作らせた眼鏡を掛ける。そこまでせずとも、煙草くらい内侍にでも命じて作らせればいいのに、と傍に控える領議政チェ・ジェゴンは思うのだが、こうして実際に王が煙草を巻く手元を見ていると、何も言えなくなってしまう。
 王の作業はそれほどに厳粛で、犯しがたい静けさに満ちていた。

「それは、まだわかりません。泮村は、官軍が立ち入ることのできぬ地域。単に、官軍を避けるために逃げ込んだとも考えられます」
「治外法権を利用し、隠れ場所にしている可能性もある、というのだな」

 さようにございます、と面を伏せる領議政に、王は深く頷き、脇に広げた赤い壁書に視線を移した。
 巻き終えた煙草を鼻の下に滑らせ、その香りを楽しむ。口元を微かに引き上げ、王は呟くように言った。

「金縢之詞を捜す紅壁書か。面白くなってきたものだ」

 一方、まだ宮殿の執務室に残っていた左議政イ・ジョンムは、紅壁書騒ぎのために自宅から引き返してきた兵曹判書の訪問を受けていた。

「金縢之詞ですと?あれは、確実に処理したはずだ。今更なぜそんなものを持ち出す?!」

 左議政の剣幕に、兵曹判書は僅かに身を引いた。その額には、じっとりと汗が浮いている。

「もちろんです!金縢之詞は存在しません。左議政様も、それはご存知のはず……!」

 イ・ジョンムは兵曹判書を見据え、怒気をはらんだ声で言った。

「何としても、王が動く前に紅壁書を捕らえるのだ。先に奴を仕留めねば、下手をすると我々老論が積み重ねてきた100年の苦労が水の泡となってしまう!」

 兵曹判書は冷や汗を手の甲で拭い、ひたすら低頭した。


* * *

 泮村に入り、泮水橋に差し掛かったときである。ユニは、背後からいきなり肩を掴まれたのに驚き、思わず足を滑らせて尻餅をついてしまった。
 呆れたような目が、彼女を見下ろす。

「驚き過ぎだろう。人を化け物みたいに」
「イ・ソンジュンか……。まったく、化け物のほうがまだましだよ」

 官軍に曲者を見てないと嘘をつき、逃したことがまだ尾を引いていたらしい。我ながら肝の小ささに情けなくなる。

「もうすぐ三更だというのに、随分余裕だな。さては、わざと退学になるつもりか?」

 言いながら、ソンジュンは座り込んでいるユニに手を差し伸べた。ちょっと意外に思いながら、ユニはその手を取り、立ち上がった。

「北村〈プクチョン〉からの帰り?じゃあ、密命は解けたんだね」

 ソンジュンはそれには答えず、伝香門のあたりを見遣って、言った。

「急いだ方がいい。でないと、君が後生大事に抱えているその戦利品が無駄になるぞ」

 ユニは はっとして、なるべくそうは見えないように小さく折り畳んだチョソンの下着に目を落とした。転んだ拍子にかかってしまった土を ぱたぱたと払ってから、既に先を歩いているソンジュンの背を急いで追った。

 

 明倫堂の前庭には、既に密命を完遂したらしい新入生たちがほぼ全員戻ってきていた。

「皆、密命は遂行したか?」

 ヨンハの呼びかけに答え、ウタクが進み出た。

「私、キム・ウタクは御井水〈オジョンス〉を入手いたしました」

 白い器に満たした水を、基壇に立つインスに得意げに差し出して一礼する。ヨンハが訊ねた。

「本当に国王陛下の飲む水を持ってきたのか?この夜中に?宮殿から?」
「裏山で汲んで参りました。祭祀の折り、王に捧げられる水です。これも、陛下が飲まれる水には違いない」

 ほう、とヨンハが感嘆の息を漏らした。

「素晴らしい。知恵を絞ったお前を、成均館の学生と認めよう」

 掌議の手から、成均館の儒生服が渡される。ウタクはそれを恭しく受け取り、退がっていった。

「次の者!」

 ヨンハの目が、ユニに注がれる。さっさと出ておいで。嫌なことは早くすませた方がいい。彼の視線は確実にそう語っていた。
 
 何も怖れることはない。先輩方が頭の中で考えたこととは多少違っていたかもしれないが、密命の書に書いてあったことはちゃんと果たした。いやむしろ、下着に情を込める、という言葉通りの意味でなら、まさに完璧だ。
 男女の情ではないにしろ、今夜、チョソンとの間には確かに、ある種の情が生まれた───そう、ユニは感じたのだ。
 
 類稀な美しさだけでなく、優れた才能と聡明さを持ち、一人、男たちの傲慢と闘っている。けれどその内側には、純粋に詩や絵画を愛する少女のような心があって。
 胸が痛かった。と同時に、愛おしくもなった。幼い頃、父の朗読する書を部屋の外で必死に書き写していた自分自身の姿と、何故かチョソンが重なったのだ。

「新入生キム・ユンシク」

 牡丹閣のチョソンの下着を、とはとても言いづらく、ユニは自分の名を言っただけで、言葉を飲み込んでしまった。密命を果たした証拠の品を、黙って差し出す。
 ヨンハがそれを受け取り、手の上に広げた。薄い笑みを浮かべていた彼の顔が、次第に真顔になる。

「これは……チョソンの下着か?」

 明らかに動揺した声で、ヨンハは訊ねた。ユニが頷く。

「嘘だろ。あれ、エンエンのじゃないのか?」
「ソムソムのかも」

 ひそひそと言い交わすビョンチュンとコボン。だがヨンハの判定はあくまで公正だった。

「5つの牡丹のしるし……牡丹閣でこれを身につけられるのは、チョソンだけだ」

 流石に、彼のこの言葉に異を唱える者は誰もいなかった。成均館で、誰よりもあちらの世界に通じる人間が、ユニの物証を本物だと断定したのだ。これ以上確かな保証はなかった。

 ビョンチュンが、ヨンハの手から奪い取るようにして下着を手に取り、広げた。そこに記された詩を、声に出して読む。

『短い夜は長い夜より劣ると誰が申しましょう
短くとも甘美な夜は
どんな長い逢瀬にも代えられぬもの───』

 か、甘美な夜、ともう一度呟いて、ビョンチュンはごくりと喉を鳴らした。
 インスが、鋭い目をユニに向けた。

「もう一度聞く、キム・ユンシク。お前があれを、チョソンの手から直接貰ったというのか?」

 声は静かだが、その目の奥には押し込めた暗い怒りが揺らめいている。それでもユニは臆することなく、そうです、と答えた。
 男女の交わりなどなくても、互いの心を尊重しさえすれば、情を交わすことはできる。こんな簡単なことが、男たちには何故わからないのか。
 当代一の名妓は決して、お高くとまった鼻持ちならない女などではなかった。ただ、人間らしくありたいと願っているだけだ。兵曹判書の妾になるより、成均館に入学することを選んだ、ユニと同じように。

 はっ、とヨンハが息を吐き出して、自嘲気味に笑った。

「今日の最優秀者は決まりだな。あのチョソンと一夜を共にしたキム・ユンシク!こいつ以外に誰がいる?」

 上級生たちの間から、一斉に同意の声が上がる。

「キム・ユンシクを、成均館の学生と認める」

 ユニの手に、濃紺の儒生服が渡された。その手触りを確かめながら、胸の奥から沸き上がる喜びを噛み締める。
 新榜礼を無事乗り切ったばかりか、最優秀者に選ばれたのだ。チョソンには、感謝してもしきれない。もう会って礼を言う機会のないことが、ただ残念だった。

 ユニが、新入生たちの列に戻る。並びからいくと、次は隣に立つソンジュンだ。

「次の者!」

 ヨンハの声に、ソンジュンが顔を上げる。彼は正面を見据え、言った。

「新入生イ・ソンジュン。……密命を、解けませんでした」






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2011/09/12 Mon. 02:49 [edit]

category: 第三話

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第三話 4 罰則 

「解けなかった、と言ったか?遂行できなかったのではなく?」

 まるで、そうすれば彼の鉄面皮に僅かなりとも綻びが見つかるとでもいうように、ヨンハはソンジュンの顔からじっと目を逸らさずに、訊ねた。

「花中君子が蓮の花だということはすぐにわかっただろう?北村の兵曹判書宅には、行かなかったのか?」
「行っていません」

 ヨンハの追求にも、ソンジュンは眉一つ動かさない。それどころか、逆に彼を糾弾するような尖った視線を向けてくる。
 インスの脇で、ビョンチュンがコボンをつついた。

「見たんだろ?その目で奴を見たと言ってたよな?」
「おかしいな……幻だったのかな?」

 ユニが首を傾げ、隣に立つソンジュンを不思議そうに見上げた。

「さっき、北村の方から帰ってきたよね?なんで……」
 
 ソンジュンはユニの言葉を遮るように、小さく咳払いして、視線を逸らした。そんな二人の様子を、ヨンハが見逃すはずはなかった。
 しかも、あの小憎らしいほど堂々とした態度。イ・ソンジュンともあろう者が、新入生たちの中でただ一人、密命を完遂できなかったというのに、だ。
 間違いない。彼は兵曹判書の屋敷へ行ったのだ。そしておそらくは、芙蓉花にも会っている。
 なのに、何故嘘をつく?

 ヨンハの疑問を余所に、インスが、ソンジュンを凝視したまま言った。

「どんな罰則があるか……分かっているだろうな?」



 泮村には、全く違う二つの世界が存在する。
 一つは泮宮、またの名を成均館。もう一つは、それ以外。
 その二つの世界を隔てる川に架かるのが、泮水橋である。

「いいぞー!もっと出せ!」

 その泮水橋の上、儒生たちのはやしたてる声に けたけた笑いながら、川に向かって放尿しているのは幼い斎直たちだ。
 成均館の雑用係である彼等は、おそらくこの時のために厠へ行くのを相当我慢させられていたのだろう。立派な放物線を描いた後の顔は皆、開放感に溢れていた。

「よくやったね。ご苦労さん。いい子だ」

 ヨンハが、戻っていく子供たちの頭を一人一人撫でてやりながら、にっこり笑う。仕事を終えた斎直たちがいなくなると、後には直立不動のまま、無表情に川面に目を落としているソンジュンが残された。

「王の信頼厚きイ・ソンジュンが小便まみれとは、いいザマだな。己の自尊心を傷つけて、せいぜい楽しむがいい」

 インスが、口元に残忍とも言える冷笑を浮かべ、言った。
 カン・ムが合図すると、松明を掲げた儒生たちが数名、橋の上に走り出てきた。追い立て役の彼等は、一様に舌舐めずりでもしそうな顔で獲物を取り囲んだ。
 だがそんな、絶体絶命の窮地においてさえ、ソンジュンの表情は静かだった。取り乱すこともなくただ周囲の上級生たちを一瞥し、橋の欄干に一歩、進み出る。
 彼の手が笠の顎紐にかかった、そのとき。

「お待ちください!」

 思わず、声を上げていた。
 ソンジュンに集まっていた周囲の視線が、一斉にユニへと移る。
 人垣の中から進み出たユニは、橋の上のソンジュンに背を向ける形で、インスの前に立った。

「新榜礼の最優秀者には、何でも望みを聞いて貰える……そういう、褒美があるとおっしゃいましたよね?今この場で、その褒美をいただけませんか」
「何?」
「イ・ソンジュンに、責任を問わないでいただきたいのです」

 どよめきが起こった。なんだあいつ、気でもふれたんじゃないのか?
 そんな声があちこちから聞こえたが、ユニは無視した。インスがユニにひたと視線を据え、訊ねる。

「奴のために、褒美を使うというのか?私には、官吏への推薦権があるのだぞ」
「はい?」

 一瞬何のことかわからなかった。そもそも官吏になどなれるはずのないユニには、インスの言葉は酷く唐突だったのだ。

「お前が望めば、私はお前に官職も与えられるということだ。それでも、イ・ソンジュンのために権利を使うつもりか?」
「はい」

 ヨンハが、ユニを見て呆れたように笑っている。ユニの行動は、彼等からしたら頭がおかしいと思えるのかもしれない。けれど。
 ユニは少しだけ振り返って、ソンジュンを見た。
 いけ好かない奴には違いない。でも、こうしなければ、きっと後悔する。それだけは確かだった。

「───もういい。下がれ」

 インスが言うと、ソンジュンを取り囲んでいた儒生たちが、その輪を解いた。
 ユニはほっと安堵の息を漏らした。自分が川に落とされるわけでもないのに、酷く緊張していたことに気付いた。



 その年の成均館の新榜礼は、こうして終わった。



「キム・ユンシク」

 新入生たちが、それぞれ疲れた表情で清斎へと戻るのに混じり、歩いていたユニを呼び止める声があった。
 振り返ったユニは、相手が口を開く前に、言った。

「礼ならいらないよ。ぼくは、自分の原則に従っただけ。借りは作りたくないんだ。人助けをしたつもりもないし」

 ついさっきソンジュンに言われた台詞をそっくり本人に返して、ユニはほんの少しだけ、溜飲を下げた。ところが。

「余計な真似をしてくれたものだ。これを期に、新榜礼なんて習慣を見直そうと訴えるつもりだったのに」

 唖然とした。もちろん礼など期待していたわけではないが、感じの悪い性格もこうも徹底していると逆に感心する。
 呆れ返って何も言えずにいるユニに、ソンジュンはにこりともせず、

「僕も借りを作るのは嫌いだ。願いがあれば言ってくれ。何であれ、最善を尽くすと約束する」

 言いたいことだけ言って、すたすたと歩いて行ってしまう。
 ふと思った。イ・ソンジュンが最善を尽くすというからには、生真面目な彼のことだ。手を抜くことなく、本当にそうするだろう。ユニにはとても理解できないが、あれが彼なりの流儀というやつなのかもしれない。

 敷石の上を、踵の先ほども踏み外さず律儀に歩いて行く背中に向かい、それはどうも、と肩をすくめた。



 中二房へと戻るソンジュンを、その少し手前の門前で待っていたのは、ヨンハだった。

「なるほどね。こんなくだらない新榜礼の習慣など、守る必要はない。だから、芙蓉花のところには行ってないと嘘をついたのか」

 先程のユニとの会話をどこぞで聞いていたのか、ヨンハは納得したように、言った。

「たとえ小便まみれになろうとも、幼稚な遊びには乗らない。それは君の自尊心故かな?それとも意地?ああ、反抗心ってのもあるか」

 黙っているソンジュンを、ヨンハがすくい上げるように見た。

「───お前のような奴のために、新榜礼があるんだよ」

 それまでとは違う、低く凄みのきいた声に、ソンジュンは思わずヨンハを見返した。彼が、いつもその眉目に漂わせている軽薄さは跡形もなく消え失せ、代わりに、その目には はっとするほどの冷淡な光が宿っていた。

「高貴な家に生まれ、誰にも頭を下げたことのない高慢ちきな奴らの鼻をへし折る───新榜礼の真の目的はそれさ。なぜなら、ここは成均館。父親の地位や財産など、ここでは一切関係ない。偉そうに威張り散らすのはやめて、謙虚な人間になれと、後輩に教えてやるんだよ」

 ヨンハの中にある、何か得体の知れないものに半ば気圧されたようになっていたソンジュンは、ぽん、と扇子で肩を軽く叩かれ、我に返った。

「まあそういうわけだから、あまり恨まないでくれよ。ん?」

 と言ってまた、にこっ、と笑う。たった今彼の双眸に差した、殺気にも似たものは幻だったのかと思わせる、屈託のない笑顔だ。
 飄々として掴みどころのないク・ヨンハという男が、ますますわからなくなった瞬間だった。だが、納得のいかないことを言われて黙っているソンジュンではない。

「では先輩は、新榜礼の経験がないのですね」

 つい、いつもの癖でそう言い返してしまった。

「先輩は、誰よりも派手な身なりで、父君の財力を誇示しておられる。貴方に、新榜礼の教えを説いてくれる者は誰もいなかったと、そういうことでしょう」

 ヨンハは一瞬、鼻白んだような顔をしたが、やがて手にした扇子を ぱっと広げた。

「いやぁ、君は本当に賢いな。やはり陛下は、人を見る目がおありだ」

 ひらひらと翻る扇子に、淡く透ける睡蓮の花。それにじっと目を落とし、ソンジュンは言った。

「───芙蓉花は、貞淑な女性でした。人の口に戸は立てられません。あらぬ噂に、彼女を巻き込むのはよくない。そう、思ったのです。先輩方を侮ったわけでは、決してありません」

 ヨンハは扇いでいた手を止め、ぱたりと扇子を閉じた。そしてソンジュンに真っ直ぐに向き直ると、微笑んだ。

「入学おめでとう、イ・ソンジュン。君を歓迎する」





**************************************************************

あまるですどうもこんにちわ。ここんとこ仕事がたてこんどりまして、ちっと間があいてしまいました~。
忙しい忙しいと言ってるヤツは時間の使い方が下手なだけで、ぢつは暇なんだそうですねっ。
えー下手な暇人なんですヨ!ワタクシ!くそうぅ( ;∀;)
でももーすぐ奎章閣下巻出るし~JYJのアルバムも来るし~頑張れ自分~





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2011/09/17 Sat. 02:43 [edit]

category: 第三話

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第三話 5 東斎での夜 

 新入生の第一の試練とも言える新榜礼を、どうにか終えたユニとソンジュンだったが。
 成均館には、早くも波紋が広がっていた。

 ユニが折角の最優秀賞をソンジュンのためにあっさり手放したことで、あの二人には何かあるんじゃないかと勘ぐる輩もいれば、生粋の老論でありながら東斎に残るソンジュンに不信を抱く西斎の者たち。
 当然ながらそれは東斎側も同じで、何故自分たち少論や南人の領域に老論が図々しく居座っているのかと憤懣やるかたない。
 儒生たちの動揺は正録庁の博士たちにも波及した。党派争いを避けるためには暗黙の了解に従うべきだ、明日にでもイ・ソンジュンを西斎に移すと力説する大司成に対し、チョン博士は、ソンジュンの若さを理由にそれは無駄だとやんわり反対した。
 
 あの年頃は、何が何でも自分の信念を曲げないものだ、と。


* * *


「───心配いらないよ。どうせ、耐えられないから」

 東斎の様子を探れと言われたのか、それともインスの眉間に刻まれた深い縦皺に恐れをなしたのか。(ヨンハはおそらく後者だと踏んだが)揃って部屋にやってきたビョンチュンとコボンに向かい、彼は言った。

「イ・ソンジュンもキム・ユンシクも、あの部屋にいられるのは長くて一日……いや、二日が限度かな」

 ビョンチュンとコボンは、明らかに疑いの眼差しでヨンハを見ている。

「それもどうだか。ここんとこお前の企みは何も成功してないじゃないか」

 確かに、とヨンハは軽く頷いて盃の酒を煽る。言っちゃなんだがこういう悪巧みにかけては、成均館で自分以上に周到で、面白い計画を思いつく人間はいないという自負がある。インスにしたって、自分のそういうところを利用するために傍に置きたがるのだということもよくわかっている。

 だがどういうわけかこのところ、というかあの二人───イ・ソンジュンとキム・ユンシクに対しては、どうにも調子が狂う。
 自分の読みが甘すぎたのか、それとも単に彼等の運がいいのか。あんなに、想定外のことばかりやらかしてくれる奴らは本当に久しぶりな気がする。
 
 苦虫を噛み潰したような目の前のビョンチュンたちの顔とは裏腹に、ヨンハは楽しくなってきた。
 予測不可能なあの二人が、今度はどう動くのか。なんだかわくわくしてしょうがないのだ。

「今回は、手を下すのは私じゃないからね。忘れたのか?なんたってこっちには秘密兵器がある」
「秘密兵器?」

 ビョンチュンとコボンが、怪訝な表情で互いの顔を見合わせた。

「桀驁〈コロ〉だよ。別名、泮宮の暴れ馬」

 そうか、とビョンチュンが小さな目を瞠った。

「ヤツなら、イ・ソンジュンを追い出せるか?」

 手の中の杯をゆっくりと回しながら、ヨンハは答えた。

「大事なのは実績だよ。今までコロと同室になって、逃げださなかったヤツが一人でもいたか?あいつが、老論と仲良くしてる姿を見たことは?」

 ビョンチュンとコボンはふるふると首を振った。その顔に、じんわりと笑みが広がる。

「イ・ソンジュンとキム・ユンシク……あの二人が同じ部屋で寝るのは、今夜が最初で最後になる。きっとね」

 そうさ。何事も、この焼けつくような刺激がなければ、つまらない。旨みはない。

 ヨンハは咽喉元をゆるゆると下りていく酒の熱さを楽しみながら、口の端を引き上げて笑った。


* * *


「───脱げよ」

 夜具の上で、はだけた単衣〈チョクサム〉の前を合わせながら、ソンジュンが言った。
 壁際で縮こまるようにして座っていたユニは、びくりとして思わず顔を上げた。と、白い一枚仕立ての衣に透ける、彼の腕や胸板が目に飛び込んできた。

 意外と筋肉質なんだ───って、そうじゃなくて!

 目のやり場に困って、ユニはふいと顔を逸らした。

「ぼ、ぼくが脱ごうが脱ぐまいが、関係ないだろ」
「着替えないと消灯できない」

 上掛けを引き寄せ、ソンジュンは横になった。だが灯を消さないといけないので、半身は起こしたままだ。片肘をついて夜具に横たわるその姿が妙に艶かしく見え、ユニはますます焦ってしまった。

「ぼくは勝手にやるから、気にせず寝ていいよ」
「灯を消さないと寝られないだろう」

 ああもう、とユニは胸に抱きしめるようにして抱えていた荷物を放り出し、ソンジュンに背を向けてころんと横になった。

「ほら、これでいいだろ」

 ユニの後ろで、ソンジュンが身体を起こす気配がした。

「”身なりを整えるのが礼儀の基本”───『小学』の教えにあるだろう。知らないわけはないな?」

 首を巡らせて、背後を見た。そこには、ぴしりと姿勢を正して座るソンジュンがいる。
 なんだこの男は。布団の上で、講義でも始めるつもりか?

「清斎はただ生活するだけではない。礼を学び実践する場だ。日常を通して、心身を鍛錬し、己を律するべく居館修学〈コガンスハク〉という制度が……」
「あーもぉ、わかったから黙って!」

 がば、と身を起こし、ユニはたまらず部屋を出ようとした。ところが。
 扉に手を掛ける前に、それが乱暴に開け放たれた。間から ぬっと突き出された裸足の足が、彼女の行く手を阻む。
 思わず一歩退ると、無精髭の顔がぐっと距離を詰めて覗き込んできた。
 それがあまりに近いので、顔を見られたくないユニは、不自然なくらいに俯かなければならなかった。
 
 男はなおも近づいてユニをしげしげと見る。ユニはじりじりと後退る。そのうちに、ソンジュンのいる部屋の奥まで追い詰められてしまった。ソンジュンが立ち上がると、男のぶしつけな視線は彼にも移った。

「どなたですか」

 ソンジュンの短い質問に、男はフッと片頬を歪めて笑った。「お前らこそ」

 あの笑い方!ユニは思い出した。ざんばらの髪に、着崩した服。いつだったか路地裏でユニを助けてくれた、あの猿のように身軽な男だ。そういえば朝っぱらから酒場で暴れて、塩をまかれてもいたっけ。
 その場面を見たのは今朝のことなのに、なんだかいろんなことがありすぎて、何日も前の出来事のような気がした。

「何だこれは」

 男は床に敷かれた布団を蹴飛ばし、棚に掛けてあったソンジュンの道袍をひっぺがした。

「とっとと失せろ!」

 突然のその怒鳴り声に縮み上がったのは、ユニだけではなかった。
中二房の外で、新入りが飛び出してくるのを今か今かと待ち構えていた、ビョンチュンを筆頭とする老論の上級生たちも、思わずびくりとして縁側から離れる。

 その中で一人、ほくそ笑んだのはヨンハだ。
 縁側の柱にもたれ、ひらりひらりと扇子で顔を扇ぎながら、「ほらね」と彼は言った。

「コロはいつだって期待を裏切らない」

 実に素晴らしい。これからあの向こうで繰り広げられるであろう、中二房の地獄絵図。それを思い描き、障子戸に視線を投げるヨンハだった。






*********************************************

あまるですどうもこんにちわ。
よく見ると向井理くんもなかなかいい喉仏してますなじゅる←変態?

ところで書いてて未だにフラフラ悩んでるのが、表記を含めたヨンハの一人称。
他の三人は結構すんなり決められたんですが、彼だけは「私」も「俺」も「僕」も、全部アリなような気がするだけに、どれもどうもこれだ!と決め難くて。吹き替え版は「俺」なんすけどね。なら素直にそれにしとけって?(笑)や、できれば4人違うのにしたいな~と。書くのにラクだし(爆)

しかし流石はヨリムです。この掴みにくさは只者ではありません。
うーん……アンケートでも取るか?しかしこのブログでは回答が集まるか疑問だが(笑)
どれが一番自然ですかね?




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2011/09/19 Mon. 21:40 [edit]

category: 第三話

thread: 二次創作:小説 - janre: 小説・文学

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2017-10
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